クーリングオフ不可の強制契約48歳バツイチサラリーマン武器は科学と現場力予算ゼロで丸投げ現場を生き抜け!おじさんとAIがゆく異星サバイバル

もともときん

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第六話 初出勤の確認は念入りに

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第六話 初出勤の確認は念入りに

 直径5mの鈍色の円盤が水面で静かに揺れていた。
 
  

 「…………しようか」


 「…………するのが最適かと」
 

 どうやらベニーと航が今後について話し合っている
 様子だ。
 
 
 ポッドの中心部で箱を開いた航が、モニターを
 覗き込みながら話をしている。


「3か月か、それはまた随分と長く寝ていたものだね」
 
 
 「エネルギーコストを最大限抑える為ですので」
 

 
 淡々とした声色で言われると
 人間を送り込む為に手間をかけていると
 言われているような気がしてくる。
 

「星間航行船であれば、数日もあれば可能でしたが
 ステーションからのカーゴでの射出輸送でしたので」


 ベニーがたたみかけてくる


 到着してから知った衝撃の事実だった


 荷物輸送か、コストは最小限が
 ビジネスの鉄則ではあるが。


 確かに、どうやって移動するのか
 詳しく表示はされていなかったし
 小さなポッドだけで行ける距離なのだから
 近い場所なのだろうと考えていた。
 

 冷静に対処できていたつもりだったが、
 抜け、漏れのレベルがかなり致命的だった。
 

 寝起きのせいなのか、3カ月の期間のせいなのか
 だるい感覚を無理やり抑え込んで話を進める。


「……唾液での湿潤維持を、『推奨される代替案』として提示します」

 
 急がば回れだ。
 

「現在利用可能なデータは、惑星の素性データ
 航行のログデータ、そして航の身体観測ログデータです」


「現在位置の数値提示は可能ですが、意味をなさないと判断
 削除しています」
 

「ステーションへのアクセスも試みましたが、
 現在応答がありません。アクセス先が消失または不明と
 なったと判断するのが最適かと思考します。
 新たな自動送信プログラムの起動を確認しているので
 私達は現在スタンドアロン状態であると判断します」


「それは……」


 ステーションでのやり取りを思い出しながら、
 言葉と映像でのやり取りと現場の空気の違い
 を肌で感じている。
 
 
 心のどこかで現実感が無かった、オーバーテクノロジー
 がどうにかしてくれると頭の隅では考えていた。


「詰み……」の言葉が頭をよぎる


「詰んでいる状態が、生命活動の限界を指し示すものであれば
 地球時間換算でおよそ1カ月維持できるだけの非常食が
 搭載されているので、1か月後が正確な活動限界(詰み)となります」
 

 文脈どころか、漏れ出した言葉の一つでの正確な分析
 発したつもりのない言葉。


 無意識に出ていた独白という恥ずかしさを耐えて
 思考を切り替える。
 

 すー、はー、と数度深呼吸を繰り返す
 最適に整えられている船内の環境
 浄化された酸素を存分に取り入れる。


 ステーションでの会話に嘘はなかった
 渡されたデータも整合性がある。


 差異があったのは自身の思い込みと現実
 の不一致。

 
 子供の頃母にもよく言われていた言葉


 忘れ物ない?ちゃんと確認した?お母さんもう見ないからね。
 

 自分でやりなさい、確認をきちんとしなさい。


 それは、過去同僚や部下にも口を酸っぱくして
 伝えてきた事。


 これは、土産話にはしないでおこうかな
 とこの失敗は自分の糧として
 ここから始めようともう一度誓いなおす。


 現状整理
 1.地球に似た環境の星である
 2.着陸ポッドは水上着陸している様子
 3.食料は何もしなくても1か月生きていける分がある
 4.ステーションへの定時連絡は自動
 5.ポッドの中を拠点に出来る
 6. サポートAIは優秀である
 

 頭の中で順次思い描いていたら
 声が掛かった
 

「随分と考え込んでいるようですが、このまま
 スリープでよろしいですか?
 外気温から判断すると今は昼まであると予測。
 行動するなら、早急にしないのであれば
 このまま休息がロスを最小にできます」
 

 地球に似た環境である以上、太陽はあるか、
 となれば、夜に動くのは愚策だ


 だが、外の状況が分からない事も事実


 見えない状況で全てを想像だけでカバーするのは
 天才にしか出来ない。


 凡人は凡人らしく


「まずは、周囲の安全確認、それが出来たら
 一旦外の様子を窺って、状況を
 一つ一つ確認していこう」


「航の意向を承認します」


 やっと動きますか、とでも言うような
 機械的な音声でベニーが答えた。


 人が動き出すには合理性とは別の『納得』が必要なんだよ


 よっこいしょ、と立ち上がろうとしてふらつく
 腰を庇いながら踏ん張り、痛みが出てこない事に安堵する


「ずいぶんと体が重く感じる……」


「データの整合とエネルギーコスト削減の為
 現在重力制御はダウン中です」
 

 重力制御とはたいそうな文言が出てきたものだ


「もしかしてだが、重力が強いという事かな?」


「強度レベルの想定範囲が判断できませんが
 活動可能レベルであると判断します」


 正確な数値を聞いても、実感できなければ
 意味は無いか。
 

 もう一度、よいしょっと体を起こし立ち上がる
 相変わらず屋根が近い。
 

「周りの状況はベニーのセンサーで確認出来ないかな?」


「船体の外周に沿った領域で良ければ可能です
 それ以上を望むのであれば、船内の素体を
 利用してドローンの作成を推奨します」


「ですが、素体を使用すれば内部機能が低下します
 少量であれば活動限界への影響は大きくありません
 が、使用するほど機能低下による内部環境悪化は
 二乗関数的に上昇すると理解してください」
 

