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30・大領主邸での日々と、そして③

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「ダメって?」

 ホセが不思議そうにきょとんと首を傾げる。
 否、そう装った・・・
 なんとなくホセを見る。
 真っ直ぐに。
 思えば初めからホセは僕の側にいた。そこからずっと、僕を支え続けてくれている。
 褪せた金の髪、濃い色の肌。瞳は緑がかった青……――だった、はず、だ。
 ふと、気付く。だけど見間違いか思い違いだろうと疑問に蓋をした。きっとはじめから違っていたのだと。
 とても軽やかな雰囲気で、だけど何処か落ち着いていて。
 そして見目がとても良い。
 それこそ、美少年というに相応しい美しさを誇るフォルに勝るとも劣らない、少し違う見目の良さがそこにあった。
 何よりホセからは僕の番と同じ匂いがした。
 だけど番じゃない。
 わかるのだ。
 どうしてだろう、はっきりと。違うということだけがわかる。

「ホセさん。貴方なら、本当は・・・わかっているんじゃないですか?」

 そもそも、神人かむびとについてだって、ホセは僕に教えてくれなかったのだ。
 フォルに此処へと連れて来られるまでは、碌な説明もなく。
 ホセが、別に僕へと害を成そうとしているわけじゃないことはわかっていた。
 だが、逆にわかるのはそれだけ。
 なぜ、こうして僕の側に居続けてくれるのか。
 心配なのだというけれど、それはいったいなぜなのか。

『デュニナは神人だから』

 それだけでは納得できない。
 だってそれは、例えばあの集落の人達だって同じなのだ。
 同じように僕をとても尊重してくれようとしている雰囲気を感じていた。
 だけど違う。
 ホセは違った。
 もっと、どうしてか、僕に近い・・・・
 多分、シズやネア、フォルよりも一番。
 僕は随分と剣呑な眼差しをホセに注いでしまっていると思うのに、ホセはそんなものまったく気にならないとばかりにこと笑った。
 いつも通り・・・・・の笑顔。

「それはいったい何を指しているんだい? 俺が何をわかっていると?」
「っ、それ、はっ……」

 隙などなく問い返され、結局僕は言葉に詰まった。
 何か、しっかりと口に出して説明できるようなものではなかったからだ。
 ただ思ったことをそのまま口にしたに過ぎない。
 わかっているんじゃないか、そう思って、そう、口にした、だけ。
 わかっている。
 何が? 否、それはおそらく……――。

「全て、を」

 僕の知らない全てを。
 ようやく何とかそう口にした僕をにこと笑ったままじっと見て。ホセはややあって溜め息を吐いた。
 まったく仕方ないなぁ、そう言わんばかりの顔をして。そしてゆっくりと首肯したのだった。
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