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XX-1・エピローグ
しおりを挟む結論から言うと、シェラは結局、俺付きではなくなった。
王宮に勤める侍従のままではあるし、場合によっては、俺の元へ来ることもある。けれど専属ではなくなったので、毎日顔を合わせるだとか言うことは無いし、子供に触れることなんてもっとない。
その上、王宮で侍従の仕事に従事している間は、少しばかりの制約が課されることになったのだという。
それは、シェラが得意なのだという魔力操作を、少しばかりしにくくするための腕輪上の魔術器具で、シェラの魔力量では、その腕輪をしてかつ、他者の感情の誘導などという魔力操作は出来なくなるだろうということだった。
悪感情などがない以上、防御結界などは作動しないので、仕方のない処置と言えることだろう。
ちなみに、それらを踏まえて、それでも侍従のままでいることを選んだのはシェラ自身だ。
いつぞやのお見合い相手だとかなんだとかいうシェラの憂いも、俺からの依存もない以上、元のように実家の商会に勤めることにしてもよかったことだろう、けれどそうしないことをシェラは選んだ。
制約を課されてなお、侍従のままでいることを。
『もう少し真剣に学ぶことにします。侍従としてのお勤めは、僕自身の為になりますし、それに……少しでもお傍にいたいんです』
流石に此処で勤めるようになって自覚したと、柔らかく笑ったシェラは、相も変わらず、花がほころぶような可愛らしさだった。
「本来、いくら魔力操作が得意でも、他者の感情の誘導などまでは、出来ない者が多いんだけどね」
そう告げてくるラティに俺は頷く。
俺は勿論、俺よりも魔法や魔術が得意なラティでも、そう言ったことは容易ではないのだ、きっと出来る者の方が少ない。
俺がシェラに感じていた忌避感は、シェラの行っていた、魔力操作による感情の誘導に、無意識でありながら気付いていたからで、ラティが側にいる時にならなかったのは、ラティはシェラのそんな些細な魔力による干渉よりもずっと強く、感情と魔力を俺へと向けていたからなのだろう。
シェラのそんなものなどかわいく思えるほどの激しさで。
それでも、感情の誘導などを行っていたわけではなかった。
「天性のもの、と言えばそうなんだろうけど……どうかな。覚醒者だからかな? どうも彼は前世から、人の機微に敏感な部分があったそうだし。もしかしたら生育環境ゆえのものだったかもしれないが、そこまでは覚えていないそうだ」
ラティはシェラから、俺が聞いたのよりも更に詳しく話を聞いたのだそうだ。
特に、初めは無意識で行使していたのだという、魔力操作による、感情の誘導についてなどを。ラティでも、シェラが行っていたと言う魔力操作には気づけなかったとのことで、それぐらいに微かで、かつ自然なものであったらしい。
「彼も一度は君と距離を取ろうとした。自分が君の感情を僅かなり操作している自覚があったからだろう。罪悪感もあったのかもしれない。学園を出て、就職したのがいい例だ」
けれど、俺の婚姻式の時にあんなことがあって、シェラはきっと諦めてしまったのだ。俺と、離れることを。それがどんな気持ちに起因するものなのか。俺は深くは突き詰めないことにした。何故なら俺にはどうにもできないことだったからだ。
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