31 / 136
第1章
1-29・以来。しかし未だ⑮
しおりを挟む痛くて苦しい。気持ちよさなんてどこにもない。
10年前は違った。それは当たり前のことなのだろうけれども。
ルスフォルが俺に初めて触れてきたのは俺が12歳、ルスフォルが16歳の時。
その時のルスフォルはおそらくは家出をする前に王宮でしっかりと最低限以上の閨教育も受けていて、少なくとも知識があった。
それは、平民として育って、ごくごく一般的なことを初等学校で習っただけだった俺よりもよほど正確なものだったことだろう。
加えて当時の俺たちの立場は冒険者だ。いいことも悪いことも教えてくれる大人は周囲に事欠かず、時折、誰かに聞いただとかいうこともあったから、助言には困らなかったことだろうと思う。
好きな相手と体を交わすにはどうすればいいのかだとかいうことを、16歳のルスフォルはちゃんと知っていたのだ。
だから俺はルーシーとの触れ合いで、痛いだなんて思ったことはなかった。
いつも気持ちよくて堪らなくて。頭がぼんやりしている間に、もっと更に気持ちいいことをされるばかり。
普段誰かに触られたりしない場所を触られて、剰えそんな狭いばかりの場所を解して、大きくて硬いルスフォル自身を受け入れる。
そしてたくさんたくさん、お腹の中をかき回された。
そんな全部がただただ気持ちよく、俺はルスフォルとの触れ合いが好きだった。
だけど。
今もきっと、同じことをしているはずなんだ。なのにちっとも気持ちよくないし、痛いばかり。俺は全部ルスフォルに任せるばかりだったからどうすればいいのかわからないし、今のルスフォルは、どう考えても16歳だったルスフォルよりも知識が足りていないようにしか思えなかった。
それでどうしてひどくならずに済むというのだろう。
痛くて、苦しくて。だけど俺のお腹の中は、ルスフォルの魔力で満ちた。
それだけは10年前と同じで、俺はそうしてお腹の中、たくさん注がれたルスフォルの魔力が、どうしてだろう、今もやっぱり愛しく思っている。
大切で、得難く、抱え込んでおきたい。
きっといつかちゃんと子供にしてあげたい。
そんな風に思ってしまうのが、不思議で仕方なかった。
それはつまり、義父の指摘通り、俺の心がルスフォルにあるままだからなのだろう。
それはそれとして、それから俺は、王妃としての公務、政務の傍ら、可能な限り王太子との時間を持つように心がけた。
ルスフォルとはもういい、ほとんど毎日夜に通ってくるのだから、それで充分だとしか思えず、苦痛なばかりの時間が毎晩続いているのだが、時折少しばかり会話を交わしたりすることもあり、徐々に近づけていっているのではないかと思う。
だから俺が意識しなければならないのは王太子との時間の方だと、そう考えたのである。
とは言っても王太子の態度はすこぶる悪く、無視されるのなんて当たり前、差し出した手は振り払われるし、俺が何を言っても言わなくても、苦い顔を崩さない。
まるで懐かない猫のようだった。でも。
近くにいる。顔が見れる。言葉が交わせる。
俺はそれだけで嬉しかった。
だってずっと、この10年間。ひと目見ることさえできなかったのだ。
それを思えば、どれだけ邪険にされたって、今の方がずっといい。
勿論、俺は王太子の良くない態度は逐一注意したし、無下にされて胸が痛まなかったわけではない。
でも。
例えば俺の手を振り払ったりした時、王太子はほとんど必ず、一瞬、自分が、なんだか物凄くひどいことをしてしまったと言わんばかりの、後悔がよぎっているかのような顔を見せるのだ。
そんな様子を目にするだけで、この子はきっと、人に対して、こんな風、よくない態度を取るのが、本当は得意ではないのだろうな、そう感じられた。
きっと真っ直ぐに育っている。
それがわかるだけで、世界の全てに感謝したい気持ちになった。
俺があまりに執拗に王太子に顔を見せるせいか、懐かない猫のような態度が少しずつ、控えめになっていっているようにも思えて。俺は焦らずにいよう、そう心の中で唱えながら、10年ぶりの我が子との触れ合いを止めようなんて思わず、可能な限り続けていった。
俺に対する王太子の態度は、それでもやっぱり反抗的なままだったのだけれど。きっといつかは。そう思えたのである。
そうして三ヶ月。
俺はようやくルスフォルとの婚姻式を向かえたのだった。
5
あなたにおすすめの小説
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
この手に抱くぬくもりは
R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。
子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中――
彼にとって、初めての居場所だった。
過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる
さち喜
BL
優等生・聖利(ひじり)と校則破りの常習犯・來(らい)は、ともに優秀なアルファ。
ライバルとして競い合ってきたふたりは、高等部寮でルームメイトに。
來を意識してしまう聖利は、あるとき自分の身体に妙な変化を感じる。
すると、來が獣のように押し倒してきて……。
「その顔、煽ってんだろ? 俺を」
アルファからオメガに転化してしまった聖利と、過保護に執着する來の焦れ恋物語。
※性描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※2021年に他サイトで連載した作品です。ラストに番外編を加筆予定です。
☆登場人物☆
楠見野聖利(くすみのひじり)
高校一年、175センチ、黒髪の美少年アルファ。
中等部から学年トップの秀才。
來に好意があるが、叶わぬ気持ちだと諦めている。
ある日、バース性が転化しアルファからオメガになってしまう。
海瀬來(かいせらい)
高校一年、185センチ、端正な顔立ちのアルファ。
聖利のライバルで、身体能力は聖利より上。
海瀬グループの御曹司。さらに成績優秀なため、多少素行が悪くても教師も生徒も手出しできない。
聖利のオメガ転化を前にして自身を抑えきれず……。
ちゃんちゃら
三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…?
夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。
ビター色の強いオメガバースラブロマンス。
後天性オメガは未亡人アルファの光
おもちDX
BL
ベータのミルファは侯爵家の未亡人に婚姻を申し出、駄目元だったのに受けてもらえた。オメガの奥さんがやってくる!と期待していたのに、いざやってきたのはアルファの逞しい男性、ルシアーノだった!?
大きな秘密を抱えるルシアーノと惹かれ合い、すれ違う。ミルファの体にも変化が訪れ、二次性が変わってしまった。ままならない体を抱え、どうしてもルシアーノのことを忘れられないミルファは、消えた彼を追いかける――!
後天性オメガをテーマにしたじれもだオメガバース。独自の設定です。
アルファ×ベータ(後天性オメガ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる