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第二十二話 エステラン攻略戦 前編
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「何だこの体たらくは!?我々の方が兵力で勝っているのだぞ!敵軍の撃破にいつまで時間をかけるつもりだ!!」
戦いはまだ始まったばかり。しかしこの男は、短気で堪えを知らないのである。
エステラン国軍後方陣地。陣地内で自分の部下達に対し叱責しているのは、エステラン国第二王子メロース・リ・エステランである。
彼に率いられた兵士達は、無茶で理不尽な命令を出され続けていた。王子に対する内心の怒りを必死に堪えつつ、兵士達は王子の叱責を受けている。
「敵は前線を立て直す為に後退したのだぞ!このまま追撃をかけて敵本陣を攻め上がればいい。何故それが出来んのだ!?」
「お言葉ですが、敵の狙いは我が軍を誘い出す事でしょう。追撃をかけた部隊をあの巨人で打ち倒そうとしているのは明白です。ここで徒に兵を失うわけには-------」
「黙れ!!この私に意見する気か!」
「けっ、決してそのような・・・・・・」
戦場において、メロースは我儘で無能な指揮官であると言える。的確な作戦指揮ができるわけではないと言うのに、自分で指揮を執ろうとするのだ。お陰で現場は混乱し、無用な損害を出してしまう。
今もそうである。現場を知っている兵士達からすれば、メロースの命令は実行してはいけないと理解している。大きな犠牲を払うとわかっていながら、勝てもしない戦いに兵を投入など出来ないからだ。追撃隊を出せば、間違いなく帝国軍の殿部隊と戦闘になる。その殿部隊とは今まで何度も戦闘しており、多大な犠牲を払い続けている。これまで一度もエステラン国軍は、帝国軍の殿部隊を突破できた事がないため、王子の命令は絶対に聞けなかった。
「あの巨人の如き男が率いている軍団など、私の精鋭達が必ず討ち取ってくれる。追撃部隊にあの者達を加え、すぐに攻撃をかけろ。これは命令だ!!」
メロースの言うあの者達とは、対ジエーデル戦に投入されていた特殊魔法使いである。彼らの存在があるからこそ、メロースは帝国に勝利できる絶対的自信を持っているのだ。
「殿下の仰る通り、確かに彼らならば勝てるかも知れません。ですが、彼らは我が軍の切り札です。前線に投入するのは早過ぎるのでは・・・・・・」
「今使わないでいつ使う!我々は今度こそ奴らを滅ぼすのだ。敗北は絶対に許さん!」
現在この戦場で戦うエステラン国軍の最高指揮権を持つのは、残念ながらメロースなのである。兵士達は彼に従う他なく、彼が精鋭部隊を投入しろと命令を出したなら、実行するしかないのだ。
だが、帝国軍の作戦も分らぬ内に、切り札である特殊魔法使いを投入するのは、後々あるかもしれない危機的状況に切り札を使えなくなってしまう。危機的状況への対応戦力をここで使い切ってしまうのは、兵士達からすれば愚策と言えた。
「全軍に通達するのだ!前線にサーペント隊を投入するとな!!」
前線の兵士の士気を上げるため、メロースは切り札投入の情報を全軍に通達するよう命令した。
この命令は、渋々兵士達により実行され、前線に伝えられた。前線にその情報が伝わってすぐ、エステラン国軍特殊魔法兵部隊「サーペント」は、初めて帝国軍との戦いに投入されたのである。
戦いはまだ始まったばかり。しかしこの男は、短気で堪えを知らないのである。
エステラン国軍後方陣地。陣地内で自分の部下達に対し叱責しているのは、エステラン国第二王子メロース・リ・エステランである。
彼に率いられた兵士達は、無茶で理不尽な命令を出され続けていた。王子に対する内心の怒りを必死に堪えつつ、兵士達は王子の叱責を受けている。
「敵は前線を立て直す為に後退したのだぞ!このまま追撃をかけて敵本陣を攻め上がればいい。何故それが出来んのだ!?」
「お言葉ですが、敵の狙いは我が軍を誘い出す事でしょう。追撃をかけた部隊をあの巨人で打ち倒そうとしているのは明白です。ここで徒に兵を失うわけには-------」
「黙れ!!この私に意見する気か!」
「けっ、決してそのような・・・・・・」
戦場において、メロースは我儘で無能な指揮官であると言える。的確な作戦指揮ができるわけではないと言うのに、自分で指揮を執ろうとするのだ。お陰で現場は混乱し、無用な損害を出してしまう。
今もそうである。現場を知っている兵士達からすれば、メロースの命令は実行してはいけないと理解している。大きな犠牲を払うとわかっていながら、勝てもしない戦いに兵を投入など出来ないからだ。追撃隊を出せば、間違いなく帝国軍の殿部隊と戦闘になる。その殿部隊とは今まで何度も戦闘しており、多大な犠牲を払い続けている。これまで一度もエステラン国軍は、帝国軍の殿部隊を突破できた事がないため、王子の命令は絶対に聞けなかった。
「あの巨人の如き男が率いている軍団など、私の精鋭達が必ず討ち取ってくれる。追撃部隊にあの者達を加え、すぐに攻撃をかけろ。これは命令だ!!」
メロースの言うあの者達とは、対ジエーデル戦に投入されていた特殊魔法使いである。彼らの存在があるからこそ、メロースは帝国に勝利できる絶対的自信を持っているのだ。
「殿下の仰る通り、確かに彼らならば勝てるかも知れません。ですが、彼らは我が軍の切り札です。前線に投入するのは早過ぎるのでは・・・・・・」
「今使わないでいつ使う!我々は今度こそ奴らを滅ぼすのだ。敗北は絶対に許さん!」
現在この戦場で戦うエステラン国軍の最高指揮権を持つのは、残念ながらメロースなのである。兵士達は彼に従う他なく、彼が精鋭部隊を投入しろと命令を出したなら、実行するしかないのだ。
だが、帝国軍の作戦も分らぬ内に、切り札である特殊魔法使いを投入するのは、後々あるかもしれない危機的状況に切り札を使えなくなってしまう。危機的状況への対応戦力をここで使い切ってしまうのは、兵士達からすれば愚策と言えた。
「全軍に通達するのだ!前線にサーペント隊を投入するとな!!」
前線の兵士の士気を上げるため、メロースは切り札投入の情報を全軍に通達するよう命令した。
この命令は、渋々兵士達により実行され、前線に伝えられた。前線にその情報が伝わってすぐ、エステラン国軍特殊魔法兵部隊「サーペント」は、初めて帝国軍との戦いに投入されたのである。
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