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第1章
1-36・過日。されど君は⑦(ルスフォル視点)
しおりを挟む幸いと言っていいのだろうか。俺には実はどうやら子供が一人いたらしい。
しかも、なんと子供を産んだ母親というのが、あの、初めて目覚めた時に側にいた、非常に美しい少年だったのだという。
この世界では子供を生むのは女性とは限らず、男女の別などなく可能であるとのこと、俺はどうやらあの年端も行かないような少年を孕ませ、子供まで生ませていたということであるらしかった。
そういえばあの時。俺と少年は共に裸で、どうやら同じ寝台で寝ていたようだったなということを今更思い出したのはこの時。
なら、その少年は今どこにと訊ねると、もう疾うにこの王宮を後にしてしまっているとのこと。
彼女がそのように、少年へと薦めたということだった。
彼女はあの少年へ非常に同情的な様子で。
「あのような幼さで、こんな王宮に捕らわれるなど、忍びなくてならず……ですから、わたくしは、あの子は解放されるべきだと、そう思ったのです」
彼をこの王宮へと留め置いていたのは以前の俺で、それについては憤りさえ見せるほど。だから、少年を王宮から逃がすことはどうやら彼女としては、善意であったようで。
確かに、と思い返す。
泣きそうに、辛そうに歪んだ顔。
あんな顔を、俺の側に置いておいたからさせてしまったということなのだろうか。
ならば彼女の言うとおり、あの子はここを去るべきだったのかもしれない。
俺はそんな風にも思うようになっていた。
ずきり、どうしてか胸が痛んで、だが、理由などわからないまま、ただきっともう二度と、俺はあの少年と会うことはないのだろうことだけは確か。その事実は俺に、今度は虚無を、呼び込むかのようだった。
ともあれ、いずれにせよ子供は一人いるので、庶子ではあるが、その子を後継として育てるしかないという話だった。
その時点ですでに数ヶ月が経過していて。
長く、存在さえ知らず、会いもしなかった子供。
彼女は幾度か、様子を見に子供の元へと訪れてはいたらしい。
以前は毎晩のように父親として接していたらしい、だけど目覚めて以降、実に数か月ぶりに、俺の感覚としては初めて会うこととなったその子供は、金の髪をしていて、自分と似ているとは思えず、むしろ何処かあの少年にこそ似ているような気がした。
目の色は俺と同じなのだと言われたが実感など沸かず、我が子だなんて思えるはずがない。
子供は、俺と数か月ぶりに会う上、以前とは違う俺の様子が分かったのだろう、戸惑うばかりで近づいてきさえせず。
そのまま。一応その後、最低限には接してきたのだが、それだけ。今に至るまで疎遠である。
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