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第1章
1-9・発端。つまり理由⑨
しおりを挟む晩餐が終わると、それなりに遅い時間となっていた。
侍女や侍従たちの手を借りながら寝支度を整えていく。
何人か見慣れないものが混じっていた辺り、ニアディスレ側が用意した人員も混ざっていたらしい。
そこに潜まされた意味に気付かないはずがない。
そもそも、俺が通されたのは王妃の間で、他に寝室などは教えられておらず、当然、そうして何を期待されているのかなど、あからさま過ぎるほど。俺は覚悟を決めなければならないのだろうと苦く顔を歪めることとなった。
「ティーシャ様」
流石に咎められ肩を竦める。
「わかってるよ」
短く言い置いて嘆息する。
俺の返事を良しとした侍女たちは夜にあるまじき念の入りようで俺の全身を磨き上げた。
勿論、化粧などの余計な装飾などはしない。だが、香油を擦り込んだりだとかの手入れはことさら丁寧に施されて、否が応でもこの後のことを意識してしまう。
10年ぶりだ。
そう思った。
10年。そんな機会を俺は断ってきた。
そもそもこうして、誰かと夜に二人きりになる、それ自体があまりに久しぶりで。緊張しないわけがない。
ましてや相手はルスフォルである。
俺の唯一。だが同時に、俺の知っている彼ではない彼。
俺の緊張がわかっているのか、わかっていて構っていないのか、侍女たちは一通り準備を済ませると、部屋を出ていくことにしたようだった。
「それでは、今日はこのままごゆるりとお休みください。控えてはおりますので、お呼び頂ければすぐに参ります。また明日は休息日にあてられておりますのでしっかりとお体をお休めになられますように」
などとあまりにもあからさまなことばかり言われたので、俺の返事はどうしてもおざなりとなってしまう。
「ああ、わかってるよ」
もういいと言わんばかりの俺に、慣れた侍女たちはにっこりと笑うばかり。戸惑った気配は、見慣れない者から。だがきっと彼ら彼女らもすぐに慣れていってしまうのだろう。
扉が閉まる気配の先、一人きりで残されて。俺はどうすればいいのかわからなくなった。
この後。
きっともうじきルスフォルはここに来るのだろう。否、今日はいわば初夜に当たるようだから、来ないはずがない。
たとえその先に何もなくとも。おそらく一晩は共に過ごさなければならない。
当たり前に緊張した。
不具だと言われているようだからきっと何もない。そのはずだと、必死で自分に言い聞かせる。
滑稽なほど、鼓動を高鳴らせていた矢先、ガチャ、ドアの開く音に、俺は思わず勢いよくそちらへと振り返ってしまったのだった。
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