【未完】妖狐さんは働きたくない!〜アヤカシ書店の怠惰な日常〜

愛早さくら

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第1話・みぃちゃん

1-11・猫又

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 玄夜は歩み寄りながらどうしても気になって、動く尻尾の軌跡を追ってしまう。

「猫又、ですか……珍しいですね」

 最近は特に見かけなくなったと口に出すと、ヨウコは小さく首を傾げた。

「そうだね。だんだん減ってきてるよね」

 猫又に限らず、他も。
 時代の波、というものなのだろうか、人ならざる者は、随分と見かけなくなってきてしまった。
 玄夜にはよくわからない。
 だけど、玄夜にはわからないことも、きっとヨウコには見えているのだろう。
 キョロと辺りを見回す。
 そこにあったのはいつも通りの風景。
 勿論、今、目の前にいるヨウコ以外に他の気配なんて何もない。
 それは当然、朝まであった少女の気配も。
 当たり前と言えば当たり前で、だけどやっぱり何処か、寂しく感じてしまう。

「あの子は?」

 いない方がいい。
 いたらきっと良くないだろう。
 わかっていつつの問いかけに、ヨウコは小さく頷いた。

「ああ、あの子ね。帰したよ。いつまでもこんなとこ、いない方がよかったしね」

 何とか間に合った。
 感慨も何もない、いつも通りのヨウコの声音に、玄夜は知らず安堵の息を吐いていた。

「そうですか」

 昨日会ったばかりの少女。
 そう言えば名前さえ知らないままだったあの子が、無事に帰れたのならよかった、そう思う。
 でも、そうなると依頼はどうなったのだろうか。

「それで、みぃちゃん・・・・・は?」

 見つかったのだろうか。
 訊ねながら、こんな風、店の外で立ちっぱなしもな。
 思って、

「入らないんですか?」

 と、中を指し示すと、ヨウコは今気付いたとばかり頷いて、

「ああ、入る入る」

 さっと躊躇いなく踵を返した。
 ヨウコの後に続きながら、なんとなく振り返る。
 いつも通りの街並み。
 時間が時間だからだろう、少し、辺りが赤く染まり始めていた。
 逢魔が時。
 今日もまた、陽が落ちる。
 ちらと見た店先、棚にある雑誌には、今日は何かが挟まっている様子はなかった。
 それがいいのか悪いのかさえよくわからない。
 ただ、とりあえず今、ヨウコにはやることとやらが何もないのだなと思って、そうしたらきっと明日、ヨウコは布団から出て来ないのだろうとも思うと、あまりのいつも通りっぷりに、なんだか力が抜けてくるような気持ちになった。
 店を抜けて住居部へと入る。
 ふと見ると、ヨウコの腕の中には猫、否、猫又が抱えられたまま。
 二本の尻尾がゆらゆらと揺れていた。

「あれ? その猫又、飼うんですか?」

 別に反対だとかそういうわけではないけれど、なんだか意外な気がする。
 否、むしろヨウコらしいというべきなのだろうか。
 よくわからない玄夜に、またしてもヨウコは小さく頷いた。

「ああ、そうだね。どっちでもいいんだけど、居つくならそれはそれで構わないかなって」

 明確に飼おうと思っているわけでもないのだろう。
 その声音は何処かどうでもよさそうで、どこまでもいつも通りのヨウコだと、玄夜はなんとなく安心した。
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