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08・二人
しおりを挟む初めはこんな関係じゃなかったなぁと思いだす。
リシュとマディは幼なじみだ。
両親同士の中が良好なのもあって、まるで兄弟のように、あるいは双子のように育ってきている。
気の置けない親友、と言い換えてもいいかもしれないが、関係性としては悪友という方が正しいのだろう。
王家と公爵家。立場や責任は違っていて、だけど近い。
特にマディは隣国リゼナシアの王甥でもあるから尚更だろう。
ちなみに親友ではなく悪友なのは、基本的に全く気が合わないからだ。仲が悪いわけではないのだけれど。
四角四面で努力を怠らず、自らでもそれを認識しているがゆえに自己肯定感が強く、他者に臆することのないリシュと、手が抜ける部分では抜いてしまいたい要領の良さと柔軟性、あるいはリシュと比べると多少の謙虚さぐらいは持ち合わせているマディ。
根本的に物事に対する姿勢が全く違うのだから気など合いようがない。
例えば全てを完璧に仕上げなければ気が済まないリシュと、結果が伴っていればいいだろうと済ませてしまうマディ、だ。
一事が万事そうであれば、当然衝突は必須、それこそ幼い頃は喧嘩が絶えないばかりだった。
例えばこんな風、
「マディ! 昨日の稽古、何故サボったんだ!」
「課題は終わらせてあるんだからいいだろ。案内とかわかんねぇもん、全部やってられっかよ」
「そういう問題じゃないだろ?! 言われたことぐらい熟さなければっ」
「んなこと言って、指示されたことの倍はやってんだろ、お前。お前こそいい加減にしろよ? んなことばっかやってたら疲れるぞ」
「何を言う! 完璧に熟してこそだろう!」
それに俺なら出来るしな!
などと胸を張るリシュに、マディが呆れたような溜め息を吐いて。だけど、
「言ってろよ。……ったく。お前、ここの筋痛めてるだろ。やり過ぎだ」
なんて、ふいに手を取って、不調箇所を指摘したりすることもしばしばで。
「お、お前、お前っ……なぜっ! 」
隠していたこと、あるいは気づかなかったことをマディに見咎められ、幼い頃から口の回る方だったリシュが二の句が継げなくなるようなこともままあった。
他にも似たような出来事は枚挙に暇がない。
リシュはとにかく、褒められたりしたら当たり前に受け取り、
「当然かな? 俺は優秀だからね」
なんてにこやかに言い放つ、ともすれば鼻につくような部分があったのだけれど、それに相応しい努力を怠っていないことを、誰よりもマディが一番よく知っていたのである。
逆に、
「フェリティラ公爵子息! 何故呼び出しに応じなかったんだ!」
などとある種のサボりのようなものを、マディがリシュ以外から糾弾されていた時には、
「そもそもなぜ彼がその呼び出しに応じなければならないんだい? 正当性は何処に? 彼は最低限の義務は果たしているはずだけど」
そうリシュが言い返すようなこともあった。
勿論、マディが、リシュが言うとおり最低限のポイントは抑えている前提で、そしてリシュはマディがいったい何をどの程度熟しているのかを概ね把握していたのである。
なお、だいたいが剣術、あるいは体術の稽古や勉学についてなどなのだが、お互いの現状をほとんど正確にお互いに理解し合っていた。
言い争うことも喧嘩も頻繁で、気が合うわけでもない。だけどずっと離れず側に居続けたのは、さて、いったいなぜだったのだろうか。
(マディの側に、いたかった……)
離れたくなかった。
リシュはぽつり、心の中で呟いた。
思い出す。思い返す。
そういえばマディを、初めて意識したのはいつだっただろうか、なんて。
否、それよりもずっと前から、本当は意識していたのだろうけど。
多分、あれは……――。
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