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第二章 地下迷宮のオルクス
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息が荒い。
ミルコは焦っている。
階段の手前まで来るのに倍以上の時間がかかっていた。
地下一階の惨状は想像以上だった。
ここに来るまでにおそらく新兵と思われる数人の死体を見つけた。おそらく回収が間に合っていないくらいの犠牲者が出ている。
死体を調べたハックが、「金目のものが奪われている」と言った。
ファンドグが太いため息をついた。
「傷口が刃物じゃないから、恐らくさっき俺たちが倒した死甲虫にやられたんだろうな」
「クソが」ファンドグが悪態をつく。「死体漁りに成り下がりやがって」
「ということは、これを奪ったのはオルクスということになりますね」
ミルコが言った。
「そりゃそうや。昆虫が金目のものを奪うはずあらへんからな」メイリィが言った。
おかしい。
もしこれを襲ったのが死甲虫だとして、
昆虫たちはなぜオルクスを襲わないのか?
「もしかしたら」ミルコは言った。「オルクスは昆虫に襲われない何かを持っているのかもしれません」
思えば、ストーンフライに襲われたとき、床に転がっていて無防備だったはずのオルクス魔導士は襲われていない。
「何か心当たりはあるか?」スラッシュが尋ねる。
「いや」ファンドグは首を振った。フルヘルムがかちゃかちゃと揺れる。
「オルクスに効く虫除けなんて、そんな話は聞いたことがない」
「うまく隠れて逃げおおせてるって線はありませんかね?」フーガが言った。
「そうかもしれませんが」ミルコは言った。
「引っかかります」
ミルコたちは先に進み、踊り場に着くまでに、さらに死甲虫と、ドラゴンフライを倒さねばならなかった。
六人にとってそれは容易い敵ではないが、充分に倒せる相手ではある。
しかし、いかんせん、
「遭遇率が高すぎませんか」
息を荒くしながらミルコが言った。
「そう、だな」ハックも少し息が切れている。
「しかし休んでると虫が寄ってくる。どうなってるんだこれは」
かつてのT字路、今は三叉路になっているところまで来るのに、数回の戦闘を経ねばならなかっった。
多くのハンターが集い、送りこまれる一階では、階段に着くまでに一回か二回ほどしか会敵しない。それがここが「初心者区域」と言われる所以であり、迷宮に来たてのハンターたちはここで迷宮戦闘のイロハを学んでいくのだ。
その場所が大型昆虫や特殊昆虫の巣になってしまっている、ということは、バランスが完全に崩れてしまっている、ということだ。
「階段に向かいます」ミルコが短く言った。
全員が無言で頷く。
いつもは軽口ばかりのメイリィでさえ、魔法晶石を杖に装填しながら、静かに進んでいる。
「来ます」フーガが短く叫んだ。
ここに来て数回めの羽音だ。
大型昆虫の羽音が階段下から聞こえる。
「またかよ」
小型犬ほどある大きな甲虫が数匹、階段からこちらに飛んできた。
迷宮甲虫だ。
「三匹!」
「メイリィは魔法を温存して」ミルコが言った。「フーガ!矢を強化します」
ミルコの強化した矢が、フーガの弓から放たれる。
矢は中央の甲虫の口吻の部分に命中した。
のけぞった甲虫を、ファンドグが盾で弾き飛ばす。
ハックが横から放った投げナイフが甲虫の羽の隙間に刺さり、甲虫は地面に落ちる。
「士電流抜刀術」
スラッシュが刀の刃を左の甲虫に向け、突進した。
「翡翠」
刀の鋒が甲虫の頭から腹を串刺しにし、そのまま刃は腹に抜ける。
体液を撒き散らして甲虫が落ちる。
しかし、右の甲虫はそのまま頭上から後列に襲いかかった。
「は!」
ミルコがメイスの一撃を甲虫に当てる。
綺麗に下から入った衝撃で、昆虫が怯んだ。
その背後から、ハックが甲虫に斬りつける。
甲虫は地面に落ちた。
「うへぇ」メイリィが辟易したように言った。
「なんなん」
ミルコは甲虫の頭部をメイスで潰し、完全に息の根を止めた。
「厄介ですね」
「矢継ぎばやだな」
ミルコはつぶやいた。
「やはり…」
そのとき、ハックが投げナイフを壁に投げた。
何もない壁にナイフが飛ぶ。
壁にナイフが当たる瞬間、そのナイフが弾かれた。
「何だ?」ファンドグが叫んだ。
「迷彩です!」
壁だと思われていた模様はローブ姿の人影になり、階段を駆け降りていく。
迷宮の暗がりに身を潜めるための術。
敵をやり過ごしたり奇襲をかけたりするのに使う、マントやローブにかける魔法だ。
レンジャーやシーフが使う、基本の術である。
「なんだあれ」
隠れていた人影は階段を数段飛びに降りていく。足が速い。
