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1年生夏休み
8月22日(日)曇り もう一人のばあちゃん
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夏休み33日目。先週は京都の母方の祖父母宅へ行ったけど、今週は父方の祖母が……うちに来る。もう一人のばあちゃんの家はうちから30分程の距離にあり、それほど遠くないことから長期休みじゃなくても行くことがある。ただ、それはそれとして、こちらのばあちゃんは自分の家より他人の家に行きたいタイプで、今回は僕と明莉が夏休み中ということもあって、うちへ来ることになった。
午前10時頃。玄関のチャイムが鳴ると、家族4人で出迎える。
「やっほー 元気してたぁ?」
それに対するばあちゃんの第一声は相変わらずな感じだった。こちらのばあちゃんは京都のばあちゃんは全く雰囲気の違う人で、京都のばあちゃんは方言のおかげもあってか優しい印象だけど、こちらのばあちゃんは何かとパワフルだ。
「おふくろ、またいっぱい荷物持ってきて……」
「いいじゃないの! これ、この前に九州行った時のやつね! こっちはさっきデパートで買ってきたやつ。それからこれは……」
「いつもすみません、お義母さん」
「気にしない気にしない! 正敏、ぼさっとしてないで持っていきな!」
流れるようにお土産を出してくるところも見慣れたものだ。旅行好きで珍しいもの好きなところはばあちゃんの若々しさの秘訣なのかもしれない。
「おー 明莉と良助! ちょっと待ってな、今、小遣いを……」
「まぁまぁ、おばちゃん一旦は上がろうよ」
「ま~ 明莉もそんなこと言えるようになって……また欲しいものでもできたかい?」
「そうなんだよ! 明莉、この夏休みは遊び尽くしで」
「しょうがないねぇ。それじゃあ、今回はもうちょっとおまけで……」
「本当に!? やったー!」
そんなばあちゃんに対する明莉は京都のばあちゃんと同じように甘えるには甘えているけど、同じテンションで話している感じがする。明莉の性格が父さん似であることを考えると、こちらのばあちゃんの波長と近いものがあるのだろうか。
「良助はどう? 高校エンジョイしてる?」
「うん。それなりには」
「ふーん……で、彼女はできた?」
一方の僕は、ばあちゃんのテンションが苦手とまでは言わないけど、少々合わせるのに苦労する。京都では身長のことを触れられるけど、こちらのばあちゃんは毎回、彼女うんぬんの話をしてくる。
「できてない」
「そうかー まだこれからだよ。夏休みもまだまだあるし」
「おばあちゃん、これでもりょうちゃんは高校で女の子の友達何人かいるんだよ?」
「ほう。その話、もっと詳しく聞かせて貰おうか」
ばあちゃんと明莉の連携で、僕はいきなり追い込まれた。勘弁して欲しい……けど、せっかくばあちゃんが来たので、真実を知らせる意味でも僕は近況を喋ることになった。
◇
ばあちゃんとの会話が一通り終わり、昼食も食べ終えると、暇な時間になる。ただ、ばあちゃんがわざわざうちに来るのは暇を持て余すためではない。
「良助、明莉。ゲームでもやらないかい。ほら、この前やった何とかパーティーってやつ」
いつ頃からかは忘れたけど、ばあちゃんはテレビゲームにも興味を持って、うちに来る時の午後の時間はだいたい僕や明莉と一緒にゲームをすることになっている。僕と明莉はばあちゃんを挟んで、テレビの前に座ると、ばあちゃんは真剣な表情に変わる。
「おばあちゃん、最近家では何のゲームしてるの?」
「森のやつ。あれ、まだ家具が全部揃ってないんだよ」
「えー!? コンプリートってめっちゃ大変なんじゃない!?」
明莉は僕の方に聞いてくるので、僕は「たぶん」と言っておく。僕も詳しくはわからないけど、コンプリートとなると大変なのは間違いない。だけど、ばあちゃんはゲームでも凝り性だから本当にコンプするまでやりそうだ。
それからゲームが始まっていくと、さすがに経験値の差はあって僕や明莉が勝つパターンが多い。それでばあちゃんが満足してくれればいいけど……
