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10・目が覚めたけど
しおりを挟むパチリと瞬く。
目が覚めた。
視界の先にあるのは見慣れない天上。否、これは……天蓋、か? いずれにせよ初めて見る景色だった。
あいにく、すっきりとした目覚めではない。
何せ体は重怠く、腰にも腹にも違和感があった。と、言うか特に、お尻が。お尻の穴に、何かが挟まっているような感触がする。
其処が開いて閉じられていないような。
身じろごうとして叶わない。と、言うかこれは……まさか本当に何かが挟まっていやしないだろうか。
何かと濁したが、それが何かは勿論、心当たりがあった。
俺が今、身じろぎも出来なくなっているのと同じ原因。つまり俺を囲うように拘束するグローディと名乗っていたイケメンの存在である。
俺はどうやら腹の辺りからは横向きで、肩から頭辺りは上を向いて、体を捩じるようにして寝ていたようだった。
だからこそ目が覚めて一番先に目に入ってきたのが天蓋だったのだろう。
首の後ろには枕よろしく男の硬い腕。言わずもがな、グローディのものである。
記憶を辿ると、意識を失う前のことは、思い出すことが出来た。
その更に先となると、やはりさっぱりわからない。自分のことも。あの、子供たちのことも。そしてグローディのことも、なぜ自分があの状況で気が付いたのかということも。
あの瞬間。俺の感覚では、目が覚めたように感じられたのだが、おそらくはそれは正しくはなく、推測するに突然、俺は記憶を失ったのではないかと思われた。
実感は全くわかないのだけれど。それ以前が全く思い出せないというのは、そういうことなのだろう。
そして俺の伴侶だというグローディは慣れた態度で俺に説明してくれた。
端的に、わかりやすく、俺の現状を。つまり、この突き出た腹と、それに伴い必要となるらしい行為についてを。
その上で躊躇なく容赦なく実行に移してきた。俺の動揺や戸惑いになど全く構わずに。
あり得ないだろう。
思い返してつくづく思う。
今のこの体勢等もあり得ない。だって尻のこの感触はおそらく、本当に挟まったままなのではないかと思うのだ。怖くて確かめられないのだけれど、つまりはグローディの象徴自体が、俺の尻にいまだに、挿し入れられたままだということで。そのまま寝ていたとか本当にあり得ない。
あり得ないけど、だからと言って俺は動けなかった。
そもそも身じろぎも満足に出来ないというのもあったし、何より恐怖が存在した。
だってこれ、今下手に動いたらどうなるのか。おそらくほぼ確実に、俺のお尻に自分のそれを挿し入れたまま俺を今拘束して寝ているらしいグローディが、目を覚ますと思うのだ。
そうするときっと、あの、意識を失う前の行為が、再開されるのではないかと思うのだ。
それが今、俺は怖かった。
何が怖いのか。そんなもの、全部だ。グローディも怖ければ、行為自体も怖いし、何よりあんなことをされて、身も世もなくよがり悶え、求め、気持ちよさを甘受していた自分自身が一番怖い。
だって気持ちよかった。それだけでいっぱいになっていた。
あんな、あんな自分なんて。到底、受け入れられるはずがない。
名前も状況も何もかもを、受け入れられていないままなのに、この上、更にだなんて。
俺はそんなことを取り留めもなく考えながら、実の所、途方に暮れていた。
いや、だから、身じろぎも満足に出来なければ……――お尻にはグローディの萎えてなお長大な剛直が多分ぐっぽりと嵌まり込んだままだったので。
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