異世界から来た黒騎士は、大国の皇帝に望まれる

11・転移魔法

　気になることと言われて、俺はぽつぽつ思うまま、とりとめもなくアーディに質問をした。
　そもそも、どうしてあの子供があんな所にいたのかから始まって、本当にとりとめもなく、いろいろなことを。
　アーディは何かを疎ましがる様子もなく、快くすべての質問に答えてくれた。と、言うよりは聞いた以上のこと全てを教えてくれた。
　例えば。

「ああ、トゥールがあんな所にいた理由？ うーん、何から話せばいいかなぁ……まぁいいか。長くなるけど、構わないかな？」

　確かめられ頷くと、アーディもにっこり頷き返してきて。

「そもそもの話からするとね、あの子は僕の弟なんだ。って、それはわかってるんだよね？ トゥピルティスって言って、今は2歳になる。僕が即位したのは去年。あの子が生まれたから即位したと言ってもいい。残念ながら、僕にはこの年になってもいまだに恋人の一人もいた試しがなくてね。この国は皇帝に結婚だとかなんだとかを強制するような風潮がないから、独身でも構わないと言えば構わないんだけど、流石に後継者ぐらいは必要なんだよね。僕に相手がいれば、それでよかったんだけど……」

　それを聞いて俺は意外に思った。こんなにもキレイで親しみやすい性格をしているようなのに？
　しかも地位は言わずもがな、俺を此処に連れてきたのが転移魔法だとしたら、魔法の腕もかなりのもののはず。

「はは。意外？ そう言いたそうな顔をしてる。なんて言えばいいのかなぁ……これまで、本当に興味が持てなくて。まぁ、とにかく、だからあの子は弟で、今の所、後継として一番有力な存在なんだ。で、あの子があんな所にいた理由なんだけど、見た目通り、あの子は魔力が多いんだ。僕が転移魔法を使えるのはわかるよね？」

　俺は頷いた。実際に俺がこの場所にいるのが証拠なのだろう。
　転移魔法だなんて。魔法が当たり前に存在するこの世界でも、使える人間はほんの一握りだと聞いているのだけれど。
　どれだけ魔法に長けていたとしても、使える存在はめったにいないのだそうだ。
　それぐらいに難しくて、何より魔力が大量に必要だとか。

「僕も、見たらわかると思うんだけど、魔力が多くてね。勿論、それは僕の両親もで、転移魔法も、僕は勿論、両親も使えるんだよね。で、トゥールはそんな僕の弟で」

　元々、素地はあったのだとでも言いたいのだろうか。血筋だと言われればわからなくもなかった。

「普通はね、あんな年でそんな魔法、使えるわけがないんだけど。今日、あの子ちょっと癇癪を起して。宥めている間に目の前で消えてしまって」

　つまり、偶発的に転移してしまっただとかそういう話であるようだった。