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49・夢うつつ③
しおりを挟むやっと。
やっとだ。
やっと見つけた、愛しいデュニナ。
もうすぐだよ。
もうすぐで……――ける。
迎えに行くよ、待っていて。
待っていて。
ああ、待っている。
僕はただ、貴方を。
待っている。
―まさか落ちるのがここだなんて。……瘴気がひどいな。
―これは……いけませんね、上手く魔力が使えない。
―そんなことを言って、君は元々あまり魔力なんて使ってないじゃないか。ああ、でも……あの界よりもまし、なのかな?
―うるさい、こっちを見るなっ……!
―あはは。似合ってるし可愛いよ、その犬耳。
―狼だっ! はん。あんたも……尻尾と角が出たままみたいだが?
―耳もあるぞ。
―……。
―とは言え、ここでは私の方がこの姿のままでいるのさえ難しそうだな。まぁよい。光栄に思うがいい、私の庇護のもと囲ってやろうぞ。
―でかい図体で何しようってんだよ……余計なお世話だ。はぁ。デュニナには害が及ばないようにしろよ。
―それこそ、そこは頑張るだろ。――……ネアが。
―私ですか?!
―お前たち、戯れはそれぐらいにしてくれ。こんな場所で。それに早く移動した方がいい。一所に止まったままだから……――ほら、集まってきている。
―ああ? 蹴散らせばいいだけだろう? ネアが。
―?!
―またネアか。君も人任せだなぁ。
―あんたに言われたかないわっ!
―私はほら、君たちを囲ってなきゃいけないからね。君も、しっかり神人殿を抱えて。
―言われなくてもそうするよ。くそっ。
―……君、つくづく神人殿がいないと態度が悪くなるよね。その愉快な言葉遣いを神人殿が見るとなんて思うかな……ふふ。
―…………あんたはいつ何時でも性質がわりぃよ……。
話し声が聞こえた。
耳慣れた声だ。
ホセとフォルとネアとシズと。
随分と楽しそうな軽妙な掛け合い。
なんだか意外だ、そう思った。
だって四人がこんなにも親し気に話している所なんて見たこともない。
僕の前では皆いつも、一言二言離す程度で、談笑とは程遠かった。
そもそもネアもシズも、必要な内容でもなければ、口数が多いということもなく。
そうなると自然、話すのはホセかフォル。
だけどこの二人は相性が悪いのか何なのか、二人で会話などと言うことをほとんどせず、必要事項の確認以外だと、もっぱら僕に話しかけてくるばかりだった。
むしろもしや僕を介して、二人は会話をしているのではないかと思うほどに。
なのにどうだろう、僕を抜かした会話はこんなにも軽やかだ。
とても以外で、少しだけ面白くないと思う。
それはいっそ自分をまきこまないで欲しいと思うからか、それとも。
わからない、わからないけど、でも。
目を、開けなければ。思うのに。体全体が泥のように重く。運ばれているらしいゆらゆらとした揺らぎも手伝って、意識を保っていられない。
―デュニナ?
―ん? 起きたのか?
―……いや、気の所為みたいだ。
―そうか。……聞いていた通り、起きていられる時間が短くなっているみたいだな。
―仕方がない。今しばらくは、このままで。
ああ。
身じろぐ僕に気付いたのだろうホセが僕の覚醒を悟ってくれそうになったのだけれど、そのまま目を開けられないままでいると、どうやら眠ったままだと思われたらしかった。
僕はそれを否定する術を持たず、そのまま。
そのまま。
結局、意識は揺蕩っていった。
ああ。
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