そしてまた愛と成る

愛早さくら

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第1章

1-52・未明。だから次へ⑩

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 宰相が口にしているのは全て事実だ。それはきっと本当に間違いない。
 俺が連れてきた侍女や侍従、護衛達は本当に皆優秀で、この王宮の現状は、すでに彼らにより精査されていた。
 その調査からも、宰相の言葉とは相違するところがない。宰相が時間を取るのにこれほど手間取ったのも、単純にあまりに忙しすぎるせい。
 なら、信頼でなければ、なんなのか。俺はもう多分、答えがわかっている。

「貴方は私を信頼しているわけではございませんよね」

 ゆるり、本質を告げても宰相は揺らがず頷くばかり。

「やはり貴方は聡明ですね。今思うと10年前からきっとそうだった。その存在以外で、貴方が我々を煩わせたことなど一度もなかった。貴方はご自身の立場やこの王宮の状況を十二分に理解していた。それは貴方の聡明さ故だったのでしょう」
「……買いかぶりすぎです。かつての私は、自分自身の立場はともかく、この王宮の状況など、何一つ知りはしなかった」
「いいえ、理解なさっていらしたはずです。……もしかしたらご自覚でなかったのかもしれませんが。だからこそ貴方はここを去られた。我々に何一つとして求めることなどなく。我々がそれに応えられないだろうことを知っていた」

 宰相の言葉には、少し語弊があると思った。確かに当時の俺は、自分が何かを求めて、それが叶えられないだろうことを知っていた。だがそれは、状況を正しく把握できていたからではなく、自分がそんな立場にないことを理解していたからに過ぎない。
 俺がこの王宮ではただの無価値な存在となったのだと。それを知っていただけなのだ。そんな存在の希望など、何が通るというのだろう。

「信頼ではない。それも正しい。10年前のことと、今の貴方のお立場と。全てを踏まえ、我々には貴方を妨げられない。もし、例えば貴方がこの国の崩壊を望んでいたとして。我々はそれに抗う資格もすべも、何も持ってはいないのです」
「あなた方は……この国の存続・・をこそ、何よりも望んでいるのだと把握しておりますが」

 だからこそ他国にまで王妃をと打診してきたはずだ。それら全ては国を守るため。

「間違いございません。我々はそのために走り続けてきた。ですが限界がございます。そしてその限界は、もはやとっくに超えている。何より王妃殿下。貴方はきっと悪いようにはなさらない」
「それこそ買い被りです」

 俺が例えば10年前のことを。恨んでいたりしたら、この人はどうするつもりなのだろうか。
 復讐を試みようとしているだとか、そんなことは考えなかったのか。
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