「任せてください」フーガが飛びだす。
「深追いするな!」ハックが叫んだ。
人影が振り返る。
オルクスだ。
「止まれフーガ!」
フーガが回転して何かを避けた。
ローブの男が投げたナイフが床に刺さる。
階段の踊り場に六人が到着するのと、周囲から数名のオルクスが姿を表すのが同時だった。
「くそっ!待ち伏せか」
ハックが構える。
オルクスの数は六人。
マカリスター理論、と口の中でミルコがつぶやく。
ファンドグが戦斧を構えて、何かを叫んだ。
オルクス語だ。
オルクスが怒鳴り返す。
「なんだって?」
「殺す、とよ」ファンドグが構えた。
「それは訳さなくてもわかるな」ハックが小刀を抜く。
「いくぞ」
三人が突進するのと、オルクスが突進するのが同時だった。
「足止め!」
ミルコの魔法が飛ぶ。
一人のオルクスが転んだ。
転んだオルクスの首にハックが刀を刺す。
スラッシュは相手の懐に飛び込み、刀を跳ね上げる。
小盾でそれを受けたオルクスの左手首が宙に舞った。
「腕ごと斬りやがった」ファンドグが唸った。
そのファンドグ目掛け炎の矢が飛ぶ。
ファンドグが盾で炎の矢を受ける。
続けて中央の戦士が戦槌を振りかぶった、その戦槌に、
「火矢」
メイリィの魔法が命中する。
戦槌が飛ぶほどの衝撃に、オルクスが思わず武器を落とす。
そのオルクスの頭部を、斧の背でファンドグが薙ぎ払った。
冑が吹き飛び、オルクスが壁に激突して動かなくなる。
魔法を放った魔導士の首に、ハックが刀を叩きつけた。血飛沫が舞う。
フーガの矢がさっき逃げていたオルクスの盗賊の首を撃ち抜いた。
先ほど左手首を切り落とされたオルクスの手が、青白く輝く。
「治癒魔法か」
スラッシュが治癒魔法を唱えているオルクスを革鎧ごと斬り伏せ、沈黙させる。
右手に剣を構え直して突進してくるオルクスに、ファンドグが戦斧を叩きつけた。
オルクスは全て、床に転がった。
「やりすぎた」ファンドグがうめく。「話を聞ける奴が残っていない」
「しゃあないがな」メイリィが言った。「手加減できる相手やなかったさかいな」
「やはり、オルクスと虫には関係があるようですね」
「虫を操る方法でもあるのか」スラッシュが刀を拭きながら言った。
「それは調べないとわからないですが」
「こいつ、まだ息があるぞ」ハックが言った。
五人が駆け寄る。
ファンドグによって壁に叩きつけられたオルクスが、うめきながら立ち上がろうとする。
「加重」
ミルコが魔法でオルクスを床に固定した。
「話を聞こう」ハックが言った。
「通訳してくれ」
「虫とオルクスの関係を聞いてみてください」ミルコがファンドグに言った。
ファンドグがオルクスの横面を何度か張り、強い語気で尋ねる。
オルクスはうめきながら答える。
「昆虫は、この迷宮で長が手懐けた、と言っている」ファンドグが言った。
「手懐けた?」ハックが言った。「どうやって?」
ファンドグがさらに荒々しく尋ねる。
突然、息が切れ切れにオルクスがうめき始めた。
「なんだ」ファンドグが慌てて後ずさる。
オルクスの体が、灰色の石に変わり始めた。
「ストーンフライです!下がって!」
ミルコがメイスでオルクスの足を払った。
オルクスの足に噛み付いていた蝿が潰されて落ちる。
「くそっ」ファンドグが呻いた。「なんなんだ」
オルクスの体は痙攣し、完全に石化した。
「間に合わなかった」
「石化は解除できないのか」ハックが言った。
メイリィが首を振る。
「石化解除は複雑な術式のいる儀式魔法です。ここでは」
「こいつ一匹だけやな」周囲を警戒していたメイリィが言った。「そんなんある?気持ち悪いわ」
「口封じでもしようとしたみたいですね」
「どうした」ハックがファンドグに聞いた。
「こいつは最後にこう言った」ファンドグはつぶやいた。
「ガルドンクに逆らうと、みんな死ぬ、と」
ミルコは焦っている。
階段の手前まで来るのに倍以上の時間がかかっていた。
地下一階の惨状は想像以上だった。
ここに来るまでにおそらく新兵と思われる数人の死体を見つけた。おそらく回収が間に合っていないくらいの犠牲者が出ている。
死体を調べたハックが、「金目のものが奪われている」と言った。
ファンドグが太いため息をついた。
「傷口が刃物じゃないから、恐らくさっき俺たちが倒した死甲虫にやられたんだろうな」
「クソが」ファンドグが悪態をつく。「死体漁りに成り下がりやがって」
「ということは、これを奪ったのはオルクスということになりますね」
ミルコが言った。
「そりゃそうや。昆虫が金目のものを奪うはずあらへんからな」メイリィが言った。
おかしい。
もしこれを襲ったのが死甲虫だとして、
昆虫たちはなぜオルクスを襲わないのか?
