そしてまた愛と成る

愛早さくら

文字の大きさ
19 / 136
第1章

1-17・以来。しかし未だ③

しおりを挟む

 亡き正妃との間では、一度として閨を成功させることの出来なかったルスフォルが俺となら可能かもしれないというのは、もしかして誰もが思っていたことだとでも言うのだろうか。
 それを想定したとしか思えない、翌日の休養日だったのだけれど、否、もしかたらただの慣習なのかもしれなかった。
 いずれにせよ、実際には休養日など、一日では到底足りなくなってしまったのだけれど。
 何故ならもう俺のいる寝所には来ないのではないかと思われたルスフォルはその夜も戸惑いがちに訪れて。そして変わらずぎこちなく、俺を求めてきたのだった。
 そうされると俺は当然、受け入れるしかない。どれだけ体がいまだ休息を求めていても。昨夜の傷がまだ癒えていなくとも。否、結局は自分で治癒魔術を使ったので、傷そのものは治せはしたのだけれど。問題はそういうことではないと思う。
 ルスフォルは躊躇って、謝って、臆して。だけど自分で自分が制御できないようだった。

『あ、ああ、ああ、すまない、すまない、でも……』

 そんな風に申し訳なさそうに、だけど苦しそうにされると、俺は受け入れずにはいられなかった。
 なにせかつて愛した相手なのだ。今、その時の記憶を持っているのが俺の方だけなのだとしても、そんな相手が苦しみ続ける姿なんて、堪えられるはずがない。
 しかもこと、そういうことであるならば、俺が我慢すれば済む話であることもまた分かっていて。

『陛下。いいのです。私は構いません。何故ならそれは私の役目なのですから。貴方は私に好きに触れてよいのです』

 そう宥めて許容して、俺の方から導きさえした。
 相変わらず何もかも足りず、またしても俺の腹の中は傷ついて、これではルスフォルとの閨は血に塗れるものなのだとでもなってしまいそうだとは思っても、昨日の今日でいきなり俺がどうにかできるようになっているはずもなく。それはルスフォルもまた同じで。
 そして結局またしても明け方近くまで揺さぶられ続けて、俺は正直流石に加減はしてほしいと思わずにはいられなかった。
 なにせ今の俺は正妃、つまり王妃で政務があるのだ。
 王宮に着いた日の翌日こそ休養日に充てられていたけれど、それ以降はそんな予定などなく、夜がどれほどどのような状況で、俺の体調がどうであったとしても、予定が詰まっていると言って差し支えない状態であることは変わらない。
 当然、翌々日の予定も、王太子と会うことだけでなどなかった。
 朝も夜も時間が許す限り求められ、睦み合い、どれほど体に負担がかかっても、何も予定などなく休んでいればよかった10年前とは違う。
 今では俺にも公務や政務が待っている以上、勘弁してほしいところだったのだけれど、せっかく閨を成功させることになったのだから、ルスフォルが当たり前に閨をこなせるようになるまで、今しばらくはそのまま、ルスフォルの相手をし続けて欲しいとやんわり、しかし断固として要請してきたのは、10年前からちっとも変わらない顔で俺を見てくる女官長で、俺はうんざりしながら頷かざるを得なかった。
 つまり拒絶するなということだ。
 どれだけ体が辛くなっても、俺はこれからもルスフォルを受け入れ続けなければならない。
 正しくそれが俺へと新たに課せられた義務なのだろう。
 わからないではない。
 加えて、婚姻式が終わり、落ち着いたならすぐにでも子供をとも言われた。
 後継となり得る存在が、王太子一人だけである今の状況は、誰にとっても不安なのだろう。
 特に前国王と王妃、当時の王太子が急に揃って亡くなっているのだから余計に。
 子供は1人では足りないのだ。
 仕方がない話ではあった。
 むしろ不具ではないかとされていたルスフォルが閨を成功させることが出来て、周囲は喜ばしいとまで思っている。
 何より、すまなさそうに臆すばかりのルスフォルに、何を言えるはずもない。
 否、少し想像しただけでも、俺は今後もそんなこと、自分でも伝えられるとは全く思えなかった。
 ともあれそんな風に、今後を暗澹たる気持ちで予想しながら、俺はこれからついに王太子と対面する。
 用意されたその場には、ルスフォルも立ち会うことになっていた。
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

この手に抱くぬくもりは

R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。 子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中―― 彼にとって、初めての居場所だった。 過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる

さち喜
BL
優等生・聖利(ひじり)と校則破りの常習犯・來(らい)は、ともに優秀なアルファ。 ライバルとして競い合ってきたふたりは、高等部寮でルームメイトに。 來を意識してしまう聖利は、あるとき自分の身体に妙な変化を感じる。 すると、來が獣のように押し倒してきて……。 「その顔、煽ってんだろ? 俺を」 アルファからオメガに転化してしまった聖利と、過保護に執着する來の焦れ恋物語。 ※性描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※2021年に他サイトで連載した作品です。ラストに番外編を加筆予定です。 ☆登場人物☆ 楠見野聖利(くすみのひじり) 高校一年、175センチ、黒髪の美少年アルファ。 中等部から学年トップの秀才。 來に好意があるが、叶わぬ気持ちだと諦めている。 ある日、バース性が転化しアルファからオメガになってしまう。 海瀬來(かいせらい) 高校一年、185センチ、端正な顔立ちのアルファ。 聖利のライバルで、身体能力は聖利より上。 海瀬グループの御曹司。さらに成績優秀なため、多少素行が悪くても教師も生徒も手出しできない。 聖利のオメガ転化を前にして自身を抑えきれず……。

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

後天性オメガは未亡人アルファの光

おもちDX
BL
ベータのミルファは侯爵家の未亡人に婚姻を申し出、駄目元だったのに受けてもらえた。オメガの奥さんがやってくる!と期待していたのに、いざやってきたのはアルファの逞しい男性、ルシアーノだった!? 大きな秘密を抱えるルシアーノと惹かれ合い、すれ違う。ミルファの体にも変化が訪れ、二次性が変わってしまった。ままならない体を抱え、どうしてもルシアーノのことを忘れられないミルファは、消えた彼を追いかける――! 後天性オメガをテーマにしたじれもだオメガバース。独自の設定です。 アルファ×ベータ(後天性オメガ)

処理中です...