裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

ちゃんきぃ

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裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

バーニングセリナ

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「ああ……テルクニ……おはよ」

 俺の声に反応した中楚は顔だけこちらに向けるけど、その様子はどう見ても普通じゃなかった。長い髪は乱れて、妙に息遣いが荒い。
 俺はすぐに中楚の傍へ駆け寄って様子を窺う。

「どうしたんだ!? な、何があってこんな……」
「だ、大丈夫。今回は部屋を蒸し暑くしたり、寒い恰好になったりしたわけじゃない……から」
「大丈夫なわけあるか。まさか中楚……あっつ!」

 中楚のおでこに手を当てると明らかに体温が高かった。その瞬間、こうなった原因を含めて中楚が風邪だということがわかる。

「中楚、とりあえず意識はあるんだな? 動けるか?」
「そ、そんな急に意識してるとか聞いちゃうの……?」
「ふざけてる場合か! 動けるなら保健室行くぞ!」
「えっ!? 保健室はやだぁ!」

 そう言った中楚は急に上半身を起き上がらせるけど、頭は揺れてすぐに動ける感じではなかった。

「なに言ってんだ。病院行くの嫌がる子供じゃないんだから」
「だ、だって、保健室って一見すると陰キャの味方っぽく見えるけど、実際は陽キャがサボるためにベッドを独占して、連れ込んだ子とあんなことやこんなことを……」
「どこの情報だよ!? 別に片方だけの味方でもないし、この高校の保健室はいたって普通だから!」
「普通に見せかけて裏ではそういうことがあるかもしれないでしょ!? 夢見させてよ!?」
「期待してる方だったんかい! いや、そんな冗談言ってる場合じゃないんだよ!」
「で、でも、やっぱり保健室はちょっと……」

 中楚はもじもじしながら下に目をやる。その様子は冗談ではなく本当に嫌がっている風に見えた。

「わかったよ! じゃあ、俺が保健室に行って先生呼んでくるからもう少し大人しくしてろ! いいな!」
「わ、わかった……」

 俺はそう言い終えてから来ていた制服の上着を毛布代わりに中楚へ渡すと、準備室を後にする。

 保健室は1階にあるから3階の芸術棟からだとそこそこ遠く感じる。そう考えると、中楚を無理に動かさなかったのは正解だったかもしれない。
 それでも急いで来たから1分ほどで保健室へ到着した俺は先生に向かって……なんと言えばいいか一瞬考える。美術準備室に高熱で寝込んでいる人がいるので来てくださいと言って、冗談だと思われないだろうかと。
 でも、それ以外に説明のしようがないから俺は勢いのまま話す。

「せ、先生! 美術準備室に病人が――」
「中楚さんがどうかしたの!?」
「えっ……あっ、そうです。すごく熱が高く……」
「わかったわ、今すぐ行く。キミは布団と毛布持って行ってくれる?」
「はい!……って3階までですか!?」
「中楚さんが大変なんでしょ! そこのベッドにあるやつ一式!」

 俺が話しかけた時以上の勢いで保健室の先生がまくし立てるので、俺はその指示に従うしかなかった。

 それから3分ほどして布団一式を抱えた俺は準備室に戻ってくる。当然ながら部長のムラさんを始めとした部員は何事かとざわつくけど、説明する暇もなかった。

 布団に寝転んだ中楚を保健室の先生は体温を測ったりしながら確認する。そこから判断された中楚の容態は……

「……大丈夫そうね。たぶん来る前の熱がピークだったんだと思うわ」

 俺が入った時とは打って変わって落ち着いていた。いや、俺が来る直前までは本当にしんどくて、その結果倒れ込んだのだろうから、いいタイミングで来れたのは良かったけど。

「別に苦い薬を出したり注射するわけじゃないんだから、体調が悪化しそうと思ったら保健室に来なきゃ駄目じゃない。彼が来なかったからもっと大変なことになっていたかもしれないわよ」
「ご、ごめんなさい……」

 保健室の先生は少し厳しい口調で中楚へ注意する。それに対して中楚はしゅんとしているから反省しているようだった。

「いつ頃から体調が悪くなったの?」
「……今日の朝」
「そういう時は無理して学校来なくてもいいのよ。最近の中楚さんは積極的に学校へ来ているようだから、その気持ち自体は否定できないけど」

 俺は美術室準備室と言っただけなのに、中楚の名前がすぐに出てきたことに驚いたが、よく考えたら学校側が何も把握していないわけがなかった。つまり、中楚も保健室の先生とはある程度面識があったのだろう。

「風邪の原因は何かしら。寒くなってきたから寝冷えか、ビタミン不足とか……」
「それは……」

 保健室の先生が原因を考える中、中楚が目線をこちらに向けているような気がしたので俺は知らん顔する。原因は昨日寒い中ほぼ一日中水着を下着代わりにしたせいで、俺も関わっていることだが、実行犯は中楚なので巻き込まれても困る。

「まだ安静にしてなきゃ駄目だけど……どうする? 親御さんへ連絡して貰うよう榎沢先生へ言っておこうかしら?」
「だ、大丈夫。ちょっと寝たら……落ち着くはず」
「そう。でも、今日は歩いて帰るのは絶対駄目だから自分で迎えに来て貰うよう連絡しなさい」
「えー……」
「えーじゃないの。彼が知らせに来た時、相当焦っていたから本当に大事だと思ったんだから……」

 そう言われた瞬間、二人の目線が俺に向けられる。よく考えたら診察中に俺が同席する必要はなかったけど、今美術室側へ戻ると質問攻めに遭うから留まるしかなかった。
 すると、保健室の先生は俺ことを観察するように見ながら近づいて来る。

「……なるほど。直接見るのは初めてだけど、彼が榎沢が言ってた……」
「あ、あの……」
「三雲くん。とりあえずは大丈夫そうだから、この場は任せることにするわ。ちゃんと迎えを呼ぶように説得してね」
「えっ。なんで俺が……」
「それが一番効く薬だからよ。あっ、布団はまた後日返してくれたらいいから」

 そう言いながらウインクした保健室の先生はそのまま準備室を去ってしまった。

 体調的に問題ないなら良かったのかもしれないけど、帰りの件を俺に丸投げするのは保健室の先生としてセーフなのだろうか。それに俺は保健室を利用した覚えがほとんどないのに、あちらは俺を知っているようだった。

「テルクニ……」
「ど、どうした、中楚!?」

 中楚がいつもよりも弱った声で呼ぶので、俺はすぐに枕元に駆け寄る。マシになったとはいえ中楚が病人であることには変わりない。今日ばかりは少しくらいわがままを聞いてやらなければ。

「……とうとう布団敷いちゃったね。このそんなに広くない個室に男女二人と布団。いつもよりも弱った女の子とそれを心配する男の子。こんなの何も起きないはずもなく……」
「元気そうで何よりだよ」
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