「もしかしたら」ミルコは言った。「オルクスは昆虫に襲われない何かを持っているのかもしれません」
思えば、ストーンフライに襲われたとき、床に転がっていて無防備だったはずのオルクス魔導士は襲われていない。
「何か心当たりはあるか?」スラッシュが尋ねる。
「いや」ファンドグは首を振った。フルヘルムがかちゃかちゃと揺れる。
「オルクスに効く虫除けなんて、そんな話は聞いたことがない」
「うまく隠れて逃げおおせてるって線はありませんかね?」フーガが言った。
「そうかもしれませんが」ミルコは言った。
「引っかかります」
ミルコたちは先に進み、踊り場に着くまでに、さらに死甲虫と、ドラゴンフライを倒さねばならなかった。
六人にとってそれは容易い敵ではないが、充分に倒せる相手ではある。
しかし、いかんせん、
「遭遇率が高すぎませんか」
息を荒くしながらミルコが言った。
「そう、だな」ハックも少し息が切れている。
「しかし休んでると虫が寄ってくる。どうなってるんだこれは」
かつてのT字路、今は三叉路になっているところまで来るのに、数回の戦闘を経ねばならなかっった。
多くのハンターが集い、送りこまれる一階では、階段に着くまでに一回か二回ほどしか会敵しない。それがここが「初心者区域」と言われる所以であり、迷宮に来たてのハンターたちはここで迷宮戦闘のイロハを学んでいくのだ。
その場所が大型昆虫や特殊昆虫の巣になってしまっている、ということは、バランスが完全に崩れてしまっている、ということだ。
「階段に向かいます」ミルコが短く言った。
全員が無言で頷く。
いつもは軽口ばかりのメイリィでさえ、魔法晶石を杖に装填しながら、静かに進んでいる。
「来ます」フーガが短く叫んだ。
ここに来て数回めの羽音だ。
大型昆虫の羽音が階段下から聞こえる。
「またかよ」
小型犬ほどある大きな甲虫が数匹、階段からこちらに飛んできた。
迷宮甲虫だ。
「三匹!」
「メイリィは魔法を温存して」ミルコが言った。「フーガ!矢を強化します」
ミルコの強化した矢が、フーガの弓から放たれる。
矢は中央の甲虫の口吻の部分に命中した。
のけぞった甲虫を、ファンドグが盾で弾き飛ばす。
ハックが横から放った投げナイフが甲虫の羽の隙間に刺さり、甲虫は地面に落ちる。
「士電流抜刀術」
スラッシュが刀の刃を左の甲虫に向け、突進した。
「翡翠」
刀の鋒が甲虫の頭から腹を串刺しにし、そのまま刃は腹に抜ける。
体液を撒き散らして甲虫が落ちる。
しかし、右の甲虫はそのまま頭上から後列に襲いかかった。
「は!」
ミルコがメイスの一撃を甲虫に当てる。
綺麗に下から入った衝撃で、昆虫が怯んだ。
その背後から、ハックが甲虫に斬りつける。
甲虫は地面に落ちた。
「うへぇ」メイリィが辟易したように言った。
「なんなん」
ミルコは甲虫の頭部をメイスで潰し、完全に息の根を止めた。
「厄介ですね」
「矢継ぎばやだな」
ミルコはつぶやいた。
「やはり…」
そのとき、ハックが投げナイフを壁に投げた。
何もない壁にナイフが飛ぶ。
壁にナイフが当たる瞬間、そのナイフが弾かれた。
「何だ?」ファンドグが叫んだ。
「迷彩です!」
壁だと思われていた模様はローブ姿の人影になり、階段を駆け降りていく。
迷宮の暗がりに身を潜めるための術。
敵をやり過ごしたり奇襲をかけたりするのに使う、マントやローブにかける魔法だ。
レンジャーやシーフが使う、基本の術である。
「なんだあれ」
隠れていた人影は階段を数段飛びに降りていく。足が速い。
「任せてください」フーガが飛びだす。
「深追いするな!」ハックが叫んだ。
人影が振り返る。
オルクスだ。
「止まれフーガ!」
