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第2章
2-18・海へ向かう、旅路②(ルーシー視点)
しおりを挟む実の所、俺にはティーシャほどには、興味を惹かれる物なんて何もなかった。
珍しいものを目に止めても、それだけ。
じっくり見てみようなんて思わない。
ましてや購入しようだなんて。
勿論、ティーシャも購入まですることは珍しい。
今も別に買おうとしているわけではないのだろう。ただ気になって眺めているだけ。
ティーシャの視線の先にあったのは、繊細に糸を編み込んだ腕飾りで。見るとほんのりと魔力を帯びている。
だけどその微かさから見て、おそらくはおまじない程度の物だろう。
おまじない。
嫌な気配も感じず、悪くはない。
「気になるなら一つ買っていく?」
「え?! 別に欲しいわけじゃないよ!」
訊ねるとティーシャは首を横に振る。構わないのに。思った俺は、
「記念に。たまにはいいんじゃない? ……ねぇ、これ、魔力が籠ってるよね? どんな意味が?」
ティーシャの返事を待たず、露店の店主らしき女性に声をかけた。
訊ねられた女性は華やかに微笑んで応えてくれる。
「あら、お客さん購入して下さるの? ちょうどよかったわぁ、今ここにあるのはどれも特別製なの。お客さんのご指摘通り魔力が籠っていて。なんて言ってもおまじない程度よ? でも一つ一つ作り手が心をこめて編んでいったもので、込めた祈りは怪我をしないようにだとか、幸運が訪れますようにだとかそんなものなの。例えばこれが幸運。こっちが怪我をしないように祈りを込めたものになるわね」
案の定、おまじない程度の物であるらしい。
「なるほど」
頷いた俺はティーシャを見た。
「なかなかいいんじゃない? 作りも繊細だし、ティーシャに似合いそうだ。あ、お姉さん、これ、祈りを追加でこちらで籠めたりとかしてもいいのかな?」
「買った後なら好きにしてくれていいわよ。今のままじゃただのおまじない程度ですもの。出来るなら、簡単な魔法を籠めたりするのもいいかもしれないわね」
その返事を聞いて俺はますます笑みを深くした。
網目は繊細で精緻で。こもった魔力も心地いいものばかり。
なるほど健康祈願やら怪我防止、幸運やらか。お守りのようなものなのだろう。
濃い青色の目立つ物などなら、ティーシャの目の色とも似ていて映えそうだ。
「だって、ティーシャ。これなんかいいんじゃない?」
「え、でも、そんな……うーん」
指し示したそれは、決してティーシャも気に入らないというわけではなさそうで。
ティーシャは迷いながらもややあって小さく頷いた。
「わかった。なら、ルーシーには俺がこれを買う。お揃い。ね?」
言いながらティーシャが指したのは俺の目の色と同じ琥珀色が主体のそれ。
「いいね」
笑いあって購入し、お互いの手首につけ合って。露店を後にして先に進んだ。
お揃いが妙に嬉しくて、にこにこと笑うティーシャが可愛くて。無理強いなんて絶対しない。
心の中でだけアーディさんに返事をする。
旅路はそんな風、とても楽しいばかりだった。
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