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第1章
1-35・過日。されど君は⑥(ルスフォル視点)
しおりを挟む彼女は、彼女自身の宣言の通り、いろいろなことを俺に教えてくれた。
いいことも悪いことも、本来なら偽らなければならないのではないかと思えるようなことまで、全て、隠さずに。
あの当時、俺に何かを教えてくれる相手は、彼女だけだったと言っていい。
おそらく少し接すればわかるとおりに、誠実な女性ではあったのだろうとは思う。
正直と言えばいいのか、隠し事や企みごととは無縁そうに見えた。
勿論、実際の所がどうだったのかなんてわからない。
どこか屹然とした態度を見せつつ、常に穏やかで、何かに苛立ったりだとかする姿を見せることはなく、他者の話にもよく耳を傾けていた。
俺に対してはどちらかと言わずとも彼女からの一方的な指示や指摘が多かったのは、状況がそれを許さなかったからなのだろう。
その証拠にしばらく経って少しばかり周囲が落ち着いてきてからは、俺の言葉にも可能な範囲で耳を傾けるようになってくれたのだからきっと、その印象に間違いはない。
彼女は、別に俺へと好意を抱いているというわけではないようだった。
俺と夫婦となる。
そこには俺の意思のみならず、彼女の希望さえ介在してはいないのだ。
かと言って、俺を嫌っているだとか疎んじているだとかいうわけではなく、おそらく彼女が何よりも重要視していたのは、この国そのものだったのではないかと思う。
王家が求心力を失い揺らぐこと。
それにより国そのものが不安定となり、結果、そこで暮らす国民にまでも影響を与えるかもしれない。
彼女が恐れていたのは、きっとそれだ。
それは彼女の実家である侯爵家、父親のガルディレオ侯爵の意向も同じだったようで、とにかく俺に王としての責務を立派に熟し、王家を盤石なものとして欲しいようだった。
そのためには俺や彼女の意思や感情など必要ないのだと言わんばかり。
それは今になってさえ、俺には終ぞ理解できないまま。ただ、彼女や彼らには彼らなりの正義や理想のようなものがあったのではないかとは思っている。
そしてそれを目指すためには。俺自身の言葉など、取るに足りないものだったのだろう。
俺には王としての才覚などなく、知識も覚悟も何もなく。それどころか、俺としてはただの日本人の高校生だとしか思えず、全てに戸惑い、馴染めず。
婚姻を結んだ彼女とは、当然子供をと望まれているようだったのだけれども、夜、同じ部屋、同じ寝台に彼女と上がって。だけど一度として、俺の下肢が、反応することはなかった。
当然子供など、出来るはずがない。
彼女じゃなければいいのかと、他の者とも試したのだけれど、結果は同じ。
俺は不具なのだという噂が流れだす始末だった。
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