異世界でダンジョンと過ごすことになりました

床間信生

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聖者の行進

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「先ず儂達に対するメリットは、あの娘が儂らのことを喋れなくなるということじゃ。これは奴隷のように例えば秘密を喋ろうとしたり、危害を加えようとすると苦しむとかそういうことではない。なんと言えば良いのか…お主に分かる言い方だと、あの娘を儂の番犬にするというのが一番しっくりくるかのぅ」
「えっ…番犬って…修道士シスターって言ってませんでしたか?」

俺が露骨に嫌な顔をしたのを全く気にしないといわんばかりに、ガイアス様がニコリと笑いながら言う。
一瞬、目の前の人物が神様だというのを忘れそうになった。

聖者の行進ヴァルハラゲートという名の儀式でな、見も心も神の従者として生きてもらうということじゃ。それに番犬とはいっても0から100まで、頭の中を全て洗脳ということとは違うぞ。普段の生活においては全て娘自身の判断で行うことが出来る。儂が望まないこと以外は、基本的に何をするにおいても自由じゃ」
「ガイアス様の望まないこと以外は…パッと聞くと何だか超便利そうな能力だと思いますけど…それで5年たったらどうするんですか?」

多分、ガイアス様がダンジョンに対して喋るなというのであれば、秘密は簡単に守られると思う。
だがそれはあくまでも儀式が続いている間にすぎない。
問題なのは、彼女が自由になってからだと思う。

「その辺は大丈夫じゃ。というか聖者の行進ヴァルハラゲートには、そもそも期限という概念が無い。あえて言うのであれば、一生ということになろぅ」
「えっ…一生??」
「そおじゃ。一生じゃ」

ニコニコした顔で俺の目の前の自称神様はとんでもない事実をぶっちゃけてきた。

「でも、それだと…」
「でも他に手がないじゃろぅ?」

ガイアス様が俺の言葉に被せてくる。
確かに俺の目標は元の世界に戻ることであるので、これを優先したい俺としては、彼女の主人になるという選択肢はあまりとりたくない。
そうなると他の人ということになるのだが、第三者にバトンタッチとなった場合、彼女は恐らく破滅ルートしか残っていないだろう。

「お主も気づいておるとは思うが、このまま行くとあの娘には破滅という道しか残っておらん。目の前に大きな剣山があり、これを登りきったらお主は自由だと言われても、裸でどうやって登りきれば良い?それなら少し離れた土地に家でも建てて住まわせた方が、お主も笑える時間が増えるのではないかと思うのだがどうじゃ。とは言っても、決めるのはあの娘でしかない。儂の方は別に無理強いさせるつもりもない」
「ん…まー、それなら…」

言いくるめるような例えを持ってくるガイアス様。
正直なところ知識の無い俺に、そんな言い方をしてくるのはズルいと思う。

だが俺の方にも自分の都合もある。
なので、全てを彼女の為に見も心も寄り添い考えるというわけにはいかない。

恐らく俺たちの方で考えるデメリットというのは良心ということなんだろう…

俺の方は苦笑いで精一杯だ。

「よし。それなら、善は急げというじゃろぅ?早速、二人で小屋の方へ戻って話しようかのぅ」
「えっ…ヴァルハラゲートそれって善いことなんですか?」
「まー、まー、難いことはいわんでもええじゃろぅ」

話をそらした。
神様というのは人のためになる行動をとってくれると思っていたのだが、どうやらそうでもない神様もいるらしい。

★☆★☆

小屋に戻る道中、話し合いにそこそこの時間がかかっただけに、ルカが先に寝ているのではと思ったのだが、そんな心配は杞憂にすぎなかった。

「あれ?なんか凄い盛り上がってるみたいですね」
「そうじゃのぅ。何か食べておるのか?」

小屋の窓からリン、カロリー、コロンの三人と一緒に鍋パーティーで盛り上がっているのが確認できる。

最初は邪魔するのも悪いかなと思ったのだが、ただそうなると今度は俺がどこにいけば良い?という話しになってしまう。
とりあえず今の段階で、俺が戻るのは小屋になるし、ルカにも話をしなければいけない内容だけに、ガイアス様と二人で小屋へ戻ることにした。

「おかえりなさいませ。ガイアス様もご一緒ですね。どうぞおはいりくださいませ」

小屋の扉を開けようとノックした瞬間、カロリーが扉を開けて出迎えてくれる。

窓から確認できたときは扉とは反対側にいたはず。
それが抜群のタイミングで出迎えてくれることに、若干驚いてしまった。

「おかえりなさい」
「ただいま」
「おがえりなさい、旦那様。そんで話さ終わっただか?」

リンが一瞬顔を向けた後、ルカが出迎えてくれ、返事を返すと最後にコロンが様子を伺うように聞いてきた。

「あー、うん。とりあえず俺の方の話しは一段落といった感じかな。続きは、ねぇ…」

と言いながら俺は視線をルカの方へ流す。

「わたしですか?」
「そうじゃよ。お主、ちと一部屋…と思ったが、これはこっちが小屋を出た方が良さそうかのぅ…」

話し合い用に一部屋と思ったのだろうが、ただ今いる山小屋の様子からすると、正直なところ二人だけで内緒話というのはしにくい。

「すいません。もしあれなら俺たちの方で全然、小屋から出ますよ」
「いやいや。それならそれで、今度は終わった後に呼びに行くのが面倒じゃ。ということで、ほれ娘、ちと二人で話しをするので表に出るぞ」
「あっ…はい」

ガイアス様の呼び掛けに、ルカは素直に応じ一緒に出ていく。
それを見届けて、夜も遅いので先に寝ようかとも思ったのだが、結果が気になる所でもあるので、待っているついでに、こっちはこっちで別な話し合いをすることにした。
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