やがてまた愛と知る

愛早さくら

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第2章

2-14・彼と過ごす、日常⑭(ルーシー視点)

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 ナウラティス帝国というのは、この辺りでは一番大きな国だった。広大な大陸の中でも、五指に入るほどの領土と国力を有している。
 そんな大帝国の前皇帝。今は確か彼自身の曾孫が帝位についていたはずだ。そしてそんな現皇帝の伴侶たる皇后はアーディさんの実弟なのだとか。加えて、この人が曾孫に譲位する前から、皇帝業・・・の傍ら、多くの時間を、アーディさん自身の伴侶にくっついて冒険者として過ごしていたのも有名な話。
 それは、すでに帝位を退いている今ならなおさらのことだっただろう。
 転移魔術が使えるのもあって、必要な時にしか国へは帰らないのだとか。
 諸々を踏まえて、だから彼が冒険者としてここに居ること自体は、何ら不自然なことではないと言えた。
 とは言えそれでも、俺にとっては雲の上の人であることに変わりはないのだけれど。
 なにせ冒険者としてもS級。たかだかしがないC級である俺やティーシャとは、本来関わり合いにならないような人である。
 なのにこの人から誘ってきた。
 俺と。他でもないティーシャを。
 元々以前から、ティーシャとは知り合いであったようなのも気になった。しかもティーシャの話では、今ティーシャが冒険者としてあること自体、アーディさんの助けによるものなのだとか。
 その時は親切な人もいるものだ、ぐらいにしか思っていなかったのだけれども。
 こうして実際にお会いして、アーディさんが誰なのかを知った今となっては、どうもきっとそれだけではないのだろうとしか思えない。
 アーディさんの笑みが深くなる。

「そういう君こそ。どうしてティーシャと共にいるんだい? ねぇ? ニアディスレ王国のルスフォル・ニアディレ第二王子くん」

 そのまま告げられたのは、ティーシャにも明かしていない、俺自身の本名と立場。
 案の定、知られていた。
 否、そもそも知られていないだなんて、全く思ってはいなかったのだけれども。
 俺はきゅっと眉を顰め顔を逸らす。
 言えることなど何もない。ましてや理由を問われても。
 そんなの、ただ、単純な話だ。

「……今は・・、ただのC級冒険者ルーシーです」

 王子なんて言う身分は、国を出る時に捨ててきた。
 ただの優秀な兄のスペア。そんな現状に耐えきれなくなって、城を、国を飛び出した。
 剣術や体術、それに魔法魔術が苦手ではなかったのは幸いだったことだろう。
 あとはティーシャと同じ。冒険者協会に身を寄せた。
 それは俺に剣術を教えてくれた師の一人に、冒険者として活動したことがあるという人物がいたからこそ得られた知識だった。
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