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19・俺のこと、そして④
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あれは俺の認識ではただの性行為だ。そうしてやっと理解する。魔力を注ぐというのはつまり、あの行為を指していたのだと。
否、うっすらと予想はしていた、ただ確信までは持てていなかっただけで。
「ミーシュ様、今、ミーシュ様のお腹にあたたかい何かがあるのはお分かりになりますか?」
言われて自分の腹部へと意識を向ける。大きく膨らんでいる腹部。昨日気が付いた時から違和感を覚えていた。
此処にだけ肉がついているのかと思っていたけれど、今の話の流れからすると、そうではないということなのだろう。むしろ、ここにいるのはおそらくは。
「子供……」
今、改めてそこを感じると、なるほど、シェスが言うとおり、あたたかい何かがあることが分かった。
この熱が、子供ということなのだろうか。
「ええ、そうです。ミーシュ様とグローディのお子様です。生まれるまでは……あと三月ほどでしょうか。お腹はもっと大きくなりますよ」
これでも大きくなりきってはいないのだと言われて少しだけ怖くなった。随分と大きく膨らんでいるように感じられたけれど、どうやらそうではないらしい。
此処に、子供がいる? グローディの子供。俺の……いや。
「俺じゃない。レシア様の子供だろ」
咄嗟に。知らぬ間に、口からこぼれ出ていたのはそんな言葉だった。
今、自分のお腹の中に子供がいるのだと言われても、実感できるはずがなかったし、ましてや自分の子供だなんて思えない。だって自分にはまったく覚えがないのだ。
シェスはグローディと俺の子供なのだと言った。でも違うとわかる。
何故なら。
「レシア様って言うのは、つまり、俺のことなんだろう? 昨日、目覚める前までの俺だ。この体を使っていた。でもそれは俺じゃない」
俺が俺となったのは昨日からなのだ。それまでの俺と、今の俺と。それを同じにはどうしてだろう、どうしても思えなくて。
「ミーシュ様……」
シェスが俺の言葉に、困ったような顔をしている。困らせたいわけではなかった。
シェスはきっと、とても親切な人物だ。グローディとよく似ているから、彼の兄か何か、少なくとも血縁のある者なのだろう。
何もかもわからない、なのにグローディからは何も聞きたくない俺を慮って、いろいろと説明しようとしてくれている。
とてもありがたいことだと思う。
なのに俺は困らせているのだ。それでもどうしても、俺は割り切れなかった。納得できない。気持ちが追いつけない。否、違う。ただ単に実感が伴わないせいで、今の自分と、昨日より前の自分とを、同じとは到底思えないのだ。
ただ、それだけの話だった。
否、うっすらと予想はしていた、ただ確信までは持てていなかっただけで。
「ミーシュ様、今、ミーシュ様のお腹にあたたかい何かがあるのはお分かりになりますか?」
言われて自分の腹部へと意識を向ける。大きく膨らんでいる腹部。昨日気が付いた時から違和感を覚えていた。
此処にだけ肉がついているのかと思っていたけれど、今の話の流れからすると、そうではないということなのだろう。むしろ、ここにいるのはおそらくは。
「子供……」
今、改めてそこを感じると、なるほど、シェスが言うとおり、あたたかい何かがあることが分かった。
この熱が、子供ということなのだろうか。
「ええ、そうです。ミーシュ様とグローディのお子様です。生まれるまでは……あと三月ほどでしょうか。お腹はもっと大きくなりますよ」
これでも大きくなりきってはいないのだと言われて少しだけ怖くなった。随分と大きく膨らんでいるように感じられたけれど、どうやらそうではないらしい。
此処に、子供がいる? グローディの子供。俺の……いや。
「俺じゃない。レシア様の子供だろ」
咄嗟に。知らぬ間に、口からこぼれ出ていたのはそんな言葉だった。
今、自分のお腹の中に子供がいるのだと言われても、実感できるはずがなかったし、ましてや自分の子供だなんて思えない。だって自分にはまったく覚えがないのだ。
シェスはグローディと俺の子供なのだと言った。でも違うとわかる。
何故なら。
「レシア様って言うのは、つまり、俺のことなんだろう? 昨日、目覚める前までの俺だ。この体を使っていた。でもそれは俺じゃない」
俺が俺となったのは昨日からなのだ。それまでの俺と、今の俺と。それを同じにはどうしてだろう、どうしても思えなくて。
「ミーシュ様……」
シェスが俺の言葉に、困ったような顔をしている。困らせたいわけではなかった。
シェスはきっと、とても親切な人物だ。グローディとよく似ているから、彼の兄か何か、少なくとも血縁のある者なのだろう。
何もかもわからない、なのにグローディからは何も聞きたくない俺を慮って、いろいろと説明しようとしてくれている。
とてもありがたいことだと思う。
なのに俺は困らせているのだ。それでもどうしても、俺は割り切れなかった。納得できない。気持ちが追いつけない。否、違う。ただ単に実感が伴わないせいで、今の自分と、昨日より前の自分とを、同じとは到底思えないのだ。
ただ、それだけの話だった。
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