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第一章 王国動乱篇
第二十二話 偽物①
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その男は、ヴェルフェールの姿を見るや否や、一直線に駆け寄ってきた。
勇者と名乗った、その男が。
「――――勇者……?」
酷く頭が痛い。この感情はなんだ。
あいつは、勇者? 過去に神の手足となって私を殺しに来た、傀儡共の仲間?
騒音が、耳の奥で駆け巡る。嗚呼、五月蠅い。五月蠅い。
「その子たちから離れろおぉぉぉぉぉぉ!」
魔力の高まりを感じる。結構強いな、誰だ?
……冷静になれない。頭が回らない。何が起こってる。勇者、だっけか。嗚呼、どうして。
これは、そう。ショックか。衝撃の大きさに、耐えられなくて、そう。
視界には、ヴェルフェールに飛び掛かる男の姿が映っている。
は? いや、待て、待て。大丈夫だ私はまだ冷静だ。
落ち着いて、状況を整理しよう。今の今まで間違いなく私は冷静じゃなかった。いや、冷静だ? うん? ああ、まともじゃない。思考がぐちゃぐちゃだ、言葉がまとまらなくて、繋がらなくて、それで。
どうする。
どうする。
どうする。
殺そう。殺すか。勇者だ。神の駒だ。居て良い理由がない。
「ノア!!」
「魔王様!!」
突然、水を浴びせられたように、思考がクリアになる。二人の声が鮮明に響いた。
ヴェルフェールが、その爪で魔力の籠った男の一撃を弾き返している。
「すまん、取り乱した」
嗚呼、くそ。ここまで動揺を晒して、恥ずかしいことこの上ない。
だが、大丈夫。今度こそ落ち着いた。
剣を弾かれた男は、それでもめげずに走り込んでくる。その速度は、先ほどよりも早い。
「俺が助けてやるからなぁっ!」
勇ましく声を上げ、ヴェルフェールに突っ込んでいく姿は、こちらからすると一人芝居にしか見えない。
冷静になって考えても、ちょっとよく分からん。酷く滑稽だ。
もしかして、私たちがヴェルフェールに襲われていると思っている……?
いや、それは、流石に――――。
「うおおおおおお!!」
…………あながち間違いとも言えないかもしれん。
だが、そんなことは、どうでもいい。
今重要なのは、本当にこいつが勇者なのか、という事だ。
嫌な匂いも、異質な雰囲気も、以前戦った勇者にそっくりだ。ここまで力を放っていると嫌でもわかる。神の関係者という事だ。
だが私は非常に寛容で情け深いのだ。それだけの理由で殺したりはしない。
そう、殺したりは。
「死ぬなよ」
私は、勢いよく近付いてくる男へ突っ込み、その顔へと力一杯拳を叩きつけた。
助けようとしていた相手からの、突然の攻撃。男は為す術無く吹き飛ばされていき、壁へと打ち付けられた。
『------我が身を持って、桎梏を成せ』
「【魔封呪縛】」
魔法陣と詠唱、加えて髪を一本引き抜き、魔術を行使。
男は壁に打ち付けられた状態で、手足と魔力の行使を封じられたのだった。
勇者と名乗った、その男が。
「――――勇者……?」
酷く頭が痛い。この感情はなんだ。
あいつは、勇者? 過去に神の手足となって私を殺しに来た、傀儡共の仲間?
騒音が、耳の奥で駆け巡る。嗚呼、五月蠅い。五月蠅い。
「その子たちから離れろおぉぉぉぉぉぉ!」
魔力の高まりを感じる。結構強いな、誰だ?
……冷静になれない。頭が回らない。何が起こってる。勇者、だっけか。嗚呼、どうして。
これは、そう。ショックか。衝撃の大きさに、耐えられなくて、そう。
視界には、ヴェルフェールに飛び掛かる男の姿が映っている。
は? いや、待て、待て。大丈夫だ私はまだ冷静だ。
落ち着いて、状況を整理しよう。今の今まで間違いなく私は冷静じゃなかった。いや、冷静だ? うん? ああ、まともじゃない。思考がぐちゃぐちゃだ、言葉がまとまらなくて、繋がらなくて、それで。
どうする。
どうする。
どうする。
殺そう。殺すか。勇者だ。神の駒だ。居て良い理由がない。
「ノア!!」
「魔王様!!」
突然、水を浴びせられたように、思考がクリアになる。二人の声が鮮明に響いた。
ヴェルフェールが、その爪で魔力の籠った男の一撃を弾き返している。
「すまん、取り乱した」
嗚呼、くそ。ここまで動揺を晒して、恥ずかしいことこの上ない。
だが、大丈夫。今度こそ落ち着いた。
剣を弾かれた男は、それでもめげずに走り込んでくる。その速度は、先ほどよりも早い。
「俺が助けてやるからなぁっ!」
勇ましく声を上げ、ヴェルフェールに突っ込んでいく姿は、こちらからすると一人芝居にしか見えない。
冷静になって考えても、ちょっとよく分からん。酷く滑稽だ。
もしかして、私たちがヴェルフェールに襲われていると思っている……?
いや、それは、流石に――――。
「うおおおおおお!!」
…………あながち間違いとも言えないかもしれん。
だが、そんなことは、どうでもいい。
今重要なのは、本当にこいつが勇者なのか、という事だ。
嫌な匂いも、異質な雰囲気も、以前戦った勇者にそっくりだ。ここまで力を放っていると嫌でもわかる。神の関係者という事だ。
だが私は非常に寛容で情け深いのだ。それだけの理由で殺したりはしない。
そう、殺したりは。
「死ぬなよ」
私は、勢いよく近付いてくる男へ突っ込み、その顔へと力一杯拳を叩きつけた。
助けようとしていた相手からの、突然の攻撃。男は為す術無く吹き飛ばされていき、壁へと打ち付けられた。
『------我が身を持って、桎梏を成せ』
「【魔封呪縛】」
魔法陣と詠唱、加えて髪を一本引き抜き、魔術を行使。
男は壁に打ち付けられた状態で、手足と魔力の行使を封じられたのだった。
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