【完結】前世を思い出した身ごもり公爵令嬢は過保護な溺愛国王から逃れたい

愛早さくら

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2・現状①

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 状況を整理したい。
 未だにこの見目麗しい男性の膝の上だけれども。
 とりあえず恥じらっているふりで顔を伏せているからわからないはず。
 私は前世、日本人だった。成人している普通の社会人だ。名前は……――今はもういい、今、考えたいことはそれではない。
 年齢や死因も同じく。たぶん死んだと思う。死んだはず。だからこそ生まれ変わったのだろうし。
 それもいいのだ。それではなくて。
 考えたいことは今世でのこと。
 私はここ、イェルティエ王国のハヌハナ公爵家の長女として生まれてきた。
 つまり高位貴族である。
 元庶民の私が! 公爵令嬢! しかも公爵家の!
 公爵家と言えばあれだ、何代か遡れば王家に行き着く。
 臣下に下った王族が賜る爵位が公爵だからだ。
 少なくともここ、イェルティエではそう。
 必然、領地を持たない公爵家も存在するが、我がハヌハナ家は領地も賜っている。
 歴史も古く、しかし幾度も王族が降嫁、あるいは婿入りして来ていた。逆に王族に嫁いだことも何回もある。……――そう、私のように。
 そういう家系。
 そういう家系で幼い頃から当時王太子だった第1王子に嫁ぐことが決まっていて、半年後には実際に、一足早く即位した新国王との結婚式を控えている。
 結婚相手の新国王がつまり、今、私を膝の上に乗せてでろでろに甘い声で囁いていた美丈夫。名を、ジェラマト陛下という。

「フィア……恥ずかしがる君も可愛いけど、いい加減早く私を見て?」
「陛下……」

 甘く囁きながらそっと顎を取られ、導くように顔を陛下の方へと向けさせられる。
 私は努めていつも通り・・・・・・・・うっとりと陛下を見た。
 見惚れるように。
 いや、実際に見惚れている。見惚れてはいるのだ、だって陛下は顔がいい。見ているだけで眼福だってぐらい顔がいい。
 甘い蜂蜜色の髪は形のいい輪郭を覆って、少し長めで真っ直ぐで、でも鬱陶しくはなくて、目の色は青。ネイビーとでも言えばいいのか、深い海の色。
 目鼻立ちのバランスが絶妙で美形というのはこういうのを言うのだなという見本のよう。
 そりゃあ私もうっとりと、眺め続けるというものだ。
 今も半ば本気で見惚れている。でも。
 残りの半分、前世を思い出した私の部分が心の中で悲鳴を上げていた。
 ぎゃー! やめてやめて、そんな顔で私を見ないで!
 そんなにキレイな顔をそんな風に近づけないで!
 顔がキレイすぎて滅されそう!
 ……――私はこんなにもイケメンに耐性がなかっただろうか……?
 いや、なかったな。前世、周りにイケメンなんていなかった。みんなフツメンだった。
 そりゃあ、こうもなる。
 しかも陛下はそのままそっと、私の唇を塞いできて……。

「ん……」

 私は小さく、鼻にかかった甘い吐息を漏らした。
 いや、だからほんとにやめて欲しい……。
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