そしてまた愛と成る

愛早さくら

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第1章

1-61・転変。および希求③

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 ペーリュとリーファ。それは勘違いでなければ、ナウラティスの現皇帝と皇后陛下の呼び名のはずだ。つまりヴィーフェ様は彼らに非常に近しいお立場にいらっしゃるのだろう。

「そのような方と重ねられるなど……恐れ多いですよ」

 思わずとそう口にすれば、きょとんと不思議そうな顔。

「なんで?」
「なんでって……」
「リーファは君の叔父だよ? 混合しちゃうのもある意味では仕方ないよね。特に君はよく似てる。顔はね、リオル様のお子様だと、どうしてもリオル様に似る傾向があるんだ。そんな中で、君ほどそっくりな子たちってそれほど多くはないんだけど。君はほとんど同じ顔に見えるよ。勿論、雰囲気が全然違うからリオル様となんて混合しようがないけど。むしろ君はリーファとの方が似てるね。だけどリーファより君の方が危なっかしくて心配になる。君、これまで相当無理してたでしょ。よく倒れなかったなって思うよ」

 言いながらヴィーフェ様はやはり慣れた手つきで俺の頭を何度か撫でた。
 思わず泣きたい気持ちになる。
 ああ、こうして誰かに頭を撫でられたことなどいつぶりだろうか。いや、義父はよく俺を子ども扱いして来るので、頭だって撫でられまくったのだが。そんな義父ともひと月以上会っていない。
 もしかして俺は寂しかったのか。
 思わず熱くなった目元に、俺はそんなことを自覚せずにはいられなかった。
 ついに泣き出した俺に、ヴィーフェ様は過剰な反応を示したりなどしなかった。
 ただ、静かに見守ってくれている。でも。

「夜も……そんなにいっぱいお腹に魔力抱えて。どう見ても過剰じゃない? まだ子供にもしてないのに。どれだけ放してもらえてないの? いやならいや、負担なら負担だって言った方がいいよ。これからも長く一緒にいるつもりなんでしょう? そういうの、大事だと思うけど」

 視線を腹部に落とされ、そんな風に窘められた。
 見ただけでそこまでわかってしまうのかと恥ずかしくなる。まるで閨をのぞき込まれた気分だ。

「そもそも、最初から今もいつもひどいんだってね。シーツに血がついてない日がないって侍女からの報告も聞いてるよ。君、治癒魔術得意なんだね」
「いえ、得意というほどでは……ただ、苦手ではないだけです」

 治癒魔術は必要に駆られた部分が大きいし、出来るというだけで得意ではなかった。

「ふーん。見た限りは自分で治しているみたいだから得意かと思ったんだけど……そういうの、あまり良くないね。どんどん痛みに鈍感になってしまう。そうしたら自分で自分が傷ついていることに、気付かなくなる。それは誰にとっても、どう考えてもよくないだろうね。ましてや今の君には立場があるのだし。自分をもっと大切にしないと」

 だが、そんな些細なことは良いのだと言わんばかり更に続けられた苦言は耳に痛いばかり。
 俺自身、今のままでいいとは思っていなかった。
 否、むしろ今のままをこそ望んでいるのだろうか。自分自身でありながらわからない。
 そうしてしばらく、俺をじっと見つめ続けるヴィーフェ様の前で物思いに耽ってしまっていた俺は、ややあってはっと我に返った。

「あっ……! 今、何時ですか?! 今日の執務っ……!」

 それに今日はあの子にもまだ会いに行っていない。
 否、ナウラティスから追加の人員が到着する関係で、今日が忙しいのはあの子もまた分かっているだろうから、それは良いのかもしれないのだけれども。
 慌てて時間を確認する俺に、ヴィーフェ様はあからさまに溜め息を吐いた。

「リーファに似てるって言ったけど撤回する。君は比べ物にならないぐらい危なっかしい」

 その言葉を、いったいどう受け止めればいいのか。俺にはやっぱりわからなかった。
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