15 / 31
第2章
2-14・彼と過ごす、日常⑭(ルーシー視点)
しおりを挟むナウラティス帝国というのは、この辺りでは一番大きな国だった。広大な大陸の中でも、五指に入るほどの領土と国力を有している。
そんな大帝国の前皇帝。今は確か彼自身の曾孫が帝位についていたはずだ。そしてそんな現皇帝の伴侶たる皇后はアーディさんの実弟なのだとか。加えて、この人が曾孫に譲位する前から、皇帝業の傍ら、多くの時間を、アーディさん自身の伴侶にくっついて冒険者として過ごしていたのも有名な話。
それは、すでに帝位を退いている今ならなおさらのことだっただろう。
転移魔術が使えるのもあって、必要な時にしか国へは帰らないのだとか。
諸々を踏まえて、だから彼が冒険者としてここに居ること自体は、何ら不自然なことではないと言えた。
とは言えそれでも、俺にとっては雲の上の人であることに変わりはないのだけれど。
なにせ冒険者としてもS級。たかだかしがないC級である俺やティーシャとは、本来関わり合いにならないような人である。
なのにこの人から誘ってきた。
俺と。他でもないティーシャを。
元々以前から、ティーシャとは知り合いであったようなのも気になった。しかもティーシャの話では、今ティーシャが冒険者としてあること自体、アーディさんの助けによるものなのだとか。
その時は親切な人もいるものだ、ぐらいにしか思っていなかったのだけれども。
こうして実際にお会いして、アーディさんが誰なのかを知った今となっては、どうもきっとそれだけではないのだろうとしか思えない。
アーディさんの笑みが深くなる。
「そういう君こそ。どうしてティーシャと共にいるんだい? ねぇ? ニアディスレ王国のルスフォル・ニアディレ第二王子くん」
そのまま告げられたのは、ティーシャにも明かしていない、俺自身の本名と立場。
案の定、知られていた。
否、そもそも知られていないだなんて、全く思ってはいなかったのだけれども。
俺はきゅっと眉を顰め顔を逸らす。
言えることなど何もない。ましてや理由を問われても。
そんなの、ただ、単純な話だ。
「……今は、ただのC級冒険者ルーシーです」
王子なんて言う身分は、国を出る時に捨ててきた。
ただの優秀な兄のスペア。そんな現状に耐えきれなくなって、城を、国を飛び出した。
剣術や体術、それに魔法魔術が苦手ではなかったのは幸いだったことだろう。
あとはティーシャと同じ。冒険者協会に身を寄せた。
それは俺に剣術を教えてくれた師の一人に、冒険者として活動したことがあるという人物がいたからこそ得られた知識だった。
5
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる