【完結】気がつけば推しと婚姻済みでかつ既に妊娠中だったけど前世腐男子だったので傍観者になりたい

愛早さくら

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 ああ。どうして。
 そう思う。
 ラティにこの場にいてもらった、ただそれだけなのになんで。
 ラティが俺の後ろにいるというのもあるのだろう、威圧のようなものをシェラは今、感じているはずだ。
 ラティの様子は俺からは見えず、だけど間違いなくシェラには見えているから。
 そもそも俺も、ラティが視界に入ると途端そちらにばかり意識が向くから、こうするしかなかったとも言えるのだけれど。
 ラティはいったい今、どんな顔でシェラを見ているのだろうか。
 少なくとも、俺を見る時のような表情ではないのだろうことだけはわかる。
 何を、言えばいいのだろうか。
 シェラはもうきっとわかっている。わかっているのだ。なら。
 朝だった。
 朝食を終えて、それで。
 いつも、朝しっかり起きられた時は、食堂で朝食を摂った後、俺を部屋まで送り届けたらすぐに執務へと向かうラティが、共にこの部屋に入ってきた時から、シェラは不思議そうな顔をしていた。
 何か事情があるのだろうかと、その時には多少疑問に思いつつも、そう気にしていない様子だったのだけれど、俺がこうしてソファに座って、ラティがその後ろに立って、そしてシェラに俺が呼び掛けて。

「シェラ、そこに、座ってくれ」

 そう、指示を出した時から、シェラはどこか怪訝そうな、そして不安そうな顔をし始めて、それでも大人しく俺の対面へと腰を下ろした。
 その時点できっとシェラは何かを悟っていたのだろう、シェラの緊張感のようなものが、こちらへも痛いほど伝わってくるかのようだったから。
 今、伏せた目の奥でシェラはいったい何を思っているんだろうか。
 どう話しかけたものか。
 迷う俺に気付いたのだろうシェラが、ややあってくすと小さく自嘲気味な笑みを漏らした。

「――……ルニア様まで、緊張なさらないでください。その分だともう、おわかりなんでしょう?」

 次いで静かに顔を上げ、震える声でそう告げてくる。
 俺はシェラのそんな痛ましくも見える様子に顔をしかめた。
 深く息を吐く。
 頭の中は、整理し切れたとは言い難い。
 でもわかっていることがあり、聞きたいことがあった。だから。

「……わかってることなんて、実際には少ないよ。だからこそ教えて欲しいと思ってるだけだ。お前がいったい何をして、それは何故だったのかということを」

 シェラは俺を害するつもりなどないはずなのだ。
 だからこそ余計にわからない。
 真っ直ぐにシェラを見た。
 目を、逸らさずに。
 湧き上がって来ない、今まで感じていた慕わしさの代わりのよう、俺の胸に今あるのは、泣きたいような胸苦しさ。
 それはシェラのいびつな笑顔が、今にも崩れ落ちそうな不安定さを孕んでいるからなのだろう。

「だから、聞かせてほしい。シェラ」

 そう告げた俺に返されたシェラの顔は、それでも笑んだままだった。
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