【完結】前世を思い出した身ごもり公爵令嬢は過保護な溺愛国王から逃れたい

愛早さくら

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3・現状②

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 くちづけは甘かった。
 なんだかやたらとあたたかく気持ちいい。
 いや、あたたかい理由はわかっている。魔力だ。
 くちづけで、息と唾液と共に魔力を注がれているから。
 この世界にはどうやら魔力が存在しているのである。と、言うよりも、世界を構成するものそのものがほとんど魔素と魔力により成り立っていて、人間が生きていくのにも当然魔力は必要不可欠なのだ。……――子供を作るのにも、お腹に宿した子供を育てるのにも。大量の魔力を必要とする。
 陛下のこれは、そればかりが理由ではないようだけれども。
 なにせ以前より子供がいるいない関わらず、陛下は隙あらば私に甘く触れてくるばかりだったようなので。
 いくら婚約者とは言え、結婚しているわけではない相手に対してどこまで手を出しているのやら。今世の記憶を紐解く限り、それらは決して一般的ではない。
 特にこの国の貴族令嬢は嫁ぐまでは純潔であることが好ましいとされている。なのにこの状況。
 国の代表たる国王がこれ。
 と、言うか、だ。
 私は先ほど突然、前世の記憶と感覚を思い出したけれども、何も記憶喪失になったわけではない。今世でのことだってしっかり覚えている。
 思い出したばかりだからか、感覚が少しばかり前世に引きずられていて、今世での自分の今までを思い返すと、どうしてもあり得ないとかとんでもないとか思ってしまうのだけれど。
 だから、知っている、自覚している。
 今の私が陛下の魔力を必要としている・・・・・・・・・・・・・ことを。それが何故かということも。つまり。

「ぁっ……いけませんわ、陛下。まだ陽も高いお時間ですもの」

 私の唇を散々貪りやがった陛下の指が、そろと服を乱しにかかるのを制止する。
 今までの私を思い返しても、不自然ではない程度に、しかし出来るだけきっぱりと。
 陛下はそんな私にあり得ないぐらい美しい顔を蕩かして、甘く囁いた。

「フィア……? そうは言うけれど、君もわかっているだろう? この子も腹を空かせているよ?」

 言いながら私の下腹部にそっと手を当てる。
 この子。
 そう、私は今、陛下の子供をこの身に成しているのである。
 あり得ない。嫁入り前だ。
 ほんとにこの男は、私に何処まで手を出してくれているというのだ。
 何処までとはつまり、孕むぐらいにしっかりしっぽり最後までということである。
 こんな美形と、私が! 最後まで!
 信じられなかった。心の中は大混乱だ。
 そんな心の中を可能な限り押し殺して、恥じらうように私はしなりと眉尻を下げる。

「わかってはおりますけれども……でも、陛下の執務を滞らせてしまうのは心苦しいのですわ」

 今でも充分に滞りまくりだ。その上、こんなソファの上でなど行為に及ぼうものなら……――まだ真昼間なのだ。本当に仕事をしてほしい。国王じゃないのか、この男。忙しいはずだろう、何故、私を膝の上に乗せている。
 わけがわからないことばかりだった。
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