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10・旅路②
しおりを挟む勿論、そんな緊張感のなさではきっと砂漠では命取りになる。
そうは思っても、反射のような自身の反応ばかりはどうにもできなくて。
「何を思い悩んでいるのか知らないが……君は何も心配しなくていい。否、少しでも不調を感じたらすぐに教えてくれ」
集落と集落の間。
相変わらずどこまでも続くかのような砂の中で、気が付くとすぐに憂うばかりの僕に、やはり声をかけてきたのはホセ。
それほどまでに僕は思い悩んでいるように見えるのだろうか。
僕はふるり、首を横に振った。
不調など何も感じていない。
「何も。……それは確かに、快適とは言えませんけど、思っていたほどでは……」
それはすぐ傍にホセやネア、シズがいてくれるからなのだろう。
この匂いに包まれている。おそらくはそれだけで、僕の状態は随分違う。
「それならいいんだが……」
しんなりと眉尻を下げながら、迷いなく砂を蹴るホセには疲労の色などほとんど見えない。
それは今も、僕と僕の乗ったラクダに影を作るようにして傍らを歩くネアにも。それほど離れていない位置から変わらず進むシズにも、だ。
多分、彼らはある程度砂漠を歩くことに慣れているのだろう。
僕は今、身重で、それだけでも彼らと随分と違うというのもあるとは思うけれど。
ネアが影を作ってくれているし、ラクダの上にいるので、地面からの熱も直接は僕には届かない。
だが、暑いことに違いはなく、ぐるぐるに巻かれた布の隙間からちらと見た前方など、陽の光に照らされて、真っ白で眩しすぎるほど。
目が眩みそうな暑さが見て取れた。
ともに歩いてくれている他の者、皆が心配になる。
特にネアなど、僕に影を作り続けてくれているということは、常に太陽の熱に晒されているのと同義だ。
ちらとそちらを見上げた。
視線に気付いたネアが不思議そうに僅か首を傾げる。
僕が彼を気にするそぶりを見せたのが、ほとんど初めてのようなものだったからだろう。
「ホセさんもそうですけど……ネアさんも、暑くはありませんか?」
こんなにも僕ばかり気にかけて。彼らは無理をしていないだろうか。
ネアは小さく身じろいだ。
影が揺らぐ。
だけどすっぽりと僕を覆い尽くしたままなのは変わらない。
「……暑いです」
ぽつり、ネアの声が耳に届いた。
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