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0・ことの発端
しおりを挟むそれは母の再婚相手である子爵のこんな一言から始まった。
「だからね、アリアちゃん、貴族はみんなこの学校に通わなくちゃいけなくて」
件の学校の資料を私へと差し出しながら、子爵が媚びるように私の機嫌を窺ってくる。
人のいい新しい義父は、どうやら突然できた私という大きな娘への接し方がよくわかっていないらしく、私と話すときはいつもこんな風なのだ。
私は義父の差し出した資料を渋々受け取りながらぎゅっと険しく眉根を寄せた。
「……これ、絶対行かなきゃいけないんですか?」
ものすごぉくいやそうに確かめる私に、しかし義父は珍しくはっきりと頷く。
「うん、絶対」
この父がそういうのなら、きっとどう頑張っても逃げられないのだろう。
「…………そうですか」
気が進まないまま仕方なく頷いた私は、やっぱりどうしても結局は。その学校に、ものすっごく行きたくないのだった。
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