 要するにだ、サバイバルする為に便利な道具を
 安易に作るには、生命維持層であるポッド
 そのものを材料にしなければならないという事か。


「コスパ重視のビジネス判断だと受け入れてください」
 

 コスパか、低予算で最大限の結果を出す事は確かに
 重要だと思うが、銀河規模のものとしてはずいぶんと
 世知辛い仕様だと、流石の航も唸ってしまう。
 

 とにもかくにも、だ。


「ドローンを作って外に飛ばせばいいんだな?」


「飛ばす前に周囲の安全確認が優先です
 まず内部から外へドローンの各種センサーを
 用いて、地形と外敵要因の有無を確認します」


「その後、上部ハッチを開けて外に出る
 事が最適であると判断します」


「ドローンの大きさってどうなるかな?」


「安全確認であれば、手の平程度の大きさで
 範囲内スキャン可能。機能低下も
 誤差の範囲に留まります」
 

「数値であげると、約8cmソフトボールサイズ
 をイメージしてください」
 

 優しい説明に感謝します。


「では、まずはドローンを作るとしようか
 どうすれば作れるのかな?」


 我ながらおんぶに抱っこのこの状況
 思考停止に陥りそうで少し怖くなる


「船内操作は私がサポートします
 壁に触れてください」


 少しふわふわとした足元に注意しながら
 壁へ触れる。


 壁からソフトボール大の丸い球がせり出してくる


 ずっ、とペットボトル一本分くらいの重みが腕にかかり
 完成の合図を告げる


 見た目よりは重いが思っていたほどでもないか。


「次は……」と言いかけて、手から重さが消えたのを感じる。


 目の前には淡く光を帯びた球が浮かんでいる。
 

 システムは分からないが、浮かんだ球はそのまま
 内壁に沿いながらグルグルと回っていく。


 どれくらい経ったろうか。


「少し小腹が空いたな……」


「それでは、床に手を向けてください
 触れなくていいので、向けるだけです」


 丁寧なのだが、念押しが少し引っ掛かる
 のだが、実際触れようとしていたので
 何も言い返せない。



 床に手を向けると、小さな台のような物が
 盛り上がり、その上にスポンジのような
 正方形の小さなブロックが出てきた。
 

「それが、非常食カロリーブロックです」


「ナノマシン維持に使用される素材と人体形成
 の為の素材、今回は小腹という事で数時間分
 のエネルギー活動の為のカロリーを含んでいます」
 

「確かに非常食だな……」


 もそもそとした触感を噛みしめながら、無味無臭の
 栄養食を摂り込んでいった。


 そして、手元にはマグカップ、中には富士山の天然水と
 同じものに調整された冷たい水が入っている。


「ふぅ、生き返る」


 冷たくて美味い。


 マグカップは箱に入っていたもので、
 地球などの文明レベルの星で活動
 する調査員が使用していた簡易浄水器
 だそうだ。


 おやつを食べている間に計測が
 終わったのかセンサーがベニーの元へ
 戻っていった。


 ゆっくりと映像が出来上がっている
 状況を想像すると少し嬉しいような
 これからの事を考えると少し悲しいような
 複雑な感情がわいてくる。
 

「データ照合完了しました。安全を確認、
 外へ出ても問題はありません」
 

「どのような状況か……」


「問題はありません」


 食い気味に返答が返ってくる。


「問題なし、了解した。作業を進めようか」


「では、上部ハッチへの梯子を起動します
 中央から下がってください。
 私の本体もお忘れなく」


 慌てて箱を抱きかかえて壁際へ移動する。


 中央部分では下から伸びていく棒状の物体、
 上からも同時に垂れ下がってくる棒状の物体。


 左程の時を掛ける事もなく、梯子が掛かり
 上を見れば、今まで無かったハッチが
 顔を覗かせ、手動で回すのであろう棒状の
 閉鎖手輪操作レバーが見える。


 箱を足元に置き、ソフトボールをもって
 梯子に足を掛ける。


 だが、力が掛かりにくく、回せない。


 一旦降りて再度下から気合を入れる。


 ギギ、ギギギ、と最初は固い音が聞こえたが
 直ぐにゆっくりと回り始める。


 固定されるまで回し切り、今度こそ
 と梯子を上り、押し上げる。

 ふんっ、持ち上がりそうな気配はあるが
 思った以上に重い。


 もう一段梯子を上る、体を縮めてハッチへ体重を
 載せる。


 ふんっ


 下半身にありったけの力をこめてハッチを
 押し上げた。


 隙間から光が差し込み、涼しい風が頬を撫でた。


 入り口のふちに腕をかけ一気に持ち上げる。


 ハッチはゆっくりとしかしはっきりとした
 動きでせり上がる。


 静かにハッチが静止すると世界は一変した。


「眩しい……」


 瞳孔が小さくなる。手で光を遮る。


 心地よい風が吹く


 航は入り口に腰掛け大きく息を吸った


 その刹那、耳元で大きな警告音のような音がした。な
 アラームがけたたましく鳴り響く。



 「警告。急激な体内酸素濃度の急上昇を検知。
 活性酸素による細胞損傷(酸化)を抑制するため、
 ナノマシンによる緊急抗酸化措置を開始します……」
 
 
 広橋航48歳、初出勤は前途多難の様相をしているのだった。
  

 
 

 後書き

 
 最後までお読みいただきありがとうございます。
 
 
 やっと外へ出られましたが、前途多難
 
 
 作者としては出来るだけ頑張ってほしいので
 問題を色々と入れていく所存です。

 
 お気に入り登録、いいねをいただけると励みになります。
 
 
 それでは、次回いよいよ外界の業務開始です。 

 

 
 
 

 



 
 
 
 

 

 
 
 
 

 



 

 
 
 


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