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第1章
1-8・発端。つまり理由⑧
しおりを挟む広間内へ向けての案内の後、ルスフォルのエスコートを受けて入室する。
途端にざわり、集まった視線には値踏みするようなものが含まれていて、どうやら俺を歓迎していない者達もそれなりの数存在しているようだと知った。
おそらくそれは、王家そのものが力を持つことを良しと出来ないような者たちなのだろう。
あるいは後ろ暗いところでもあるのか。
俺が俺であるが故、面白くないものもいるのだろうなとも思った。
多分、俺のことを知っている者もいるのだろうから。
何処の国であっても、上層部など一枚岩ではない。
比較的穏やかでおかしな思想が挟まっていない国など、ナウラティスぐらいだろう。
あそこはよろしくない思考に陥った途端、国にいられなくなるような国なのだから、ある意味特殊だ。
そうでない以上、あらゆる思惑が錯綜しているのは当たり前の話。
さて、彼らが面白くないと思っているのはいったい何なのだろうか。
国王の婚姻か、婚姻相手が俺であることか。それとも、王家そのものについて思う所があるのかもしれない。
ちらと、もちろん、傍に控えてくれている侍従や護衛に視線をやると、彼らは微かに頷いていて、間違っても好意的とは言えない視線をこちらに向けてきている者たちについての確認は彼らに任せてしまうことにする。
後ほどまとめて報告をくれることだろう。
当然促された席は上座だ。なにせ俺を伴っているのはこの国の国王なのだから、当たり前のことと言えただろう。
席まで辿り着き、しかし立ったままのルスフォルに座っていた者も皆立ちあがる。
「皆、よく集まってくれた。隣にいる彼が、この度、婚姻の為にリセデオより迎え入れたリモヌツ公爵令息となる。ここに歓迎の意を示したい」
などと簡単な紹介と挨拶の後、席に着いて始まった食事は当然のことながら気軽なものなどではなく、味がしないような緊張を伴って。俺は終始そつなく、見た目だけでも完璧な貴族令息に見えるように努めた。
隣に座るルスフォルも如才なく、危なげなく食事をこなしていく。
幾つか、出された食事についてなど、ルスフォルと当たり障りのない会話を交わし。それでも、この表向きは俺を歓迎する為に開かれたはずの晩餐は面白いものではなく、苦痛を伴うばかりで、だがこの国の高位貴族たちのそれぞれの意向をある程度であれ、確認できたのは悪くない結果だったのではないかと思う。
ともあれ、これが俺にとってのこの国出の社交の始まりであることだけは確かで。気の抜けない日々の始まりを告げるかのようだった。
5
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