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第1章
1-30・過日。されど君は①(ルスフォル視点)
しおりを挟む俺がこの世界で初めて気が付いた時、近くにいたのはやたらとキレイな顔をした少年だった。
「ルーシー?」
多分、朝だったと思う。
窓から射し込む朝の光らしき眩しいそれに照らされ、少年はきらきらしていて、輪郭が透けるよう。
なんて美しいんだろう。
俺が感じたことはそれだった。
零れ落ちそうなほど大きな目は、澄んだ深い青。
染めた様子のない艶やかな茶色い髪は光に透けた部分は金色に輝いて見えた。
くっきりとした二重の目尻は少しばかり上がり気味だ。小さな鼻はちょうどいい高さで、やはり小さめの唇もつやつやふっくらしていて、どうしてか吸い込まれそうなほどの色気があった。まだ幼い、俺よりいくつか年下に見えるから中学生ぐらいだろうか。でも、子供というには雰囲気が艶めきすぎているようにも思う。
生まれて初めて見たと思うほどの美しさ。
圧倒的美というのはこのことか。そんなことまで感じてしまう。
そんな少年が誰かの名を呼びながら、きょとりと首を傾げ、不思議そうにこちらを見ていた。
パチリ、瞬きする。
わけが、わからない。
ここは、いったい何だ。
ずっと少年にだけ目を奪されていたのだけれど、数秒経つと流石に周囲を見回せるようにはなってきて、それでもともすれば、少年にばかり目が行ってしまうのだけれど、とりあえず自分が今いるらしいこの場所に全く見覚えがないことだけは確か。
そもそも、今、自分はいったい何をしていたのだろうか。
思い出せない、わからない。
俺は高校生だ。そのはず。だが、今日は平日、それとも休日だっただろうか。学校か、家か、バイト先か、塾か。何処にいたのか。
学校? 家? バイト先? 塾? 俺は日本で生まれ育って、日本の……どこ? 両親と、兄妹……それはいったい誰だったのか。
何もわからない。
俺は誰、俺は何。ここは。
そして、間違いなく全く見覚えのないこの非常に美しい少年は。
「……誰?」
わけのわからない現状に対する不快感に、ぎゅっと険しく眉根を寄せて。ぼそ、呟いた俺に少年がみるみる目を見開いていく。
「ルーシー? ちょ、どうしたの?! ねぇ!」
少年が俺の肩を掴んで揺さぶってくる。
美しすぎて眩しい。なんてキレイなんだ、見惚れてしまいそう。でもそんな場合じゃない、そもそもさっきから呼んでいるその名前らしきもの。
「ルーシーって……誰だよ」
不快だと思った。
それは今のこの状況に対してであって、また同時に少年が誰だかもわからない何かの名を一生懸命に呼んでいるから。
何故そんなわけがわからない何かを呼んでいるのか、それが不快で。
だから自然、目つきは険しくなってしまった。
少年の顔が泣きそうに歪む。
ああ、なんてことだろう、崩れてもこんなにも美しい。完璧な美というものは表情などに左右されないものなのだろう。
でも。
泣かないで。
少年の悲しそうな表情なんて見たくなかった。少年には、むしろ。
なのに俺は何もできず、わけがわからず、そのうちに戦慄いた少年の唇が大きく開く。
「ぁ、ぁああっ、誰かっ……誰か来てっ! ルーシーがっ!!」
そんな叫び声とほとんど同時、バタバタと忙しなくなった周囲の気配。
そのどさくさのうちに遠ざかる少年。最後まで少年はひどく悲しそうな、何か大きなショックを受けたような顔をしたままで、ああ、どうして。俺は、君に。
そうして俺は、それっきり。
その少年に、もう、会うことはなかったのである。
なお、その時、俺と少年は共に裸体で、同じ寝台にいただとかいうことは、後から思い出した話。
それがどうしてだったのかを説明されたのもやはり随分と後になってからで。
その時にはもう少年は、俺の側からいなくなっていたのだった。
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