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第1章
1-10・発端。つまり理由⑩
しおりを挟む躊躇いがちに入室してきたルスフォルは非常に気まずそうな顔をしていた。
もうすでに簡素な夜着を身に纏っていて、おそらくは後は寝るだけなのだろう。……俺と同じだ。
すぐ傍には寝台。
否、ここは寝室で、それ以外などないに等しい。
勿論、国王と王妃の寝室なのだ、充分な広さがあり、ソファなども申し訳程度設置されてはいるのだけれど。
むしろ俺がいたのはそこで、ただ所在なく座っていることしか出来ていなかった。寝台にはとてもではないけれども腰掛けられなくて。
「あー、その、なんだ。なんと言えばいいのか……」
ルスフォルの視線が泳いでいる。こちらを見たくないのだろうか。そう思うと、どうしてか胸が痛みを訴える。
今更。今更なのに。
俺はそうして感じた胸の痛みを、感じていないふりをするだけで精一杯だ。それ以外で、いったい何をすればいいのだろうか。
おそらくはきっと、たった一晩。今晩だけ。今晩だけ、やり過ごせば、それで済むはずだった。
だから極端な話、このまま朝まで。こうしていたって別に構いやしないのだ。
寝なければいけないわけでもない。
ここには俺とルスフォルの二人しかいなくて、おそらくは見えない場所に護衛はいるのだろうけれど、そんなものきっと気にしなくてもよくて。
ルスフォルは明確に困ったように頭を掻いている。そうしてややあってから溜め息を吐いた。
その溜め息には、いったいどんな意味があるというのだろう。びくり、思わず反応してしまう。顔には出さないようにと、気を付けていたはずなのに。震える肩までは、堪えきれなかった。
そんな俺の反応に気付かないはずがなかったルスフォルが、弱り切った表情でこちらへと近づいてくる。
「すまない。そんなに緊張しないで欲しいんだが……今日だけでも共に過ごすようにと言われて。君もそうだろう?」
俺は頷いた。ただ。
「すまない、と。謝罪なさるのはおやめになって下さい。いえ、私以外には、可能な限りなさいませんように。王であればこそ、容易に非を認めてはなりません」
一応と苦言を呈しておく。細かいかもしれないが、こういった注意もおそらくは俺の仕事なのだろうから。
俺に求められているのは、こういった意味も含めて、ルスフォルを支えることなのだ。
「あ、ああ。気を付けるようにする」
閨にはきっと相応しくないだろう俺の苦言に、ルスフォルはひとまずとばかり、おそらくは反射的に頷いていた。
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