「うーん…………もう一戦やらない?」
ばあちゃんは負けず嫌いでもある。それでいてわざと負けるようなら何を言われるかわからないからバレないくらいの程よく負ける必要がある。そうしないと、恐らく永遠に対戦を続けられるだろう。
「よし、今回はばあちゃんの勝ちだね!」
「おばあちゃん、どんどん上手くなるねー! 今度、動画投稿とかしてみたら?」
「おっ、いいねー! 何とかチューバーデビューだ!」
そして、勝てば調子よく話し出してまた盛り上がる。この時間になるとようやく僕もテンションに付いていけるようになって、ツッコミとかもできるけど……
「それじゃあ、また来るから」
「いいんですか、お義母さん? 一泊していってもいいのに」
「別に泊まるような距離じゃないから大丈夫だよ。それに明日も予定があるし」
夕方に差し掛かると、ばあちゃんはもう帰る準備を完了していた。僕たちが家に行く時はゆっくりさせて貰うけど、ばあちゃんが来る時は疾風のように過ぎ去っていく。だから僕がテンションに追いついた頃にはもうばあちゃんは帰ってしまうのだ。
「良助と明莉も元気で! あっ、暇なら運動会やら文化祭やらも覗きに行くから」
「うん。おばあちゃんも元気でー!」
僕もそれに続けて「また今度」と挨拶する。こんな風にばあちゃんが忙しなくなったのは……こちらのじいちゃんが亡くなってからだ。いや、それまでも元気で旅行好きだったことには変わりないし、動きが早い人ではあったけど、それがより加速している。
それが精一杯やりたいことをするためのものなら僕は素晴らしいことだと思う。だけど、もしもそれが寂しさを紛らわすためのものなら、一泊くらいしてもいいのにと思ってしまう。
そんなことを考えていた僕がばあちゃんが帰った後の玄関を少しの間ボーっと眺めていると、父さんが話しかける。
「良助、どうしたんだ?」
「あっ、いや……ばあちゃんがあまりにもあっという間に来て帰ったから」
「ははっ。まぁ、ばあちゃんはまだまだ現役のつもりだからな。ちょっとは大人しくてくれてもいいけど、逆にそれが元気の証拠だ」
「……うん。そうだね」
「毎回ありがとうな、良助」
父さんがそう言ったのは昼間ゲームで遊んだことか、それとも今さっきまで僕が考えていたことか。ただ、どちらにしても実の息子である父さんが言うならばあちゃんはばあちゃんらしく今をエンジョイしてるんだろう。
午前10時頃。玄関のチャイムが鳴ると、家族4人で出迎える。
「やっほー 元気してたぁ?」
それに対するばあちゃんの第一声は相変わらずな感じだった。こちらのばあちゃんは京都のばあちゃんは全く雰囲気の違う人で、京都のばあちゃんは方言のおかげもあってか優しい印象だけど、こちらのばあちゃんは何かとパワフルだ。
「おふくろ、またいっぱい荷物持ってきて……」
「いいじゃないの! これ、この前に九州行った時のやつね! こっちはさっきデパートで買ってきたやつ。それからこれは……」
「いつもすみません、お義母さん」
「気にしない気にしない! 正敏、ぼさっとしてないで持っていきな!」
流れるようにお土産を出してくるところも見慣れたものだ。旅行好きで珍しいもの好きなところはばあちゃんの若々しさの秘訣なのかもしれない。
「おー 明莉と良助! ちょっと待ってな、今、小遣いを……」
「まぁまぁ、おばちゃん一旦は上がろうよ」
「ま~ 明莉もそんなこと言えるようになって……また欲しいものでもできたかい?」
「そうなんだよ! 明莉、この夏休みは遊び尽くしで」
「しょうがないねぇ。それじゃあ、今回はもうちょっとおまけで……」
「本当に!? やったー!」
そんなばあちゃんに対する明莉は京都のばあちゃんと同じように甘えるには甘えているけど、同じテンションで話している感じがする。明莉の性格が父さん似であることを考えると、こちらのばあちゃんの波長と近いものがあるのだろうか。
「良助はどう? 高校エンジョイしてる?」
「うん。それなりには」
「ふーん……で、彼女はできた?」
一方の僕は、ばあちゃんのテンションが苦手とまでは言わないけど、少々合わせるのに苦労する。京都では身長のことを触れられるけど、こちらのばあちゃんは毎回、彼女うんぬんの話をしてくる。
