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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)

27・塔の外にて⑧

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 それを聞いてルナス様の気配がますます剣呑なものとなっていく。

「リュディがここに来ると知っていたら、あんな女、何があったって通さなかったさ!」

 ルナス様はやはり僕がここに来ることを知らされていなかったらしい。
 そして多分あの女の人のことが嫌いなんだろうなと思った。
 あの女の人、いったい何をしたんだろう、お優しいルナス様にこんなにも嫌われるなんて。
 首を傾げる僕へと、おそらくルナス様が視線を向けてきているようだった。
 視界はぼやけているから視認は出来ないけれど、注意を向けられていることぐらいは流石に察することが出来る。
 だけどすぐにそれは逸らされて。

「リュディは……確かに、大事な時期だが、しかしリュディは……」

 ルナス様はどうしてか辛そうにそう小さく吐き捨てた。
 僕? 僕がいったいどうしたというのだろう。

「俺など……これ以上、彼に触れない方が……」

 触れない方が?
 それはいったいどういう意味なのだろうか。
 僕はこんなにもルナス様以外が嫌なのに、いったいルナス様は何を言っているの?

「うっ……ぅうっ……」

 鼻を鳴らして僕は泣いた。
 悲しくて悲しくて。さっきの怖いとは違う。今度は悲しいだ。
 サネラ様の気配は、僕のことを気遣わしげに窺っていて、同時に、ルナス様のことは睨み付けていらっしゃるみたいように僕には感じられた。
 多分、間違ってないと思う。

「陛下? 貴方いったい何をおっしゃってらっしゃるんです?」
「何を言っているって、そんなもの……近くに居たら、塔に、行って彼と会えば! 触れずにはいられないだろうが! 俺はこれ以上、そんな無体は……」

 ルナス様のおっしゃってらっしゃることは要領を得ないし、よくわからない。
 本当にいったい何の話をしているのだろうか。塔と言っているから、僕のことだと思うのに。
 僕はただ泣くばかり。
 サネラ様は、そんなルナス様をしばらく見つめていたかと思うと、だけど、ややあって。

「……どうやら、何か誤解が生じているようですね。いったいなぜこんなことになっているのか……少し、お二人でお話をなさってはいかがですか。ああ、陛下はとりあえず早急にすぐにでも、彼に魔力を補充してあげてください。おそらくはもう限界ですよ。私は席を外しますから」

 はぁと深く溜め息を吐いて、続けてそう言って部屋を出て行ってしまう。
 あとに残されたのは気まずげに僕から視線を逸らすルナス様と、ぐずぐずと泣いてしゃくり上げる僕。
 ああ、ルナス様。
 限界。
 そういったサネラ様の言葉に間違いはない。
 だって頭も痛いし、気持ちが悪いし、地面が揺れている。
 さっきよりも今の方がより顕著に感じられるそれらは、間違いなく魔力が足りていない証拠だった。
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