そしてまた愛と成る

愛早さくら

文字の大きさ
45 / 136
第1章

1-43・未明。だから次へ①

しおりを挟む

 婚姻式の前にも、しなければならないことはたくさんある。
 否、たった数日、この王宮で忙しく立ち働くうちに、俺が驚いたことは数多くあった。
 そのうちの一つが慢性的な人手不足である。
 俺がリセデオやナウラティスから侍女や侍従、護衛をそれなりの数連れてきたのは、ただ単純に義父が心配して過剰に連れて来させたというだけの話だ。それぞれ20人ずつほどもいて、俺はそもそも受け入れてはもらえないのではないかと不安に思ったのだが、何のことはない、例えば王族が他国へ輿入れする際の追従の数としては、特に珍しいことではないのだという。
 俺は血筋はともかく、立場としては単なる公爵令息、あるいは次期公爵でしかない。だが、父曰く、王族の代わりに嫁ぐのだし、公爵家ということは準王族とも見なされ、また、血筋から言っても特に不自然であったりはしないとのこと、むしろ少ないほどだと豪語された。
 同じことを伯父に聞いたら肩を竦め、

『向こうが受け入れるって言うんなら、別に気にしなくていいんじゃない? 君とあの国じゃ立場が違い過ぎるしねぇ……無下にもしないと思うよ。と、言うか、安心とか安全って意味では、君のお父君が言う通り少ないぐらいじゃないかなぁ……なんたってあそこは……』

 と言っていて、半ば呆れながらも、しかし反面、

『あ、追加は任せて! 何人かとっておきを見繕っておくから! 少なくとも、君は安全面に関しては心配しなくていい』

 などと、気軽に請け負って、嬉々として追加の人員を手配していた。
 実際、今回新たにナウラティスから来てくれた彼ら彼女らが非常に好ましい人物達であったのは確かである。
 そもそも、俺はよく把握していなかったのだが、リモヌツ公爵邸で過ごしていた頃から、傍にいてくれた侍女や侍従、護衛の何人かは、伯父がナウラティスから送ってきてくれていた人員であったらしい。
 とは言え、リセデオの首都にはポータルがある。
 ポータルとは、国家間移動を可能とする転移施設だ。
 ポータル間であれば、距離など関係なく一瞬で行き来できる。問題点があるとすれば、発動には多大な魔力が必要となり、基本的に魔力の調達は、個々人がそれぞれ行わなければならないこと。
 それでも、リセデオからナウラティスなら、帰ろうと思えば一瞬で帰れた。
 しかし、今回俺が輿入れすることになったニアディスレにポータルはない。この辺りでは鉄道技術等も発達していないことから、移動はほとんど馬車に限られ、またそれなりの日数が必要となった。
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる

さち喜
BL
優等生・聖利(ひじり)と校則破りの常習犯・來(らい)は、ともに優秀なアルファ。 ライバルとして競い合ってきたふたりは、高等部寮でルームメイトに。 來を意識してしまう聖利は、あるとき自分の身体に妙な変化を感じる。 すると、來が獣のように押し倒してきて……。 「その顔、煽ってんだろ? 俺を」 アルファからオメガに転化してしまった聖利と、過保護に執着する來の焦れ恋物語。 ※性描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※2021年に他サイトで連載した作品です。ラストに番外編を加筆予定です。 ☆登場人物☆ 楠見野聖利(くすみのひじり) 高校一年、175センチ、黒髪の美少年アルファ。 中等部から学年トップの秀才。 來に好意があるが、叶わぬ気持ちだと諦めている。 ある日、バース性が転化しアルファからオメガになってしまう。 海瀬來(かいせらい) 高校一年、185センチ、端正な顔立ちのアルファ。 聖利のライバルで、身体能力は聖利より上。 海瀬グループの御曹司。さらに成績優秀なため、多少素行が悪くても教師も生徒も手出しできない。 聖利のオメガ転化を前にして自身を抑えきれず……。

この手に抱くぬくもりは

R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。 子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中―― 彼にとって、初めての居場所だった。 過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

後天性オメガは未亡人アルファの光

おもちDX
BL
ベータのミルファは侯爵家の未亡人に婚姻を申し出、駄目元だったのに受けてもらえた。オメガの奥さんがやってくる!と期待していたのに、いざやってきたのはアルファの逞しい男性、ルシアーノだった!? 大きな秘密を抱えるルシアーノと惹かれ合い、すれ違う。ミルファの体にも変化が訪れ、二次性が変わってしまった。ままならない体を抱え、どうしてもルシアーノのことを忘れられないミルファは、消えた彼を追いかける――! 後天性オメガをテーマにしたじれもだオメガバース。独自の設定です。 アルファ×ベータ(後天性オメガ)

処理中です...