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36・リダとの茶番
しおりを挟む魔道具の形状はあくまで石のようなもの、だ。
他への偽装などはしていないはず。
なにせ、魔道具があること自体、陛下は隠さなかった。私がそれを知っても問題がないという認識なのだ。事実、今世の私なら悦びこそすれ、決して忌避などしなかっただろう。前世を思い出してからも、少なくとも陛下と対峙する時に、そう言ったことを嫌がる素振りなど見せたことはない。……――嫌だと、思えなかったからである。
抵抗感はあるのだ。ただ、そこまで陛下が私に執着してくれている、と思えば、嬉しいと思ってしまう。そして陛下はそんな風に、私が喜ぶことを知っていた。
だから、隠さない。私が嫌がらないから。
にもかかわらず、私はその魔道具が、いったい部屋のどこに設置されているのかを把握していなかった。多分、リダも知らないはずだ。
把握しておくのは、決して悪いこととは思えなかった。
それとは他に、偽装したものを追加でどこかに忍ばされている可能性もあるのだが、それに関しては今は考えないことにする。
そもそも、そういった魔道具を見つける為の探査魔法も存在して、私は実はこれを習得しようと思っている。
魔法や魔術の習得に必要なのは理解である。魔法や魔術の仕組みを理解さえ出来れば、後は魔力操作次第で実際に使用することが出来た。
その為の書物等は資料庫にもあり、私が今回、資料庫と言ったのは、それを想定してのことでもあった。
探査魔法を習得して、陛下の目が届かない場所を把握する。魔道具自体をどうにかしてしまったら、おそらく陛下は気付くので、簡単に言うと、視覚のようなものを探すのである。
そうしたら筆談などというまどろっこしい方法を試みなくても、言葉で情報を共有することが出来るだろう。
部屋に戻った私は、リダに向かってにこやかにこう告げた。
「リダ、少しお願いがあるの」
私の言葉に、リダが不思議そうに首を傾げる。
「どうなさいました? フィア様」
「これまで陛下から頂いたものの確認をしてみようと思って。手伝ってくれないかしら?」
私の言葉に何か察することがあったのかリダは、しっかりと頷いて。
「それはいいですね。ふふ。陛下からのご寵愛の確認ですか?」
「まぁ、リダったら。からかわないで頂戴」
わざと茶化すような言葉をかけてきたので、私は恥ずかしそうにそう返した。
二人共がそんなやり取りを、作意を持って行っている自覚があった。要は茶番のようなものなのだが、陛下に不審を抱かせない為にはきっと意味のある行動なのだった。
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