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第二話 狂犬の戦士たち
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旅の疲れがでたのか、夜も遅くなった途端に、眠りについてしまったレイナとクリス。当然レイナはベットで、クリスは床である。完全に熟睡しており、顔に出していなかったが、相当疲れが溜まっていたのだろう。あまりにも無防備で眠りについている二人。
一人の時と違い、複数の人間がいることに、安心を感じているためだろう。それはつまり、二人が仲間ではないにしろ、ここに居る者を信頼していることの表れなのだ。
旅と散策で疲れが溜まっていたリリカもベッドに入り、旅の残り資金を確認するなどのことを済ませた宗一もまた、明日に備えて眠りにつこうとした。
しかし二時間後・・・・・・・。
「眠れない・・・・・・・」
明日からの予定や旅の計画など、不安故に様々なことを考えてしまい、まったく眠りにつくことができない。遠足前の小学生が興奮で眠れないことと、ある意味同じと言える。
帝国を出発して何日も経った。今日までこの世界で生き残っているが、ユリーシアのために始めた、この旅の目的を果たせる日は来るのだろうか。目的達成のためには、隣で寝ている二人の力が必要だ。わかっていても、どうすれば二人を手に入れられるのかと、そう考えている内に、目が冴えてしまって眠りにつけないでいる。
「眠れないのかい?」
声の主はリリカであった。宗一が床から体を起こしてベットを見ると、眠りについていたはずのリリカが、彼を見つめている。
「色々不安でさ。お金のこととか・・・・・」
「食べ歩きに使ったからね。まったく、レイナとクリスには困ったものだよ」
「まてまて、一番の原因はお前だろ。私は関係ありませんみたいなこと言うなよ」
何故か一緒に旅をすることになり、何故か色々なものを奢らされている。常に妖艶で、常に余裕がある年上の女性。不安だった一人旅も、彼女がいたから、ここまで楽しくやってこれたと思う。
まだ一か月も経っていないにも関わらず、このように思うのは、今までの人生で経験したことのない、ファンタジー世界での旅をしているからか。それとも彼女に、特別な感情を抱いているからなのか。ユリーシアやメシアに抱いた感情を、彼女にも感じているようだ。
だが、一体何故なのか?単に宗一自身が、年上好きの性癖があるということなのか。もしそうであったとしても、それだけのせいでないと思う。あの出会いは偶然ではなかったという直感が、宗一にそう思わせているのだ。
何度もはぐらかされている、彼女の正体がわかれば、この直感の答えがわかるかも知れない。しかし、無理に聞き出すつもりはない。彼女が答えたくないのなら、それでいいと考えている。
勿論気にはなるが、彼女を困らせたくはないし、嫌われることも御免なのだ。
「まあ、私も少しは原因になっているかも知れないね」
「もっと自覚してくれ。・・・・・・明日のためにもう寝ろよ」
「眠れないのだろ宗一?こっちに来るといい」
そう言うと彼女は、自分のベッドへと宗一を誘う。驚いた宗一が立ち上がった瞬間、リリカは彼の手を掴んで、自身へと引き寄せた。突然の力によって、ベッドへと倒れ込む宗一の眼前に、笑みを浮かべているリリカの表情が映る。
白く綺麗な彼女の素肌と、流れる金色の髪。それが今、彼女の吐息を感じることができるほど近くに映っている。
自然と彼の心臓の鼓動は速くなり、興奮によって顔が朱に染まっていく。彼女の容姿も言葉も魔性の毒だ。一度知ってしまうと侵され続ける、美しく優しい毒。
「もっと寄ってくるといい」
「そっ、そうしたいけど・・・・・・。おいおい!?腕をまわしてくるな」
「恥ずかしがらなくていい。・・・・・・おやすみ、宗一郎」
驚き恥ずかしがる宗一を、胸元へと抱きしめ眠りにつくリリカ。彼女の心臓の鼓動が聞こえ、呼吸を感じることができる。傍にリリカと言う存在を、これ以上ない程に感じ、緊張が極限まで高まる。
しかし、不思議なことに安心する。当然嫌というわけではないが、急にこんな展開となって安心するということが、理解できない。今の気分は、まるで求めていたものを手に入れた様な感覚で、自分でもよくわからないが、安心を感じている。
いや、本当はわかっているのかも知れない。
「おやすみ・・・・・・・リリカ」
安心感と彼女の温もりに包まれながら、ゆっくりと眠りについていく。
宗一がようやく眠りについた後、未だ眠りについてなどいなかったリリカが、目を開ける。
胸元に抱きしめた宗一が、ようやく眠りについたことを確認し、優しく頭を撫でていく。愛おしいものを大切にするように、彼の頭を撫で続ける。だがその表情は、何かを憂う苦しく悲しいものだった。
「ごめんなさい・・・・・・・」
やがて彼女も眠りにつき、静寂が訪れる。
彼女が囁いた言葉もその意味も、彼が知ることはない。
翌朝。
武術家故なのか、早起きのレイナとクリス。ほぼ同時に起きた二人が見たものは、ベッドで宗一がリリカに抱きしめられ眠っている、男ならば必ず羨ましがる光景であった。
現状が理解できず混乱しているレイナと、羨ましさと悔しさに、もの凄い表情で宗一を睨むクリス。
