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2・学園でのこと
2-4・楽しい1年
しおりを挟むアルフェスのいる1年は、正直に言うと面白かった。
否、そういうとティアリィは嫌がるだろうか。その前のティアリィとアツコの3人で過ごした一年も勿論、楽しかったのだけれど。
アルフェスの面白さは、そういう所にはない。
アルフェスはどうやらクラスの中では少々浮いているようだった。親しい友人も、いつまで経っても出来た様子がない。元々あの性格だ。人見知りな所もあって、一人でいることが多いように見えた。
アツコが生徒会や風紀委員会のことを口に出したのには、もしかしたらそういう部分を危惧したところもあるのかもしれない。
いじめられているだとかそういうわけではなく、ただ、距離を置かれている。
そして、友人がいない代わりに、否、それをいいことに? アルフェスは可能な限りティアリィに付きまとっていた。ティアリィは必死に距離を取ろうとしているようなのに、アルフェスの方からやってくる。
そのくせ、まともに話しかけられすらしない。必死にティアリィの視界に入って、ティアリィの方から話しかけられるのを待っているのだ。
ティアリィはティアリィで、視界に入るアルフェスから、ほとんど必ず目を逸らしていた。勿論、話しかけたり構ったりなどしない。
それらを傍から見ていて、面白くなくて何だというのか。
まるで喜劇だ。
アツコは面白がる僕を白い目で見てくる。性質が悪いとでも思っているのだろう。
だけど、これぐらい。守護結界を通り抜けるのに支障が出ない程度の嗜好だ。あれは人に親切にしなければいけない、というような結界ではないので。
今も呆れたような目で見てくるアツコに僕は笑った。
目の前にはアルフェスとティアリィ。入学式の時と同じような光景。
今日は話しかけられたらしいアルフェスが、ティアリィに迫っている。
もじもじと、恥ずかしそうに身を屈めて、あえて上目遣いを作ってティアリィにすり寄って。
ティアリィがあからさまに仰け反って身を引いていることに気付かないのだろうか。……――アルフェスだから、気付けないのだろう。
「ティアリィ……ぼくに触ってくれても、いいんだよ?」
そんなことを控えめに言っているが……触るとはいったい、何処を?
意味が解らない。頭か? 頭でも撫でればいいのだろうか。格好だけ見ると、わざわざ頭を差し出しているように見えなくもない。
「あっはっは」
僕は思わず声を出して笑ってしまった。とたん、ティアリィにぎろりと睨みつけられる。しかし肝心のアルフェスは、よほどティアリィしか目に入っていないのだろう、はばかることなくそれなりに大きく響いたはずの僕の笑い声にさえ気づかない。
アツコからの視線が痛いが、でもこれは面白いだろう、どう見ても。笑わずにはいられない程度に。
ティアリィがアルフェスに決して触れずに身を引いたまま、引きつった笑顔で必死にどうにか躱そうとしているのが伝わってきた。
ああ、困っているティアリィも本当にかわいい。普段見ることのないティアリィの姿を堪能する僕の思考はそんなに駄々洩れだったのだろうか。
アツコの眼差しがますます剣を帯びていく。
「貴方、本当に性格が悪いわ」
ぼそと呟かれるのに僕は笑った。
言われずとも自覚している。
あの様子だと、ティアリィとアルフェスの仲は、もうどうにもならないだろう。ティアリィが変わることは考えづらいので、元々アルフェス次第ではあったのだけど、あれではきっとアルフェスも変われない。
ああ、アルフェスもかわいそうに。あんなにティアリィが好きなのにね。
でも、好きならばこそ自分の気持ちを押し付けるばかりじゃなく、ちゃんとティアリィを見て、ティアリィに合わせないと。
そんな助言は決して口には出さずに心の底から同情しながら、僕は楽しくて楽しくて仕方なかった。
僕の作意なく、なのに僕の思うとおりに何もかもが進むのだ、楽しくないわけがないだろう? 面白くないわけが、ない。
そんな風に、大変楽しいことがたくさんある一年だった。
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