フーガが回転して何かを避けた。
ローブの男が投げたナイフが床に刺さる。
階段の踊り場に六人が到着するのと、周囲から数名のオルクスが姿を表すのが同時だった。
「くそっ!待ち伏せか」
ハックが構える。
オルクスの数は六人。
マカリスター理論、と口の中でミルコがつぶやく。
ファンドグが戦斧を構えて、何かを叫んだ。
オルクス語だ。
オルクスが怒鳴り返す。
「なんだって?」
「殺す、とよ」ファンドグが構えた。
「それは訳さなくてもわかるな」ハックが小刀を抜く。
「いくぞ」
三人が突進するのと、オルクスが突進するのが同時だった。
「足止め!」
ミルコの魔法が飛ぶ。
一人のオルクスが転んだ。
転んだオルクスの首にハックが刀を刺す。
スラッシュは相手の懐に飛び込み、刀を跳ね上げる。
小盾でそれを受けたオルクスの左手首が宙に舞った。
「腕ごと斬りやがった」ファンドグが唸った。
そのファンドグ目掛け炎の矢が飛ぶ。
ファンドグが盾で炎の矢を受ける。
続けて中央の戦士が戦槌を振りかぶった、その戦槌に、
「火矢」
メイリィの魔法が命中する。
戦槌が飛ぶほどの衝撃に、オルクスが思わず武器を落とす。
そのオルクスの頭部を、斧の背でファンドグが薙ぎ払った。
冑が吹き飛び、オルクスが壁に激突して動かなくなる。
魔法を放った魔導士の首に、ハックが刀を叩きつけた。血飛沫が舞う。
フーガの矢がさっき逃げていたオルクスの盗賊の首を撃ち抜いた。
先ほど左手首を切り落とされたオルクスの手が、青白く輝く。
「治癒魔法か」
スラッシュが治癒魔法を唱えているオルクスを革鎧ごと斬り伏せ、沈黙させる。
右手に剣を構え直して突進してくるオルクスに、ファンドグが戦斧を叩きつけた。
オルクスは全て、床に転がった。
「やりすぎた」ファンドグがうめく。「話を聞ける奴が残っていない」
「しゃあないがな」メイリィが言った。「手加減できる相手やなかったさかいな」
「やはり、オルクスと虫には関係があるようですね」
「虫を操る方法でもあるのか」スラッシュが刀を拭きながら言った。
「それは調べないとわからないですが」
「こいつ、まだ息があるぞ」ハックが言った。
五人が駆け寄る。
ファンドグによって壁に叩きつけられたオルクスが、うめきながら立ち上がろうとする。
「加重」
ミルコが魔法でオルクスを床に固定した。
「話を聞こう」ハックが言った。
「通訳してくれ」
「虫とオルクスの関係を聞いてみてください」ミルコがファンドグに言った。
ファンドグがオルクスの横面を何度か張り、強い語気で尋ねる。
オルクスはうめきながら答える。
「昆虫は、この迷宮で長が手懐けた、と言っている」ファンドグが言った。
「手懐けた?」ハックが言った。「どうやって?」
ファンドグがさらに荒々しく尋ねる。
突然、息が切れ切れにオルクスがうめき始めた。
「なんだ」ファンドグが慌てて後ずさる。
オルクスの体が、灰色の石に変わり始めた。
「ストーンフライです!下がって!」
ミルコがメイスでオルクスの足を払った。
オルクスの足に噛み付いていた蝿が潰されて落ちる。
「くそっ」ファンドグが呻いた。「なんなんだ」
オルクスの体は痙攣し、完全に石化した。
「間に合わなかった」
「石化は解除できないのか」ハックが言った。
メイリィが首を振る。
「石化解除は複雑な術式のいる儀式魔法です。ここでは」
「こいつ一匹だけやな」周囲を警戒していたメイリィが言った。「そんなんある?気持ち悪いわ」
「口封じでもしようとしたみたいですね」
「どうした」ハックがファンドグに聞いた。
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