裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

ちゃんきぃ

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裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

新部長と部員と準備室の妄想

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「ごめん、三雲クン! 今日は用事があって美術部行けないから清莉奈ちゃんのことお願いするねっ!」

 放課後、涼花ちゃんから早々に告げられる絶望のひと言。もちろん、絶望しているのは中楚のことをお願いされる方ではなく、貴重な涼花ちゃんとの時間が無くなってしまうことの方だ。
 昨日の連絡先を聞けなかった件といい、どうやら俺と涼花ちゃんの間にはよくない流れになっているような気がする。元からいい流れなんてなかったと言われたら……何も言えなくなってしまうが。

 そんな状況を少しだけ寂しく感じつつ、美術室の扉の前まで一人でやって来るけど、俺はそこで気付かなくていいことに気付いた。
 改めて一人で美術室へ乗り込むとなると、どんな風に準備室まで行けばいいのかわからないということに。

 涼花ちゃんと一緒の時はそのまま入るので何ら問題はないし、涼花ちゃんが少し用事があってここへ来るタイミングが後になった時も俺が美術部員の皆さんと何とも言えない空気になる時間はそれほど長くなることはない。

 しかし、今日は後にも先にも涼花ちゃんが美術室に来ることはない。その中で女子だらけの美術部員ではない男子が入っていくと……どうなってしまうんだろうか。

 久しぶりの緊張感を抱きつつ俺は扉をノックして、反応が返って来てから美術室へ足を踏み入れた。

「失礼します。今日も……美術準備室に来ました」
「はーい。お疲れ様でーす」

 不自然な俺の言葉に対して一人の部員がそう返してくれると、それに続けて「お疲れ様です」の声が重なる。それだけ聞くと部活の一員っぽく感じられるけど、やっぱり居心地はあまり良くないので俺はそのまま準備室まで駆け抜けようとした。

「あっ、ちょっと待って貰っていいですか?」

 しかし、俺が早歩きしようとしたところへ先ほど最初に返事をしてくれた部員が俺を呼び止める。毎日美術室に来ているから顔はよく見ているけど、声をかけられるのは初めてのことだ。

「私、ついこの前から部長になった2年の村上です」
「ど、どうも、2年の三雲輝邦です……って、ついこの前?」
「うちの美術部は文化祭が終わると部長が交代することになっているので。モ……三雲さんが通い始めた時点だとまだ部長じゃなかったんですよ」
「あっ、そういうことか」
「だから、どこか機をうかがって挨拶しておこうと思ってて」

 丁寧に説明する村上さんは同じ2年生ながらしっかりしていると思った。ちなみにこれは俺との比較もあるが、今日も扉の奥でよくわからない作戦を考えているであろう中楚も巻き込んだ感想だ。

「わざわざありがとう。それじゃあ……」
「ああ!? もうちょっと待ってください。それでその……前々から聞きたかったことがあったんです」

 そう言いながら村上さんはやや前のめりになりながら真剣な目で俺を見てくる。そこから聞かれる内容について、考えられる可能性はいくつかあった。
 これで俺が浮かれ野郎なら「あんなに毎日仲良さそうに話している捻木涼花ちゃんとはいったいどういう関係なんですか!?」みたいな都合のいい流れを予想するのだが……

「……中楚さんとはどこまで進んでるんですか!?」
「……は?」

 反応としては驚いた風になったけど、村上さんから出てきた言葉は割と予想できていた。うん、まぁ、こんなに毎日来てたらそういう発想も出てくるよね。

「ちょっとムラさん! どこまでは聞き過ぎだって! せめてお互いに気持ちがあるかどうかから……」
「いやいや、中楚さんはそういうタイプじゃないからやっぱりモデルくんを元にした超大作を制作してるだけなんだよ。今、どれくらいできあがってます?」
「そんなに時間がかかるものかな……実はあの奥は異世界ゲートと繋がっていて、中楚氏とモデル殿は日夜……」

 村上さんに続いて今まで話声しか聞いたことがなかった部員の皆さんが口々に自分の意見を言っていく。
 さすがにそっちは予想外だった。以前から珍しいものを見るような目線を感じていたのはこういう話が美術部内で交わされていたからなのかもしれない。
 というか、準備室の方で結構騒いでいるから少しくらい聞こえていると思ったけど、こんな憶測が飛び交うくらいには準備室内の出来事は漏れていなかったのか。こちらとしてはめちゃくちゃ助かるからありがたいけど。

「あの、全然そういうのじゃないんで。俺はただモデルとして通ってるだけです。超大作かどうかはわからないですけど、なかなか完成しないから毎日来るはめに……」
「でも、毎日来るなら絶対特別な感情があると思います」
「いやいや、中楚さんの芸術に対する熱意は本物で……」
「そうやって日常を装うの……定番って感じ」

 俺の弁解を聞いても部員の皆さんは自分の意見を曲げなかった。その瞬間、俺は大変失礼なことを考えてしまう。あなたたちも人の話を聞かないタイプか。

「みんな落ち着いて。モデルくんが困ってます」

 その混沌とした部員の皆さんをなだめたのは村上さんだった。それに対して部員たちは「ごめん、ムラさん」と返して平常心を取り戻すが……元はと言えばムラさんが先陣を切ったせいじゃないか?  それに俺ってモデルくんで通ってる感じなの? 話すのは初めてだからツッコまないけど!

「私は三雲さんが言っていることを信用します」
「は、はあ……」
「あっ、すみません。つい長く引き留めてしまいました。それでは今日も中楚さんのこと、よろしくお願いします」
「たまにはこっちに来てもいいって言っておいてください!」
「中楚さんの次回作も期待していますと伝えて頂けると嬉しいです」
「きっと中楚氏の戦いにも……平和はやって来ます」

 またも村上さんの言葉に続けて色々言われてしまう。でも、それらは全て中楚をどこか心配したり受け入れたりする気持ちが込められている気がした。
 
 中楚がこの美術準備室を自分の空間としている理由の一つには美術部員が許可してくれたというものがあった。それを疑っていたわけじゃないけど、今日初めて絡んだ感じからはそういう許可を出せる空気感があると思った。

「……やっぱり、最後にどこまで進んでるかだけ聞いていいですか?」
「ムラさん、抜け駆けー!」

 それと同時にこの濃い面々の中楚に纏わる興味に対して、今までは涼花ちゃんが防波堤になってくれていたことも実感した。どこまで話していいかわからない俺はお茶を濁しながら準備室へ入っていく。

「……あれ?」

 だが、入って辺りを見渡してもいつもなら何らかの形で迎える中楚の姿が見えない。どこに隠れているのかと疑いながらもう一度左右を確認して、ちょうど目線が下になった時――

「中楚!?」

 俺は床に倒れている中楚を発見する。
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