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9・お金の行方
しおりを挟むところで、我が国にはお金がない。
それらは概ね、王妃様が原因だった。
もっとも、そうはいっても別段、王妃様が贅沢をしておられるだとか、高価な物を物凄くたくさん買われておられるだとかそういうわけでは全くないのである。
それどころか、服装は常に、品はよくとも質素で、宝飾品なども過剰なほど付けておられるだとかそう言うことは全くなかった。
あくまでも必要最低限。
もちろん、王妃というお立場に相応しい程度には、いずれも贅を凝らした者にはなっているのだけれど。
華美に装ったり、過剰に散財したりするような方ではないのだ。
はたから見ていると、自分にひどく正直な方ではおられるが、それだけで、好き嫌いが激しく、選り好みもひどい方ではあるけれども、物凄い悪人だとか、悪いことばかり考えておられる方だとかいうわけでもなかった。
ちなみに、優秀ではない、という意味ではご子息とそれほどお変わりとも思えない方ではあった。
では、いったいどこに、国の財政が傾きかねないほどのお金が消えているのか。
おかしな思想に傾倒しているのでも、誰かに貢いでいるのでもなく、では一体何にお金を使っているのか。
当然、慈善事業などでは決してない。
これもまた、王妃様がご自身の感情に非常に正直であるが故に。
王妃様はご自身が不快だと認識したことを、決して許したりなさらなかった。
つまりはそうした、制裁のようなことに使用するお金に、糸目を全くお付けにならなかったのである。
ただしこれらは流石に公にはなっておらず、だけど公然の秘密のようなものだと父は言っていた。
これはあくまでも噂であるのだけれど、まずは陛下が非常にご執心なままでおられる、けれどついに伴侶へと迎えることの敵わなかった、第一王子殿下のお母君とされておられる他国の王族の方へと。王妃様は幾度となく刺客を差し向けているのだととか。
しかしそれらはことごとく成功せず、王妃様は懲りずに何度も、何度も新たにあらゆる手段を用いる者達をお雇いになられていらっしゃるらしい。
そしてお金の一番の使い道は、そう言ったことなのだそうだ。
つまり、暗殺者だとかそういった者を雇わられるのに、一番お金を使っておられるということだ。
そういった方たちに仕事を依頼するのは、どうしても高額となってしまうから。
それこそが王妃様の最大の散財であり、だからこそ父も頭を抱えているようだった。
当然、相手が相手であるだけあり、証拠などそういった者が全く掴めず、とにかくお金がないということであるらしい。
なお、我が家が私への婚約の打診を、上手く断れなかった背景にはそういった部分があった。
とにかく王妃様はご自身の意向に沿わなかった相手を全くお許しにならない方なので、下手に逆らうと、いったい何がどうなるのか予想も出来ないのである。
実際に、不審な死を遂げた者もいれば、脅されでもしたのか、怯えたように王妃様に従順に変わった者もいて、だけど誰も王妃様を咎めたてられたりしないのだった。
それは偏に、陛下がそう言ったことに全く興味をお持ちではなく、かつ、今の王宮そのものが、王妃様と、そのご実家の侯爵家の意向で持って動いているから。
止めたり咎めたりなど出来る者が、存在していない所為だった。
なお、父はそんな中で、減ったお金の補填として、すぐに増税に走ろうとする王妃様やそのご実家を、何とか宥めたりなんだりして止める役目を担っている。
いわば最後の砦のようなもので、それはすでに国民にまで、知れ渡っているような事実でもあった。
「それもきっと、そろそろ限界になるのでしょうけど」
いつまで持つのかはもう、私達にもわからない状況である。
つまり現状の我が国は、時限爆弾の仕掛けられた泥船のようなものなのだ。
きっと王妃様もシュネス殿下も、そのようなことは理解しておられないのだが。
そしてそれは、多くの者が知っている事実なのだった。
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