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閑話14 興味溢れる対象(side:コーラル)
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「旦那様、シア様よりお手紙が届いております」
そう言って執事が封を切った手紙を乗せたトレイをこっちに差し出してきた
手紙をもらう心当たりはある
先日シアがレティシアナにプロポーズしたと報告をしに来た時に、祝いの希望があれば知らせる様に言っていたからだ
「さて、シアは何を希望しているのか…」
いい年をしてとは思うがどこかワクワクしてる自分がいる
『弾丸』やサラサに負けず劣らず規格外の事を次々と巻き起こすシアは、足の引っ張り合いが常である貴族の生活にうんざりしている私のこれまでの世界をひっくり返してくれた恩人でもある
トラブル体質なのか、いらぬトラブルに巻き込まれるのは何とも言えないが、そのおかげで暗礁に乗り上げていた案件がいくつ片付いただろうか…
更にシア達が入手してきたレア素材、ファシスネーションフラワーは今後の医療の発展にも希望の光を指してくれた
サラサでも大概驚かされたがその上を行くシアに興味を持つなという方が無理である
そんなことを思いながら手紙を開く
“俺が誘拐された時に監禁されていた小屋のあった山を俺が手に入れることは出来る?”
たったそれだけが書かれた手紙
“手に入れてくれ”
ではなくそう尋ねてくることに好感を覚える
それにしても自分が監禁されていた場所といういわくつきの場所を欲しがる時点で普通ではないな
大抵の場合、そういう場所には近づきたくないと思うが…
「この町の側にある王家所有の山はどうなっている?」
「山頂付近を中心に高ランクの魔物が住み着いている為、結界の魔道具を設置したのち今も手付かずのまま放置されているかと」
執事からの即答に、ならば問題はないだろうと陛下に通信を送る
あの山は元々この町の前の領主が持っていたものだ
スタンピードの際に真っ先に逃げ出したとして爵位は勿論、領地ごと一旦王家預かりになった
私がこの町の領主を兼任するようになったのは『弾丸』の後ろ盾になったからに他ならない
陛下の計らいで『弾丸』の要望にいち早くこたえられるようにとこちらに常駐する許可ももぎ取っている
カルムの父親からの紹介でカルムと引き合わされたのは本当に幸運だったと今でも思う
陛下の返信はすぐに届いた
“山頂に住み着いているAランクの魔物10体分の素材と引き換えに譲ろう”
「クッ…」
思わず噴き出した
「どうされたんです?父上」
丁度執務室に来ていた息子に尋ねられ経緯を話すと息子も笑い出した
「やはりシアは興味深いですね。この分じゃ陛下も本当は条件など無く譲りたいのでしょう?」
「だろうな。だが、他の貴族の手前そういうわけにもいかんからな。討伐証明として素材を回収することで、管理できることの証明にするんだろう」
「文句を言う貴族がいれば、この素材を持つ魔物を自ら討伐できるなら代わりに譲ってもいいぞということですか…それが出来る貴族はまずいないでしょうね」
「しかものどから手が欲しいだろうこの町はついて来ないからな。山の為だけに高ランクのパーティーをこの町にとどめておくことも難しい」
「でしょうね。この町の周りには高ランクの好むような場所は有りませんから」
それが分かっているからこれまで放置されてきたのだ
それでも自分達からの接触を禁止された『弾丸』と『無限』のいる町の近くにあるあの山は、貴族たちにある種の希望を抱かせるらしい
早速シアにその条件を伝えると翌日には10体丸ごと持って屋敷に来るのだから流石である
「まさか翌日に完了させるとはな…」
「完了したのは昨日だけどな」
その言葉に息子と顔を見合わせて固まってしまった
「それにしても何でまたそんないわくつきの場所を?」
「あの山からの景色が綺麗だったんだ。だから、どうせなら嫌な記憶をこれからの幸せな思い出で塗り替えてやろうと思って」
そう言い切ったシアが過去に捕らわれている感じはない
この発想はやはり興味深い
適切な距離を保ってこれからも見守っていきたいものだ
そう言って執事が封を切った手紙を乗せたトレイをこっちに差し出してきた
手紙をもらう心当たりはある
先日シアがレティシアナにプロポーズしたと報告をしに来た時に、祝いの希望があれば知らせる様に言っていたからだ
「さて、シアは何を希望しているのか…」
いい年をしてとは思うがどこかワクワクしてる自分がいる
『弾丸』やサラサに負けず劣らず規格外の事を次々と巻き起こすシアは、足の引っ張り合いが常である貴族の生活にうんざりしている私のこれまでの世界をひっくり返してくれた恩人でもある
トラブル体質なのか、いらぬトラブルに巻き込まれるのは何とも言えないが、そのおかげで暗礁に乗り上げていた案件がいくつ片付いただろうか…
更にシア達が入手してきたレア素材、ファシスネーションフラワーは今後の医療の発展にも希望の光を指してくれた
サラサでも大概驚かされたがその上を行くシアに興味を持つなという方が無理である
そんなことを思いながら手紙を開く
“俺が誘拐された時に監禁されていた小屋のあった山を俺が手に入れることは出来る?”
