【完結】悪役令息?だったらしい初恋の幼なじみをせっかく絡めとったのに何故か殺しかけてしまった僕の話。~星の夢・裏~

愛早さくら

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2・学園でのこと

2-5・ルーファ嬢の入学

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 そういえばアツコは、ルーファ嬢の入学が例のゲームの始まりだと言っていただろうか。
 思い出したのは、その入学式の当日のことだった。
 登校前、アツコの顔を見て思い出した。
 僕とアツコは王宮から、同じ馬車で学園へと通っている。
 ティアリィは勿論、自宅である公爵家からなので、いつも学園に着いてからの合流となった。
 今日の入学式のような行事の時は、どうしても生徒会の仕事が少しばかり発生する。とはいえ、大したことではないのだが、一応と思い、講堂に向かう前に生徒会室に寄った。何か新たな伝達事項などが届いていないかの確認だ。
 もしそういった物があれば、担当者が生徒会室に郵便受けのように設置されている所定の書類置き場に届けてくれる手はずになっているので、其処を見るだけで済んだ。
 新たな書類などが何もないことを確認すると、すぐに講堂へと足を向けた。と、ちょうど近くを通りかかったらしいティアリィとルーファ嬢の姿が見え、足を止め、二人と合流する。アルフェスの姿はない。なら、多分講堂の近くで待ち伏せでもしているのだろう。
 そういえばアツコはルーファ嬢と会ったことがなかっただろうか。ティアリィの紹介ではじめましての挨拶を交わし合う二人に今まで機会がなかったのだろうと思い至った。
 つまりアツコはルーファ嬢のことも、アルフェスがそうだったように、よく知らないということだ。
 なるほどと、面白くなりそうでほくそ笑む。
 何かを察したらしいアツコがちらとこちらに視線を寄越したが気にしない。すぐにわかることだから。
 講堂まではすぐに着いた。案の定付近で待っていたらしいアルフェスに、一番に気付いたティアリィが躊躇なくルーファ嬢を差し出す。

「おはようアルフェス。すまないが、ルーファを席までエスコートしてくれるかな? 残念ながら俺は生徒会の仕事があるから、そこまで出来ないんだ。席は分かるだろう?」

 如何に記憶力があまりいいとは言えないアルフェスと言えど、1年も学園に通っているのだ、わからないはずがないだろうと、言外に含ませて、ティアリィは珍しく、アルフェスに向けてにっこり笑った。
 促されたアルフェスは戸惑ったようにティアリィとルーファ嬢の顔を交互に見て、しんなりと眉根を下げ、ややあってから、諦めたように頷く。

「着いてきて、ルーファ。案内するよ」
「アルフェス。エスコート」

 エスコートではなく、ただの案内をしようとしたアルフェスを、ティアリィがぴしゃりと注意する。
 さもありなん。先程ティアリィはわざわざエスコートを、と頼んだのだ。それを失念するなど、話にならない。そもそも、アルフェスは侯爵家の嫡男だ。貴族子息の作法として女性一人満足にエスコートできないなど、あり得て良いわけがない。まだ14歳という年齢を考えれば、これからの課題と言えないこともないが。もう14歳でもあるのだ。
 そこまで理解できているとは思えないが、それでも受けた注意にアルフェスは慌てたように態度を改めた。

「えと、こ、こっちだよ」
「アルフェスったら、相変わらずねぇ」

 しかし、ルーファ嬢を促す姿は、何処までいってもぎこちない。
 幸いにしてというべきか、ルーファ嬢も慣れたもの、気分を害した様子もなくくすくすと華やかに笑って、そんなアルフェスを許容した。
 そのまま席へと向かう後ろ姿は、何処か来やすい雰囲気を醸し出しつつも、どうしてもアルフェスのぎこちなさがバランスの悪さとなって僕たちの目に残り続ける。
 ルーファ嬢の見た目だけは淑女然とした姿勢が、なまじ年齢相応程度にはおかしな所がない分だけ余計に。
 ティアリィはそんな二人を見送って、隠すことなく溜め息を吐いた。

「なにあれ」

 アツコが目を丸くして驚いている。いったいどちらに驚いているのだろうか。あるいは二人ともに?
 アツコが持つというゲームの知識は、どうやらアツコに変な先入観を与えているらしかった。

「現実はあんな感じ」

 あれでもまだ今日は二人とも、緊張してるのかおとなしい方かなぁ、と、ティアリィが遠い目をして呟く。
 僕は笑った。

「実際はもっと強烈だよ。直に分かると思うけど」

 特にルーファ嬢の方がね。

「アルフェスはもう去年で分かってると思うけど、あの子はあの子で、何せ台風の目、みたいなものだから。誰かさんが甘やかす所為で」

 敢えて嫌みのように口にして、視線をティアリィに分かりやすく向けるとティアリィはわざとらしく両手で耳にふたをして僕から目を逸らした。

「あーあー、何も聞こえませんー! さぁ、仕事しないとなぁ!」

 ティアリィの珍しくも子供っぽい態度に噴き出した僕の側で、アツコは腑に落ちない顔をして首を傾げている。

「もっと強烈って、どれだけ……」

 小さな呟きに、ティアリィは聞こえないふりをしている。
 はは。
 僕は笑う。
 ああ、どうやらこれからの学園生活も。大変、面白いことになりそうだった。
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