ephemeral house -エフェメラルハウス-

れあちあ

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結衣の1年間

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いつものようにバイトに向かう途中、普段何気なく見ている電車の窓から見える外の景色は、いつもとは確実に違うってことに気づかない人はいないはずだ。

目に入るピンク色は、新しい季節が来たんだって私たちに伝えてくれていた。

早いなぁ、ホントに。

きっとみんなは、新しいクラスメイト達と一喜一憂してる頃だろう。

まさか、まさか自分がこんな人生を歩むとは思っていなかった。

「まさかお前がこうなるとは思わなかったわ。」

担任に言われた一言、自分でもこうなるとは思いませんでした。

……てか、電車に乗ってるとホントに考えなくていい事ばっか考えちゃうよなぁ。

切り替えなきゃだなって自分に言い聞かせて、スマホを見ると1件のメッセージが入っていた。

私は、"それ"のせいでもっと憂鬱になる。

画面に移る、その差出人は「ママ」と書かれていた。

付き合いたての頃、優にもよく聞かれたっけな。
「ゆいってなんで一人暮らしなの?」って。

そのメッセージに書いてあることなんて、読まなくても大体わかる。一応目を通すけど、やっぱり予想通り。

『ゆいを怒ることも無いし、なんでこうなったかも言いづらいなら聞かないけど、ママから言えるのはこれだけだよ。もう戻っておいで。翔太もママも待ってるよ。』

家族が嫌いなわけじゃない。いや、むしろ大好き。

でも、私は戻りたくない。2人が待ってくれてるのは嬉しい、でも足りない。一人足りないじゃない。

それに、あの町に居座るのは嫌だ。

『去年中々顔出せなかったけど、学校辞めたし時間ある時たまに帰るよ~。でも、一人暮らしは慣れたしバイト中心になるから、今度から自分で家賃とかも賄えるからまだ戻る気は無いかな。帰る時お土産買ってくわ~。』



こっちまでママに来てもらって、退学届けを書いたのも、もう半年も前の話。確かあの時だけは、優に家空けて貰ったんだよね、まぁ、そのせいでかなり怒ってたけど。

……今の自分見てると、まだ高校生の女が1人で生活するって絶対させない方がいいよなって思う。いやほんとに。

またメッセージが入り、目をやると来たのはママからでは無く優からだった。

『なんで居ないの』

なんでって、バイトだからですけど!?

『バイトだよ~』

『戻ってきて』
続けて熊が寂しいって言ってるスタンプを送ってくる。

きっと今起きたんだろうなぁ、もう昼だけど。

今でこそやっと彼の怒りのスイッチが分かるようになってきたけど、付き合いたての時は本当に分からなくて、よく怖い目にあっていた。

それこそ、今のやり取りもそうだ。

最初、冗談?っていうかなんていうか、かまちょして来てるだけだと思って『すぐ戻るからね~』ってテキトーに返して働いていたら……。

上がる頃にスマホに目をやると、見たことないような着信の数。家に着くと死にそうな顔をした優が、顔中涙でぐしゃぐしゃにしながら殴る蹴るの大暴力。あれはホントにビビった。

『稼がないと優も困るんだよ~、良い子で待っててね。』

送信して、少し返信を待ってからスマホをポケットに閉まった。

これまで散々傷つけて来た、ちょっと人より傷つきやすい
優の事をやっと理解してあげれるようになってきた。

「よし、頑張ろ。」

春を迎えて、みんなとは違う、新しい人生がスタートした。
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