たったそれだけが書かれた手紙
“手に入れてくれ”
ではなくそう尋ねてくることに好感を覚える
それにしても自分が監禁されていた場所といういわくつきの場所を欲しがる時点で普通ではないな
大抵の場合、そういう場所には近づきたくないと思うが…
「この町の側にある王家所有の山はどうなっている?」
「山頂付近を中心に高ランクの魔物が住み着いている為、結界の魔道具を設置したのち今も手付かずのまま放置されているかと」
執事からの即答に、ならば問題はないだろうと陛下に通信を送る
あの山は元々この町の前の領主が持っていたものだ
スタンピードの際に真っ先に逃げ出したとして爵位は勿論、領地ごと一旦王家預かりになった
私がこの町の領主を兼任するようになったのは『弾丸』の後ろ盾になったからに他ならない
陛下の計らいで『弾丸』の要望にいち早くこたえられるようにとこちらに常駐する許可ももぎ取っている
カルムの父親からの紹介でカルムと引き合わされたのは本当に幸運だったと今でも思う
陛下の返信はすぐに届いた
“山頂に住み着いているAランクの魔物10体分の素材と引き換えに譲ろう”
「クッ…」
思わず噴き出した
「どうされたんです?父上」
丁度執務室に来ていた息子に尋ねられ経緯を話すと息子も笑い出した
「やはりシアは興味深いですね。この分じゃ陛下も本当は条件など無く譲りたいのでしょう?」
「だろうな。だが、他の貴族の手前そういうわけにもいかんからな。討伐証明として素材を回収することで、管理できることの証明にするんだろう」
「文句を言う貴族がいれば、この素材を持つ魔物を自ら討伐できるなら代わりに譲ってもいいぞということですか…それが出来る貴族はまずいないでしょうね」
「しかものどから手が欲しいだろうこの町はついて来ないからな。山の為だけに高ランクのパーティーをこの町にとどめておくことも難しい」
「でしょうね。この町の周りには高ランクの好むような場所は有りませんから」
それが分かっているからこれまで放置されてきたのだ
それでも自分達からの接触を禁止された『弾丸』と『無限』のいる町の近くにあるあの山は、貴族たちにある種の希望を抱かせるらしい
早速シアにその条件を伝えると翌日には10体丸ごと持って屋敷に来るのだから流石である
「まさか翌日に完了させるとはな…」
「完了したのは昨日だけどな」
その言葉に息子と顔を見合わせて固まってしまった
「それにしても何でまたそんないわくつきの場所を?」
「あの山からの景色が綺麗だったんだ。だから、どうせなら嫌な記憶をこれからの幸せな思い出で塗り替えてやろうと思って」
そう言い切ったシアが過去に捕らわれている感じはない
この発想はやはり興味深い
適切な距離を保ってこれからも見守っていきたいものだ
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