異世界でダンジョンと過ごすことになりました

床間信生

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土は絶対あり得ないだろう!

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「旦那様、よがっだらどうだ。1杯」

そう言いながら、コロンが鍋の中身を茶碗によそい差し出す。

「おう、ありがとね。どれどれ…」

俺がいない間、鍋パーティーで盛り上がっていたのは先ほど窓から確認できた。
なのでどんな鍋で盛り上がっていたのかは興味ある。

さぞ美味しい鍋だったのだろうなと思いながら、茶碗の中を確認してみると、茶色いスープのみで具が入っていない。

多分、中身はもう食べ尽くしてしまったのだろうな。
まー、だからと言って、あまり深くいうのも嫌味ったらしいと思ったので、とりあえずスープだけ一口。

「ん?ずいぶん薄い味付けだね?これ、何の鍋?」

表面が茶色い色のスープだけに、てっきり俺はその表面というのは味噌を溶いた物だと思ったのだが…
色に比べて味が薄いように感じる。

普通の鍋料理なら最後の方になると出汁などが出ていて味が濃いと思うのだが…

「土粥だぁ!」
「はぁ?つちがゆ?」
「んだ!」

自信満々にコロンが胸を張り答えた。
と同時に俺は言葉を失う…。

土か?
土は食えないだろ…
土は絶対あり得ないだろう!

だがそんな俺の様子は関係ないとばかりに彼女、土粥の魅力というのを語りだす。

なんでも一族由来の伝統料理らしいとか
材料となる土は三日かけて選んだものだとか
土に含まれる天然成分により骨や血もじょうぶになるとか色々と凄いことを話してくる。

土に含まれる天然成分って…
ミネラルとかの話しか…
確かに土にはミネラルとか含まれているだろうけど、だからと言ってそれを直接口に入れるのは人の価値観ではないだろう。

そんな考えをしながら俺は周囲を見る。
周囲にいるのはリン・コロン・カロリーの三人。
あっ…みんな人間じゃないや…

表情も別に平然としていて、リンに至っては「それ麦茶か?」と突っ込みたくなるような感じで飲んでいる。
いや…カレーか?
そう言えば昔、どこかで「カレーは飲み物」なんていう名言を聞いたような…

ここに先ほどまで唯一人間であるルカがいたわけだ。
もしかすると彼女にとっては色々な意味で地獄絵図のようなものだったのではないだろうか、なんてことも思ってしまった。

「そっ…そうか…まっ…、まー。ありがとう、コロン。それはそれとして、今日はこのまま話し合いたいことがあるんだけどいいかな?」
「それは、先ほどまでここにいた彼女のことでございますか?」

さっきまでこの場にいて、相手をしていただけにカロリーの方でも何かを感じたのかもしれない。

「うん。一つはね。まだ本決まりではないけど、もしかすると今後、彼女が仲間に加わる可能性というのがあるんだけど、みんなどうかな?」
「……」

三人が一瞬にして黙った。
リンが口を開かないのは、いつものこととして、カロリーとコロンの両方も無言のままだ。

このまま空気が重くなるのか?
と思い三人を見たが、別に表情からはそんな感じがしない。

「あれっ…?みんな何もないの?コロンは…?」
「ワーさ、今日加わったばかりだで、特になんもねぇだ」

あっ…そっか…
コロンって今日仲間になったんだよね。
方言って、結構親しみ感じるから錯覚しちゃったみたい。
これからも宜しくね。

「そっか、ありがとね。カロリーは?」
「秘密とかの対策はされるのでしょうか?」
「ガイアス様がやるっていってたよ」
「それであればわたくしからは反対意見などございません」

確かにダンジョン関連の話しは気にするところだと思う。
俺も正直、その辺は不安だったので、ガイアス様には何度も確認した。

「リンは…なさそうだね…って…あれ?何してんの?」

サムズアップをしながら視線は全く別な方、様子からしてどうやらメニューを見ているっぽい。
ちょっと気になる…

★☆★☆

近寄ってみると確かにリンはメニューを起動させていた。
そしてそこから今が夜中の3時過ぎというのを知り、疲れが一気に押し寄せてくる。
だが、まだやることがあるので寝るわけにはいかない。

「んー…?あー、返事が来たのね」

彼女が見ていたメニューというのはお知らせである。
ベンケーを二人で倒したとき、その出来事がダンジョンの条件になるだかで、階層を貰えるという話しになっていた。

そこで彼女がママと呼ばれている偉い神様に、希望を送ったようなのだが、どうやらそれの返事が来たらしい。

「へー…。なるほどね。じゃー、とりあえずそれは後で…って…おい!リン!」

ダンジョンの内容は気になる。
気になるのだが、とりあえず俺の方でも話したいことがあるので、先ずはそちらを話してからダンジョンの方を話そうと思ったのだが、どうやら彼女にとってはダンジョンの方が大切らしい。

俺の言葉を背に奥の部屋に隠れてしまった。

★☆★☆

「んー…、全く出てこないな」

リンが奥の部屋に隠れてから10分ほど経過。
その間、呼んではいるのだが全く反応がない。

「仕方がないから、先に三人で話そうか。リンには後まわしになっちゃうけど仕方がないよね」
「はい。かしこまりました」
「んだば、話し合うことっちゅーのはなんだら?」

カロリーとコロンの同意も得られたので、とりあえず話しを前に進めようと思う。

「うん。じゃー、本題なんだけど話し合いたいというのは、今日探索した時に見つけたゴブリンたちのことね」
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