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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
29・塔の外にて⑩
しおりを挟む僕は小さい。
もう18になるというのにあまり大きくは育たなかった。
言ってしまえばとても小柄だ。
ルナス様と比べると、自分の小ささが身に染みた。
ルナス様だって、決して大柄なわけではないようなのだけれども。
だからこうして、膝の上に抱え上げられると、僕はルナス様の腕の中にすっぽりと納まりきってしまう。
僕にとってはそれが心地よくて堪らなかった。
ああ、ルナス様は本当にかっこいい。
肌の熱さも素敵だし、僕を支えて下さる腕の、なんて力強いことだろうか。
本当に全くヤバすぎる。言葉にならない。
そして優しく慈悲深い。
僕をこんなにも大切にしてくださる。
そう、ルナス様のことを話すと、ユセアナはいつも何だかもの言いたげな顔をするばかりなのだけれど、いったいどんな反論があるというのか、僕にはいつだってわからずに。
ああ、ルナス様、ルナス様。
なんて素敵なんだろう。
どれぐらいそうして、うっとりとルナス様に身を預けきっていたことだろうか。
ルナス様が小さく身じろぐ気配を感じて、僕はそっと顔を上げた。
視界に入ってきたルナス様は、僕のことを見ていては下さらなかった。
だけど僕を抱える腕は力強いままだ。
「ルナス、様……?」
小さく呼びかけると途端、ルナス様が緊張なさったのが伝わってくる。
いったいどうしたというのだろう。僕は小さく首を傾げた。
そんな僕にルナス様がなぜか、うぐっと息を詰める。
いったい何があったのか。
何か思い悩むことでもおありになるのだろうか。
ああ、なるほど、だから少しばかり、塔にも来られなかったのか。
なら、それを、いくら限界だったからと言って押しかけたりなんかして。とても申し訳ないことをしてしまったのではないだろうか。
思って、僕は罪悪感にますます泣けてきてしまった。
ぐずぐず、泣き声が激しくなったのがわかったのだろう、ルナス様がおろおろなさっている。
ますます申し訳ない。だけど止まらない。
「ああ、リュディ……俺はどうすればっ……くそっ」
ルナス様はそんな風に、小さく吐き捨てたかというと、ぎゅっと僕を抱きしめてくれた。
「どうしたの、どうして泣いているんだ、俺が触れているから? 触れて欲しくない? ごめんよ、ごめん……でも、」
ルナス様がそこまで言って息を詰める。
僕はわけがわからない。
僕が泣いている理由。
ルナス様が触れているから。それは確かにあった。
でも触れて欲しくない、なんてそんなことあるはずがない。
それどころか足りない。そう思うぐらいなのに。
ルナス様はどうしてそんなことをおっしゃるの?
僕にはわからなかった。
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