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16・俺のこと、そして①
しおりを挟む俺の言葉に、シェスは一度、驚いたようにパチリと瞬きをした。
「僕ならいいんですか?」
「うん」
確かめられて頷くと、シェスがやんわりと嬉しそうに微笑む。目尻に笑い皺が出来ていて、多分シェスは本当にいつもにっこり笑っているような穏やかな人物なんだろうなと思った。
「光栄です。では僕のわかる範囲の説明をしていきますね。誓って嘘は言いません。飲みこめないことも多々あるとは思います。無理に納得する必要も受け止めなければならないなんてこともありません。ミーシュ様はどうぞ、お心のままにいらしてください」
伝えるのは事実だけだとシェスは繰り返し、少しだけ息を整えて、注意深く俺の様子を探りながら、ゆっくりと色々なことを話し始めてくれた。
「まず、これはお聞きかもしれませんが、ミーシュ様のお名前はレミュシア・カナドゥサ・パンレソイと言います。もしかしたら違和感がおありになるかもしれませんが、現在それ以外のお名前はありません。お立場はここ、パンレソイ辺境伯領を治める、辺境伯の伴侶。辺境伯夫人です」
「夫人……男なのに?」
「はい、男なのに。性別は関係ないんです。辺境伯の伴侶なので、辺境伯夫人です」
そこで初めて俺は、自分に伴侶がいることを知った。つまり誰かと結婚済みなのだ。
誰と?
一瞬、怖くなる。でも。
グローディ。
もし、相手が彼ならば。
ドクンと、胸が高鳴った。
おそらく間違いないと思う。否、違う、グローディは一番初めに名乗っていたではないか。
『貴方の伴侶です』
あの時は思考が全く追いついていなくて、意味がよく呑み込めていなかったけれど、確かにそう言っていた。
その後も含めて、少しばかり記憶が曖昧なのだけれども、俺の名前を教えてくれた時にも、グローディは俺のことを最愛の妻だなんて言っていたように記憶している。
だから俺の伴侶はグローディで間違いないはずだ。案の定シェスがそんな俺の予測を肯定してくれる。
「現在、辺境伯位に就いているのはグローディジェ・ジルサ・パンレソイ。ミーシュ様が先程わかると言ったグローディが、つまり貴方の伴侶です。グローディとミーシュ様はご夫婦だということですね」
ほっと安心する。
俺は今、明確にグローディに心惹かれていて、もしそれで他に伴侶がいるだなんて言われたら、どうすればいいのかわからなくなるところだった。
グローディは初めから大変に俺に好意的だった。
伴侶だというのなら納得だ。否。本当にそうだろうか?
一瞬、胸によぎった不安には気付かないふりをして、俺はおとなしく口を開かないことで、シェスへと続きを促した。
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