異世界でダンジョンと過ごすことになりました

床間信生

文字の大きさ
43 / 78

三人の女性

しおりを挟む
ゴブリンとの話し合いが終わった後、先程の部屋に戻ってみると女性三人と目があった。

「貴方がリーダーの方ですね。この度は助けていただいて、ありがとうございます。美味しいマジックアイテムで助かりました」
「いえいえ。大丈夫ですよ」

三人いる女性の内で一番右側にいる金髪ロングヘアーで左手首から上腕半分くらいの位置までタトゥーを入れている女性が、頭を下げて礼をいってきた。
とりあえず今の一言を聞いた限りでは、はっきりした感じの言葉なので、先ずは一安心という感じかなと思う。

「あのー…それで、助けていただいていきなりこんなことを聞くのは失礼かもしれませんが…どちらのクランの方でしょうか…」
「えっ…クラン?何ですかそれ…?」

俺の答えが予想外だったのか、金髪ロングヘアーの女性が、その隣の茶色いセミロングの髪の女の子と顔を見合わせた。

クランって何だ?
状況が掴めない俺はコロンとリンの方に視線をやったが、彼女たちも分からないという感じに首を傾ける。

「それと事情お話ししたいんですけど…すいません。ここって安全ですか?」
「ん?あー、ゴブリンたちの驚異はもうないですから安心していいですよ」
「あのホブゴブリンもですか?」
「ホブ…?あー、確かベンケーとかいう通り名があったヤツですよね。アイツは退治したので安心してください」

俺の言葉に心底安心したのか、彼女は一息ついた後涙をこぼした。

「クランというのは、簡単に言うと仕事を行いやすくするためのチームのようなものです」

涙を流す女の子に代わる形で、となりの茶色いセミロングの女の子が口を開く。

あー…そう言えばゲームとかで集団イベントとかやるとき、前もって仲の良い人間とかで集まったりしたことってあったな。
多分、そういうのを常習化させている組織ってことか。
何となくイメージ的には派遣会社という感じがする…

「いえ、私はクランというのは所属していません」
「だべ?うちの旦那様はそだらわけわがんねぇことしてねぇって言ったべ」

恐らく俺がここに来る前に、コロンと何やら話していたのだろう。
生憎そういったことには興味がないというか…
この世界に来たばかりなので知識がないんだ。

「ほんとだったんだ…あっ…いえ…まさか今の時代に人でクランに入っていない方がいるとは思わなくて…って、もしかしたらこれからクランを立ち上げ…あっ…すいません。遅くなりました私、大地の剣というクランに所属しているフローラと申します」

クランというのに所属しているのが、この世界では常識ということなのか…?
心が落ち着いたのかな?
金髪ロングヘアーで、タトゥーが入った貴方はフローラですね。
了解!

「私、ミンネ!」

俺がフローラに挨拶を返すよりも早く、今まで黙っていた金髪ショートの女の子が突然元気よく名前を名乗った。
年は分からないけど、俺の好み的には後5年…
いや後7~8年という感じがする。
ちょっとビックリしたが、なんとか心を落ち着けて声には出さないように我慢した。

「どうも、私、ルカです。助けていただきありがとうございます。クランは所属してません。こんな感じなので…」

最後に茶色いセミロングの女の子が自分の首輪を触りながら、自己紹介をしてくれた。
どうやら彼女もクランに所属していないようだ。
首輪を触りながら「こんな感じ」というのがちょっとよく分からないが、とりあえずクランとやらに所属していない人がいることで、何となく安心した。

「どうも、俺はタカヒロ・イダと言います。そしてこっちからコロンとリンです」
「よろすく」
「…」

コロンも続いて挨拶をするが、リンの方は無反応。
と言うかコイツ、最近やっとカロリーに反応を見せるようになったくらいで、基本的には俺以外には無反応のことが多い。
まー、それも仕方がないのかもしれないが、正直言うともう少しと思わなくもない。

「タカヒロ・イダ様ですね。えーっと、それでお名前が姓持ちの方ということは、騎士爵の方ですね」

おっと…フローラの口からまたしても俺の知らないことが…
名字も一緒に名乗るのは失敗だったか…

「騎士爵はもってないです。後、俺この辺の生まれではなくて、ちょっとそういったこと分からないんです。俺の住んでいた地域では身分と関係なくみんな姓を名乗る決まりになっていたので…できればその…故郷のこととかはあまり話したくないというか…そのお願いで…後、呼び名は姓が騎士爵とかのきまりあるなら、名の方だけで…」
「なるほど。この辺では聞いたことがない風習ですね。恐らく地名を聞いたりしても分からないと思いますし、何より助けていただいた方のお願いということであれば、こちらとしても全く構いません。呼び名の方はタカヒロ様で宜しいでしょうか?」
「あっ…はい。じゃー、それで」

ニッコリと笑うフローラさんの笑顔が眩しい。

「後…と言うか場所が場所なので、このままここで積もるお話を…というわけにもいかないと思いますので、もしそれなりに移動が可能ということであれば、ここを出ませんか?」
「そう…ですね…その方が良いですね」
「うん!」
「はい…」

俺の提案にフローラ、ミンネ、ルカの三人が首を振ってくれた。
別に今さらこのダンジョンに差し迫った危険などがあるとは思えない。
だけど話をしていく上で、先程から少しずつ自分の知らないことを聞かれている。
このまま話を続けているとボロが出てしまいそうと感じた俺は、とりあえず流れや雰囲気を変えるために、このダンジョンから出ることを提案した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

0才児平民からの成り上がり 貴族になりました

にゃんすき
ファンタジー
0才児 平民からの成り上がりの2部です。 貴族になった後の事のお話しです。

処理中です...