【完結】前世を思い出した身ごもり公爵令嬢は過保護な溺愛国王から逃れたい

愛早さくら

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43・陛下への条件①

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 リリーは別に、育てにくい性格をしているというわけではない。ただし、おとなしいと言えないぐらいには闊達で、何よりも甘えん坊で、少しでも私と離れることを非常に嫌がった。
 これは王宮にいた頃から顕著で、リリーにばかり構う私に、陛下が明確に不機嫌になることがそれなりの頻度であったことをよく覚えている。自分の子供にまで嫉妬してどうしようというのか。
 私がリリーを王宮に置いていけなかった理由の一つだ。
 私からしてみれば、執着具合が流石親子だと思えるぐらいによく似ているようにも見えるのだけれども。前世を含めても、子供を持つのは私もこれが初めてなので、幼児というものは誰しもがこんなものなのかもしれない。
 と、なると、陛下の執着は母親を求める幼児のようなものということになってしまうのだが……――これ以上考えるのはやめておこうと思う。以前に近いことをぽろっとリダにこぼしたら、何とも言えないような顔をされてしまったし。
 ぐずぐずと泣き止まないリリーを揺らしてあやす。
 王族どころか、貴族女性としてもあるまじきほどの子供への手間の掛け方だが、身分を取っ払って、かつ、前世の感覚と照らし合わせると、こんなものではないかとも思う。
 私から言わせると、世話役の侍女や女中、乳母に任せっきりだなんて、寂しいとさえ感じてしまった。
 王宮にいた頃には、それらにもぐっと堪え、我慢していたのだから、今はむしろ離したくない。
 そう言えば、と思い出す。

「リダ。あちらから何か連絡は来ていて?」

 尋ねるとリダは首を横に振った。

「まだ何も。どうやらあの方は、いまだにミリーの条件を飲む決心がついていないようですね」
「そう」

 リダの応えに溜め息を吐く。
 条件。そう、アリムエ執政官に託した、私から陛下にあてたお手紙の内容がそれだった。
 リダとアリムエ執政官曰く。どうやら陛下は私に対して、一種の魅了魔法のようなものをかけていたらしい。とは言え、それほど強力なものではなく、少しばかり対象の存在に対して、頷く以外がしづらくなる程度のもの、通りで陛下を前にすると、ろくに話も出来なかったわけである。
 私があまりに陛下を好きすぎるせいかとばかり思っていたのだが、それだけが理由ではないだろうということだった。
 ちなみにそれに対抗するべく、私は資料庫にて探査魔法を習得する傍ら、そちらに対する防御魔法のようなものも調べておいた。元々陛下の行使していた魔法そのものも、それほど強力なものではないということなので、次に陛下と会った時には、少しは冷静に対応できるのではないかと考えている。
 もっとも、それらを理解するだけでも王宮を出るぎりぎりになってしまって、習得できたと思えるようになったのはここへ移ってきてから。陛下以外で周囲にそのような魔法を行使する者などおらず、試すことなど出来ていないので、確実にというわけにもいかないのだけれど。
 ともあれ、今度陛下が私に対して、以前に使用していたという魅了魔法のようなものを行使しないこと。それは重要な条件の一つなのだった。
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