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第1章
1-17・以来。しかし未だ③
しおりを挟む亡き正妃との間では、一度として閨を成功させることの出来なかったルスフォルが俺となら可能かもしれないというのは、もしかして誰もが思っていたことだとでも言うのだろうか。
それを想定したとしか思えない、翌日の休養日だったのだけれど、否、もしかたらただの慣習なのかもしれなかった。
いずれにせよ、実際には休養日など、一日では到底足りなくなってしまったのだけれど。
何故ならもう俺のいる寝所には来ないのではないかと思われたルスフォルはその夜も戸惑いがちに訪れて。そして変わらずぎこちなく、俺を求めてきたのだった。
そうされると俺は当然、受け入れるしかない。どれだけ体がいまだ休息を求めていても。昨夜の傷がまだ癒えていなくとも。否、結局は自分で治癒魔術を使ったので、傷そのものは治せはしたのだけれど。問題はそういうことではないと思う。
ルスフォルは躊躇って、謝って、臆して。だけど自分で自分が制御できないようだった。
『あ、ああ、ああ、すまない、すまない、でも……』
そんな風に申し訳なさそうに、だけど苦しそうにされると、俺は受け入れずにはいられなかった。
なにせかつて愛した相手なのだ。今、その時の記憶を持っているのが俺の方だけなのだとしても、そんな相手が苦しみ続ける姿なんて、堪えられるはずがない。
しかもこと、そういうことであるならば、俺が我慢すれば済む話であることもまた分かっていて。
『陛下。いいのです。私は構いません。何故ならそれは私の役目なのですから。貴方は私に好きに触れてよいのです』
そう宥めて許容して、俺の方から導きさえした。
相変わらず何もかも足りず、またしても俺の腹の中は傷ついて、これではルスフォルとの閨は血に塗れるものなのだとでもなってしまいそうだとは思っても、昨日の今日でいきなり俺がどうにかできるようになっているはずもなく。それはルスフォルもまた同じで。
そして結局またしても明け方近くまで揺さぶられ続けて、俺は正直流石に加減はしてほしいと思わずにはいられなかった。
なにせ今の俺は正妃、つまり王妃で政務があるのだ。
王宮に着いた日の翌日こそ休養日に充てられていたけれど、それ以降はそんな予定などなく、夜がどれほどどのような状況で、俺の体調がどうであったとしても、予定が詰まっていると言って差し支えない状態であることは変わらない。
当然、翌々日の予定も、王太子と会うことだけでなどなかった。
朝も夜も時間が許す限り求められ、睦み合い、どれほど体に負担がかかっても、何も予定などなく休んでいればよかった10年前とは違う。
今では俺にも公務や政務が待っている以上、勘弁してほしいところだったのだけれど、せっかく閨を成功させることになったのだから、ルスフォルが当たり前に閨をこなせるようになるまで、今しばらくはそのまま、ルスフォルの相手をし続けて欲しいとやんわり、しかし断固として要請してきたのは、10年前からちっとも変わらない顔で俺を見てくる女官長で、俺はうんざりしながら頷かざるを得なかった。
つまり拒絶するなということだ。
どれだけ体が辛くなっても、俺はこれからもルスフォルを受け入れ続けなければならない。
正しくそれが俺へと新たに課せられた義務なのだろう。
わからないではない。
加えて、婚姻式が終わり、落ち着いたならすぐにでも子供をとも言われた。
後継となり得る存在が、王太子一人だけである今の状況は、誰にとっても不安なのだろう。
特に前国王と王妃、当時の王太子が急に揃って亡くなっているのだから余計に。
子供は1人では足りないのだ。
仕方がない話ではあった。
むしろ不具ではないかとされていたルスフォルが閨を成功させることが出来て、周囲は喜ばしいとまで思っている。
何より、すまなさそうに臆すばかりのルスフォルに、何を言えるはずもない。
否、少し想像しただけでも、俺は今後もそんなこと、自分でも伝えられるとは全く思えなかった。
ともあれそんな風に、今後を暗澹たる気持ちで予想しながら、俺はこれからついに王太子と対面する。
用意されたその場には、ルスフォルも立ち会うことになっていた。
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