「できてない」
「そうかー まだこれからだよ。夏休みもまだまだあるし」
「おばあちゃん、これでもりょうちゃんは高校で女の子の友達何人かいるんだよ?」
「ほう。その話、もっと詳しく聞かせて貰おうか」
ばあちゃんと明莉の連携で、僕はいきなり追い込まれた。勘弁して欲しい……けど、せっかくばあちゃんが来たので、真実を知らせる意味でも僕は近況を喋ることになった。
◇
ばあちゃんとの会話が一通り終わり、昼食も食べ終えると、暇な時間になる。ただ、ばあちゃんがわざわざうちに来るのは暇を持て余すためではない。
「良助、明莉。ゲームでもやらないかい。ほら、この前やった何とかパーティーってやつ」
いつ頃からかは忘れたけど、ばあちゃんはテレビゲームにも興味を持って、うちに来る時の午後の時間はだいたい僕や明莉と一緒にゲームをすることになっている。僕と明莉はばあちゃんを挟んで、テレビの前に座ると、ばあちゃんは真剣な表情に変わる。
「おばあちゃん、最近家では何のゲームしてるの?」
「森のやつ。あれ、まだ家具が全部揃ってないんだよ」
「えー!? コンプリートってめっちゃ大変なんじゃない!?」
明莉は僕の方に聞いてくるので、僕は「たぶん」と言っておく。僕も詳しくはわからないけど、コンプリートとなると大変なのは間違いない。だけど、ばあちゃんはゲームでも凝り性だから本当にコンプするまでやりそうだ。
それからゲームが始まっていくと、さすがに経験値の差はあって僕や明莉が勝つパターンが多い。それでばあちゃんが満足してくれればいいけど……
「うーん…………もう一戦やらない?」
ばあちゃんは負けず嫌いでもある。それでいてわざと負けるようなら何を言われるかわからないからバレないくらいの程よく負ける必要がある。そうしないと、恐らく永遠に対戦を続けられるだろう。
「よし、今回はばあちゃんの勝ちだね!」
「おばあちゃん、どんどん上手くなるねー! 今度、動画投稿とかしてみたら?」
「おっ、いいねー! 何とかチューバーデビューだ!」
そして、勝てば調子よく話し出してまた盛り上がる。この時間になるとようやく僕もテンションに付いていけるようになって、ツッコミとかもできるけど……
「それじゃあ、また来るから」
「いいんですか、お義母さん? 一泊していってもいいのに」
「別に泊まるような距離じゃないから大丈夫だよ。それに明日も予定があるし」
夕方に差し掛かると、ばあちゃんはもう帰る準備を完了していた。僕たちが家に行く時はゆっくりさせて貰うけど、ばあちゃんが来る時は疾風のように過ぎ去っていく。だから僕がテンションに追いついた頃にはもうばあちゃんは帰ってしまうのだ。
「良助と明莉も元気で! あっ、暇なら運動会やら文化祭やらも覗きに行くから」
「うん。おばあちゃんも元気でー!」
僕もそれに続けて「また今度」と挨拶する。こんな風にばあちゃんが忙しなくなったのは……こちらのじいちゃんが亡くなってからだ。いや、それまでも元気で旅行好きだったことには変わりないし、動きが早い人ではあったけど、それがより加速している。
それが精一杯やりたいことをするためのものなら僕は素晴らしいことだと思う。だけど、もしもそれが寂しさを紛らわすためのものなら、一泊くらいしてもいいのにと思ってしまう。
そんなことを考えていた僕がばあちゃんが帰った後の玄関を少しの間ボーっと眺めていると、父さんが話しかける。
「良助、どうしたんだ?」
「あっ、いや……ばあちゃんがあまりにもあっという間に来て帰ったから」
「ははっ。まぁ、ばあちゃんはまだまだ現役のつもりだからな。ちょっとは大人しくてくれてもいいけど、逆にそれが元気の証拠だ」
「……うん。そうだね」
「毎回ありがとうな、良助」
父さんがそう言ったのは昼間ゲームで遊んだことか、それとも今さっきまで僕が考えていたことか。ただ、どちらにしても実の息子である父さんが言うならばあちゃんはばあちゃんらしく今をエンジョイしてるんだろう。
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