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第1章
1-60・転変。および希求②
しおりを挟む悔しい、とは思わなかった。むしろありがたい、それに尽きる。もっとも。
『……君は少し頑張りすぎだねぇ……一度休んだ方がいい』
などと言われたかと思うと、途端意識が遠ざかり、つまり強制的に摂らされたらしい深い眠りには、物申したい気分にはなったのだけれども。少しばかり、強引すぎるのではないかと思えたので。
ただ、彼らが王宮に着いてから夕食まで。数時間しっかり眠った所為だろうか、起きるとあれほどまで常に体に纏わりついていた疲労が軽減されていた。
目が覚めた時に、傍についていてくれたのはヴィーフェ様だ。
「起きた? 僕ら二人とも医療系魔術は専門じゃないから、ちょっと強引な手段になったけど……君に休息が必要だったのは間違いないよ」
変わらない表情と乏しい抑揚。だが、不思議と聞こえてくる言葉を冷たいとは思わない。
ああ、そういえば二人、似た髪色と似た顔つきだけれども、瞳の色は違うのだな、そう思った。
ヴィーフェ様の目は琥珀だ。伯父は鮮やかな紫色だったと記憶しているので、こちらも、伯父の伴侶から引き継いだのかもしれない。髪が少し緑がかって見えるのもきっと同じ人物からなのだろう。
ちなみにラーヴィ様の瞳は青。俺自身のそれを、もっと更に濃くしたような色味である。
ヴィーフェ様が、目が覚めて驚いて、反射的に起こした上半身を支える手助けをしてくれる。
こちらもまた、手慣れている。そう感じた。医療系魔術は専門じゃないとのことだが、近くにこんな風に世話を焼かなければならない人物が存在しているのかもしれない。それはヴィーフェ様の大切な人なのだろうか。
否、こんなこと、ただの邪推だ。
「僕のことが気になるの?」
知らずもの問いたげな雰囲気を出してしまっていたのだろう。首を傾げられたので小さく苦笑した。
「気にならないと言えば、嘘でしょう」
なにせ今日が初対面。だが、どこか気が許せるような気分となるのは、血のなせる業なのだろうか。それとも、俺を、きっと全く知らないだろう人物だからなのか。否、伯父からある程度聞いているのだろうから、全く知らないということはないか。
「気になることがあるなら、聞いてくれていいよ。可能な限り、隠さない」
それはきっと、ヴィーフェ様の誠実さだ。俺は小さく噴き出した。少しだけ気持ちが軽くなっている。頼ってもいい、そう思えたからだろうか。
もっとも、ナウラティスの王族を前に、いったい何を誤魔化せるというのだろう、そうも思うのだけれども。
「大したことではありません。ただ、手慣れてらっしゃるな、と。どなたかこんな風に、世話を焼かれる方が近くに?」
先程の疑問をそのまま口に出した。いかに血縁者とは言え、初対面の人相手に、不躾ではないか、思ったのだけれど、ヴィーフェ様は気を悪くした風でもなく、軽く頷く。
「ああ、リーファがね。あの子、いつまでも頼りないから。あんまりペーリュがリーファのことは、他に触らせないんだけど、母様と僕は多分、特別。下手に女官や侍女に任せるより、僕らの方がまだ妥協しやすいらしいよ」
それでよく駆り出されるのだとヴィーフェ様が言う。
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