記憶喪失になったけど、伴侶だという人物に一目惚れ(?)したのでこのまま俺に惚れてもらおうと思う。

愛早さくら

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24・足りないのは

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 まだ全身に残る怠さもあり、あまりうまく動かせなさそうな体を寝台に横たえたまま、なのにどうしてだろう。俺はグローディに触れて欲しくて堪らなかった。
 こんな状況でなんて、おかしい。どう考えてもすでに俺は自身の限界を超えている。なのに。

「ミーシュ? どうしました?」

 グローディは程なくして戻ってきてくれた。
 シェスが何をどう言ったのか、不思議そうにしながら近づいてくる。

「シェスが、とにかく早くと言っていたのですが……ミーシュ?」

 さっと、シェスが部屋を出る時、おろしていった天蓋をかき分けて、グローディが俺をのぞき込んできた。途端はっと息を飲む。
 きっとひと目で分かったのだ。俺が今、どんな状態で、なのにどんなことを望んでいるのかが。

「ああ、ミーシュ。どうしたというのです。そのような顔で……」

 シェスも言っていた。そんなにも俺はわかりやすい顔をしているのだろうか。わからない。わからない、けど。

「グローディ……」

 怠くて、全身が動かしにくい。それでも。
 ゆるとぎこちなく手を伸ばした。伸ばした手をグローディが取って。そっと頬に押し当てる。
 滑らかな肌。グローディの頬。やけにあたたかく感じるのは、俺の手が冷えているからだろうか。それとも、そんな所からも、グローディは魔力とやらを流しているのか。
 両方かもしれない。ぼんやりと思う先で、グローディが柔らかく笑みを浮かべた。
 俺に向けて、愛しいとばかり、目を細め。

「充分に。魔力は注いだつもりだったのですが……まだ足りませんでしたか? お体も辛いままでしょう?」

 そんな風に言われてしまって、俺は気まずくなる。でも。
 お腹が疼いた。
 きゅんっと、グローディを求めて、切なくなっている。
 だって。ああ、でも、グローディ。
 滲む視界。揺れる瞳に、グローディが困ったような顔をして、そして。

「ああ、本当に。そのような顔をなさらないでください。大丈夫。問題ありません。たまにはそういうこともあるのでしょう。あるいは足りないのは魔力などではなく、私という存在自身、あるいは……」

 貴方ご自身の、お心なのかもしれませんね。
 そう、微笑んだグローディはようやく寝台に乗り上げ、俺に覆いかぶさってきて。ばさ、剥ぎ取られたシーツの残像が、やけにゆっくりと俺の視界の端を通り過ぎていった。

「ミーシュ」

 グローディの逞しい腕に危なげなく抱き上げられる体。俺は全身から力を抜いて、グローディに全てを預けきって。だけどグローディはそんな俺をしっかりと抱きしめていてくれた。
 そっと降りてきたくちづけに込められた慈しみは。だけど本当はいったい、誰に向けたものなのだろうか。俺はそんなことを思いながら、それでも今だけは。グローディに触れているのは自分だと、少しでも実感したくて、自由にならない体で、精一杯グローディへと寄り添ったのだった。
 グローディ。
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