そんな二人のせいで目が覚めた宗一が、一度起きて改めて現状を理解し、恥ずかしさで顔を真っ赤にする。その後宗一は、抱きしめられたまま二度寝を行なおうとしたが、二人に無理やり引き剥がされて、完全に起こされた。
最後にリリカも目を覚まし、今日という日が始まる。
一人の時と違い、複数の人間がいることに、安心を感じているためだろう。それはつまり、二人が仲間ではないにしろ、ここに居る者を信頼していることの表れなのだ。
旅と散策で疲れが溜まっていたリリカもベッドに入り、旅の残り資金を確認するなどのことを済ませた宗一もまた、明日に備えて眠りにつこうとした。
しかし二時間後・・・・・・・。
「眠れない・・・・・・・」
明日からの予定や旅の計画など、不安故に様々なことを考えてしまい、まったく眠りにつくことができない。遠足前の小学生が興奮で眠れないことと、ある意味同じと言える。
帝国を出発して何日も経った。今日までこの世界で生き残っているが、ユリーシアのために始めた、この旅の目的を果たせる日は来るのだろうか。目的達成のためには、隣で寝ている二人の力が必要だ。わかっていても、どうすれば二人を手に入れられるのかと、そう考えている内に、目が冴えてしまって眠りにつけないでいる。
「眠れないのかい?」
声の主はリリカであった。宗一が床から体を起こしてベットを見ると、眠りについていたはずのリリカが、彼を見つめている。
「色々不安でさ。お金のこととか・・・・・」
「食べ歩きに使ったからね。まったく、レイナとクリスには困ったものだよ」
「まてまて、一番の原因はお前だろ。私は関係ありませんみたいなこと言うなよ」
何故か一緒に旅をすることになり、何故か色々なものを奢らされている。常に妖艶で、常に余裕がある年上の女性。不安だった一人旅も、彼女がいたから、ここまで楽しくやってこれたと思う。
まだ一か月も経っていないにも関わらず、このように思うのは、今までの人生で経験したことのない、ファンタジー世界での旅をしているからか。それとも彼女に、特別な感情を抱いているからなのか。ユリーシアやメシアに抱いた感情を、彼女にも感じているようだ。
だが、一体何故なのか?単に宗一自身が、年上好きの性癖があるということなのか。もしそうであったとしても、それだけのせいでないと思う。あの出会いは偶然ではなかったという直感が、宗一にそう思わせているのだ。
何度もはぐらかされている、彼女の正体がわかれば、この直感の答えがわかるかも知れない。しかし、無理に聞き出すつもりはない。彼女が答えたくないのなら、それでいいと考えている。
勿論気にはなるが、彼女を困らせたくはないし、嫌われることも御免なのだ。
「まあ、私も少しは原因になっているかも知れないね」
「もっと自覚してくれ。・・・・・・明日のためにもう寝ろよ」
「眠れないのだろ宗一?こっちに来るといい」
そう言うと彼女は、自分のベッドへと宗一を誘う。驚いた宗一が立ち上がった瞬間、リリカは彼の手を掴んで、自身へと引き寄せた。突然の力によって、ベッドへと倒れ込む宗一の眼前に、笑みを浮かべているリリカの表情が映る。
白く綺麗な彼女の素肌と、流れる金色の髪。それが今、彼女の吐息を感じることができるほど近くに映っている。
自然と彼の心臓の鼓動は速くなり、興奮によって顔が朱に染まっていく。彼女の容姿も言葉も魔性の毒だ。一度知ってしまうと侵され続ける、美しく優しい毒。
「もっと寄ってくるといい」
「そっ、そうしたいけど・・・・・・。おいおい!?腕をまわしてくるな」
「恥ずかしがらなくていい。・・・・・・おやすみ、宗一郎」
驚き恥ずかしがる宗一を、胸元へと抱きしめ眠りにつくリリカ。彼女の心臓の鼓動が聞こえ、呼吸を感じることができる。傍にリリカと言う存在を、これ以上ない程に感じ、緊張が極限まで高まる。
しかし、不思議なことに安心する。当然嫌というわけではないが、急にこんな展開となって安心するということが、理解できない。今の気分は、まるで求めていたものを手に入れた様な感覚で、自分でもよくわからないが、安心を感じている。
いや、本当はわかっているのかも知れない。
「おやすみ・・・・・・・リリカ」
安心感と彼女の温もりに包まれながら、ゆっくりと眠りについていく。
宗一がようやく眠りについた後、未だ眠りについてなどいなかったリリカが、目を開ける。
胸元に抱きしめた宗一が、ようやく眠りについたことを確認し、優しく頭を撫でていく。愛おしいものを大切にするように、彼の頭を撫で続ける。だがその表情は、何かを憂う苦しく悲しいものだった。
「ごめんなさい・・・・・・・」
やがて彼女も眠りにつき、静寂が訪れる。
彼女が囁いた言葉もその意味も、彼が知ることはない。
翌朝。
武術家故なのか、早起きのレイナとクリス。ほぼ同時に起きた二人が見たものは、ベッドで宗一がリリカに抱きしめられ眠っている、男ならば必ず羨ましがる光景であった。
現状が理解できず混乱しているレイナと、羨ましさと悔しさに、もの凄い表情で宗一を睨むクリス。
そんな二人のせいで目が覚めた宗一が、一度起きて改めて現状を理解し、恥ずかしさで顔を真っ赤にする。その後宗一は、抱きしめられたまま二度寝を行なおうとしたが、二人に無理やり引き剥がされて、完全に起こされた。
最後にリリカも目を覚まし、今日という日が始まる。
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