記憶喪失になったけど、伴侶だという人物に一目惚れ(?)したのでこのまま俺に惚れてもらおうと思う。

愛早さくら

文字の大きさ
17 / 54

16・俺のこと、そして①

しおりを挟む

 俺の言葉に、シェスは一度、驚いたようにパチリと瞬きをした。

「僕ならいいんですか?」
「うん」

 確かめられて頷くと、シェスがやんわりと嬉しそうに微笑む。目尻に笑い皺が出来ていて、多分シェスは本当にいつもにっこり笑っているような穏やかな人物なんだろうなと思った。

「光栄です。では僕のわかる範囲の説明をしていきますね。誓って嘘は言いません。飲みこめないことも多々あるとは思います。無理に納得する必要も受け止めなければならないなんてこともありません。ミーシュ様はどうぞ、お心のままにいらしてください」

 伝えるのは事実だけだとシェスは繰り返し、少しだけ息を整えて、注意深く俺の様子を探りながら、ゆっくりと色々なことを話し始めてくれた。

「まず、これはお聞きかもしれませんが、ミーシュ様のお名前はレミュシア・カナドゥサ・パンレソイと言います。もしかしたら違和感がおありになるかもしれませんが、現在・・それ以外のお名前はありません。お立場はここ、パンレソイ辺境伯領を治める、辺境伯の伴侶。辺境伯夫人です」
「夫人……男なのに?」
「はい、男なのに。性別は関係ないんです。辺境伯の伴侶なので、辺境伯夫人です」

 そこで初めて俺は、自分に伴侶がいることを知った。つまり誰かと結婚済みなのだ。
 誰と?
 一瞬、怖くなる。でも。
 グローディ。
 もし、相手が彼ならば。
 ドクンと、胸が高鳴った。
 おそらく間違いないと思う。否、違う、グローディは一番初めに名乗っていたではないか。

『貴方の伴侶です』

 あの時は思考が全く追いついていなくて、意味がよく呑み込めていなかったけれど、確かにそう言っていた。
 その後も含めて、少しばかり記憶が曖昧なのだけれども、俺の名前を教えてくれた時にも、グローディは俺のことを最愛の妻だなんて言っていたように記憶している。
 だから俺の伴侶はグローディで間違いないはずだ。案の定シェスがそんな俺の予測を肯定してくれる。

「現在、辺境伯位に就いているのはグローディジェ・ジルサ・パンレソイ。ミーシュ様が先程わかると言ったグローディが、つまり貴方の伴侶です。グローディとミーシュ様はご夫婦だということですね」

 ほっと安心する。
 俺は今、明確にグローディに心惹かれていて、もしそれで他に伴侶がいるだなんて言われたら、どうすればいいのかわからなくなるところだった。
 グローディは初めから大変に俺に好意的だった。
 伴侶だというのなら納得だ。否。本当にそうだろうか?
 一瞬、胸によぎった不安には気付かないふりをして、俺はおとなしく口を開かないことで、シェスへと続きを促した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

処理中です...