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23.裁判

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裁判は時刻通り始まった
弁護人などという制度はなく部屋の中央に被告の立つ場所が設けられる
それを中心として囲うようにひな壇式の席が設けられている
そして今、ナイジェルの正面には帝王とその側近が座っていた
国務機関長であるバックスと騎士団長、魔術師団長の側近、そしてアリシャナとエイドリアンは帝王の側に固められていた

「アリシャナ…何でお前がそこに…!」
帝王の斜め後ろにアリシャナを見つけナイジェルが愕然とする
「そなたに発言は許していない」

帝王はそう言って亜空間から書類の束を取り出した
「さて、まずは職務放棄の件からだが…ナイジェル、これが何かわかるかな?」
帝王は試すようにナイジェルを見た
「…私にはわかりかねますが…」
「そうか。これはな、1か月程の間に起こったそなたに起因する問題の報告書だ」
「は…?」
ナイジェルは改めてその束を見る
厚みにして30cmほどはある
「まさか…流石にそんな…」
「我もそう思いたいところだがな」
「ひっ…」
突き刺さる様な視線にナイジェルは悲鳴をあげる

「しかもこれで全てではないそうだ。この1週間ほどそなたに確認をしに行く部下が沢山いたはずだな?」
「は、はい…」
「あれもほんの一部だ。アリシャナが辞めた日からそなたの側近であるローカンを代理に立て、魔術師団の者には全ての書類を2部ずつ作成するよう指示を出した」
「2部…なぜそのような…」
「分からんか?」
その問いかけにナイジェルは黙るしかできない

「そなたは花畑の中に住んでいるようだな」
「花畑…でございますか?」
突然この場に似つかわしくない言葉が出てきてナイジェルは首を傾げる
「おめでたい頭をしてるということだ。そなたの理解できる言葉に言いなおせば大バカ者というあたりか?」
帝王のその言葉に室内から失笑が漏れ、ナイジェルは羞恥に顔を真っ赤に染める

「1部はローカンに、もう1部はそなたに提出するよう指示をした。本来であれば重複する書類が随所で見られるはずだったのだがな?」
「!」
そこまで言われれば流石のナイジェルも理解が出来た

「1部は滞りなく処理が進み魔術師団は何の問題もなく動いていた。ああ、今朝確認のあった我の警備の件も、ローカンからのルートで承認は降りている。わざわざ確認に向かわせたのはそなたに気付かせるためだったのだが全て無駄に終わったな」
申し開きなど出来ない状況にナイジェルは全身嫌な汗に包まれていた

「今を持って、ナイジェル・ブラックストーンの魔術師団長の任を解き、ローカン・ホワイティアを新たに魔術師団長として任命する」
帝王の言葉に側近たちから拍手が起こりナイジェルは青ざめる
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